SDGsと観光産業の関係:OTAの取り組み・海外事例・星野リゾートはツキノワグマ保護管理

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訪日観光客が増加するなか、ホテルや観光コンテンツの「SDGs達成度」が点数評価になるといわれています。

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、より良い地球環境を将来にわたって享受するために定めた「持続可能な開発目標」のことです。

2015年の国連サミットで制定され、2030年までに達成するため17の開発目標と169のターゲット、そして232の指標が設定されました。

しかし日本国内におけるSDGsへの関心は低く、海外と比べ大きく出遅れている印象は否めません。現状のまま大手旅行予約サイトに「SDGs達成度」の点数評価が加わると、日本のブランド価値を大きく落とし兼ねません。

世界における日本の評価を落とさないためには、何からはじめれば良いのでしょうか。今回は、観光産業における具体的なSDGsの指標と事例、日本国内観光大手の星野リゾートが行っているSDGsへの取り組みを紹介します。

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観光産業にも影響大「持続可能性な開発目標」SDGs、世界が追う17のゴール

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大手OTA(Online Travel Agent)が連携、SDGs点数評価の枠組み策定に着手

世界大手オンライン旅行会社4社(Booking.com、スカイスキャナー、トリップアドバイザー、Trip.com)と英国サセックス公爵、Visaが提携して新たなグローバル・パートナーシップ「Travalyst(トラバリスト)」を設立しました。

「Travalyst」はSDGsを実現させるために、その取り組みを評価し、旅行予約の点数評価システムの基盤となるフレームワーク(骨子)を計画しています。

全旅行予約プラットフォーム共通の点数評価システムを目指す

「Travalyst」が策定するフレームワークは、業界内のSDGs活動を点数評価するための指針を目指しています。初期段階では既存基準を基にして、宿泊施設、航空、体験サービス、の3つに関してのフレームワークが進められています。

日本人の関心は低い

国際的に関心が高いSDGsですが、スタートして4年が経過しても日本国内で浸透している気配は見受けられず、日本人のSDGsへの認知度は世界的に見ても低いと考えられます

それだけではなく、SDGsに配慮した旅行に対して「楽しみの邪魔になる」とすら考える人もいます。

特に日本人の観光における概念は「単純に楽しむもの」と考える傾向が高く、「社会課題」は相反するという意識があるようです。しかし、この意識は日本人の国際化を妨げる要因の一つでもあり、国内の考え方だけではなく国際的な視点を取り入れることは、国際化には必須となります。

変革迫られる観光産業、すでに世界では着手済み

すでに、世界中ではSDGsへのさまざまな取り組みが行われています。国際化を進めるためにも、日本国内の観光産業には変革が求められています。

観光産業が担うべき分野と具体的な行動とは

SDGsの17の開発目標の中で、UNWTO(世界観光機関)が観光産業へ貢献すべきと定めた重点的な3つの目標があります。

それが「ゴール8 働きがいも経済成長も」「ゴール12 つくる責任つかう責任」「ゴール14 海の豊かさを守ろう」です。

その具体的な指標としては、以下のように定められています。

ゴール8「地域社会や経済を支える持続可能な観光を推進すること」
ゴール12「持続可能な観光を計測する手法を開発すること」
ゴール14「海面上昇の危機に瀕する島嶼国の海洋観光資源の活用のあり方を考えること」

また、上記だけではなく、観光産業はSDGsのすべてにおける目標達成に貢献できるほど幅広い分野で活躍できるとも期待されています。

海外の事例

現在は世界中でSDGsへの取り組みが進められています。

1. ロイヤル・カリビアン・クルーズ社

クルーズ旅行を提供するロイヤル・カリビアン・クルーズ社は、「グローバル・サステイナブル・ツーリズム」を推進しています。

グローバル・サステイナブル・ツーリズムとは「持続可能な観光」を意味し、現在だけでなく、未来も含めた地域状態を理解し、旅行者や企業、環境、受け入れ側の地域のニーズに対応した観光です。

ロイヤル・カリビアン・クルーズ社では、世界持続可能観光協議会(GSTC)認証の取得をするよう自社だけでなく、旅行会社やオペレーターへの通達をはじめています。

2. 太平洋アジア観光協会(PATA)

