コロナ危機、航空業界はどう乗り切るか/日本の地方空港の踏ん張りに今後の明暗

公開日:2020年04月20日

新型コロナウイルスの流行で、各業界の業績に影響が出ています。人の移動が感染拡大を招くとされるなか、航空会社も大きな打撃を受けています。

現在はGo Toキャンペーンなどの影響で、徐々に国内需要は回復しつつありますが、大手航空会社が新卒採用の中止を表明するなど、その影響は非常に大きなものとなっています。

外務省は3月25日、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う移動制限が世界各国で広がっていることを受け、不要不急の渡航を自粛するよう求めました。危険情報4段階のレベル2の発令で、全世界を対象に行うのは史上初のことです。

新型コロナウイルス感染拡大から、ますます航空業界が圧迫される中、オーストラリアの航空コンサルティング専門機関が、3月16日に全世界の航空会社のほとんどが5月末には破産するだろうとの分析を公表しました。

すでに多くの航空企業が路線の縮小やコスト削減のため、休業や一時解雇といった対策をとっています。

本編ではは訪日ラボ編集部の独自調査にもとづき、航空業界の需要の変化や過去に事業に打撃を与えた危機的状況からの航空需要の回復、また事業維持が厳しい地方空港について考察します。

新型コロナウイルスによる航空業界の苦境

航空業界は需要の影響を大きく受けやすい業界です。海外旅行は贅沢品であり、今回のように経済に影響がある出来事が起これば、真っ先に自粛対象となります。

さらに今回の需要落ち込みは、各国が発令している渡航禁止勧告も大きく影響しています。

各国航空業界で事業存続のためのコスト削減

日本でも外務省が、3月25日に全世界を対象に不要不急の渡航を自粛するよう求める危険情報レベル2を発表し、事態は深刻化しています。

外務省の発表を受けてか、日本航空(以下、JAL)は4月6日から19日までの間、国内線の57路線、合わせて2,450便の減便を発表しています。

路線の減便だけでなく、パイロットや乗務員などの雇用にも影響が及んでいます。カンタス航空と子会社であるジェットスターは、従業員3,000人の大多数の業務停止をさせるとしています。

他にもスカンジナビア航空は最大で1万人、ノルウェーエアシャトルも7,300人以上の従業員が一時的に解雇されるなどいずれも大規模な対策を行っています。

新型コロナウイルスによる海外渡航禁止は、政府主導の勧告によってなされているため、航空需要を根本から阻害しています。様々な自粛や運航の取りやめが長引けば経営が行き詰まる企業も出てくるでしょう。しかし空路は国家のインフラを担っているため、企業単体の問題で完結するものではありません。

カンタス航空・ジェットスターが定期国際便を一時停止、従業員の大多数に業務停止の大影響

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今を乗り切るための航空各社の対策

航空各社は事業継続のためコスト削減を行うとともに、キャッシュを得るための対策を行っています。

例えば、キャセイパシフィック航空(Cathay Pacific Airways)は2021年2月28日までの航空便を2020年4月20日までに予約した場合、変更手数料無料で何度でも変更が可能なキャンペーンや日本出発が2020年6月1日〜2020年7月22日(販売期間は2020年3月16日〜2020年4月19日)を対象とした早割キャンペーンを行っています。

ジェットスター・ジャパンは、国内線全24路線を対象とした「スーパースターセール」を4月2日17時から7日17時まで開催する予定です(Club Jetstar会員は4月1日17時から購入可能)。

このように航空各社は、世界的に海外への渡航が制限される中、この厳しい状況を乗り切ろうと自助努力を始めています。

航空業界へ国をあげた救済措置

航空事業は国としての利益やインフラなどにも大きく影響するため、時として国が一企業を救済することもあります。その一例がJALへの救済です。

2000年代には、リーマン・ショックが原因でJALの経営は悪化し、2009年から国土交通省が救済に乗り出しました。もともとJALの経営状況は悪化しており、リーマン・ショックの影響に耐えられなかったことが大きな原因とされています。

国が航空会社を救済するのは、日本に限った話ではありません。3月19日にはアメリカのトランプ大統領が経営が悪化している航空会社などを対象に国が直接出資して経営を支える救済策を検討していることを明らかにしています。

他にもブラジル政府が、航空会社への長期融資の策定などなんらかの救済措置を発表するとしています。

今後、アメリカやブラジル政府のように、なんらかの支援策が講じられるでしょう。日本でも日本の航空会社の経営状況が危うくなった場合、なんらかの支援策が打ち出されると考えられます。

今後の航空需要はいつ回復するのか?過去のケースから考察

新型コロナウイルス感染拡大によって、リーマンショック以上の経済の冷え込みが起こるのではないかと懸念されていますが、そうなった場合、航空需要はいつ頃回復するのでしょうか。

過去のウイルス感染や経済的な不況、自然災害などが原因の混乱は、いずれも航空需要に影響を与えていますが、通常は短期的な影響であり、需要の回復に伴って乗客数は増加してきています。

国土交通省の資料によると、イラク戦争・SARS によるの影響を受けた2003年5月頃に大きく国際航空旅客数は減少しました。しかし6月以降、SARSの新たな死者数が減少しするとともに国際航空旅客数は回復に転じています。2003年7月5日には WHO(世界保健機関)による終息宣言が発表されたことも影響し需要回復が早かったのではないかと考えられます。

このように航空需要は感染症や経済不況などの発生に敏感に反応する特徴を持っています。過去の例から見ても、感染者数の減少やワクチンの完成、WHOからの終息宣言などがされ先行きの見通しがたてば、今まで抑えられていた需要も回復すると予想されます。

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地方空港は踏ん張りどき、来てもらうだけではもう足りない

現在、多くの航空企業が事業存続のため、コスト削減策をを打っています。新型コロナウイルスが原因の航空需要減少が短期的だとはいえ、もともと需要がそこまで高くない地方空港への路線は、真っ先に縮小対象となるでしょう。

これまでインバウンド業界全体で課題となっていた近隣のアジア圏への依存が、今回大きく浮き彫りとなりました。地方航空も例外ではなく、中国人旅行者や韓国人、台湾、香港からの旅行者に依存していた地域が少なくありません。

また近隣アジア圏への依存とともに課題となっていたのが、訪日