太平洋アジア観光協会(PATA)は、タイのホテルとブッフェサービスから出る食料廃棄について検証を行っています。食に関わる事業では、その国だけではなく海外など生産地での労働力や輸送の石油燃料に関してもSDGsの観点で調査をしています。

星野リゾートの取り組み「勝手にSDGs」

日本人は欧米と比べてSDGsへの意識が低いなか、観光業界の大手である星野リゾートが面白い取り組みをしています。それが「勝手にSDGs」です。

「勝手にSDGs」は、ホテルと地域は一心同体であるという考え方に基づき、地域との信頼関係に根付く活動を行う取り組みです。地域の持つ技術、農林水産物、観光資源なども活用し、環境汚染、気候変動、エネルギー利用に関してもさまざまな取り組みされています。

ツキノワグマの保護管理まで...?すでにさまざまな施策を実行

星野リゾートのSDGsへの具体的な取り組みとして、シャンプーやリンスなどを個包装での提供から詰め替えポンプボトルでの運用提供へ変換、客室でのペットボトル入りミネラルウォーター提供の廃止(ペットボトルフリー)、廃棄物の再資源化率100%(ゼロ・エミッション)など、さまざまな施策がすで行われています。その中でも特にユニークな取り組みが、ツキノワグマの保護管理です。

「人の安全を守ること」と「野生のクマを絶滅させないこと」を目標に、人とクマが共に暮らせる世界を模索・実践し、自然と人との付き合い方のモデルとして発信をしています。

具体的には、ベアドック(クマ対策犬)を用いた人の居住エリアからのクマの追い払いや、捕獲したクマに電波発信器を装着しての行動追跡、クマに荒らされないゴミ箱の開発などで、このような取り組みにより、年間100件以上あった公共ゴミ箱の荒らし数は0件になり、クマの目撃件数を減らすことにも成功しています。近年では地元の小学校でクマの生態や人との共生、クマの被害を避けるための方法を学ぶ出張講座も行っています。

「アグリツーリズモ」という考え方

このようなラグジュアリーなリゾートホテルが「アグリツーリズモ」のコンセプトを取り入れ、本格的な農業の工程をアクティビティとして提供することで、宿泊客の自然や環境への関心が高まることが期待されます。

リゾナーレ那須は日本初の「アグリツーリズモリゾート」といわれていますが、リゾナーレ那須は「農泊」のイメージからは想像つかないほど豪華なリゾートホテルです。総敷地面積は4万2000坪、森の中に43室しかない客室が点在し豊かな自然を堪能しながら農業を体験でき、「那須町の農家と観光客を繋ぐハブ施設」となるのを目指しています。

星野リゾートが栃木県那須町にオープンした、リゾートホテル「リゾナーレ那須」は、農業と環境を考えた「アグリツーリズモリゾート」をコンセプトにした施設です。「アグリツーリズモ(Agriturismo)」とは、農業(Agricoltura)+観光(Tourismo)からできた造語で、イタリア発祥の農業を観光の目的とする農園滞在のことを指し、日本でいう「農泊」に近いものです。

まとめ

SDGsにおける観光産業の役割は大きく、世界中の企業がSDGs達成へ向けた取り組みを推進しています。しかしながら、日本国内におけるSDGsへの認知・関心はまだまだ低く、観光を「社会課題」と考える海外の意識とは乖離があります。

星野リゾートのように、国内の企業でもSDGsへの取り組みを進めている企業もあります。

今後、海外の消費者のニーズや心理を正確に理解し日本の観光コンテンツやサービスを訴求できるように、こうした領域への理解も深めていくべきでしょう。

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<参照>

JTB総合研究所:これから観光産業の変革を促すSDGsの考え方とは?

JTB総合研究所:SDGs達成に向けた旅行・観光分野の役割 ~「SDGs達成に貢献する旅行」への意識に海外と日本で大きな差~

トラベルボイス:大手OTAらが英ヘンリー王子と設立した「Travalyst」、持続可能な観光に向けた、点数評価の枠組み策定に着手

ハフポスト:リゾートホテルと農業?! 星野リゾートの新たなコンセプト「アグリツーリズモ」とは 

星野リゾート:勝手にSDGs

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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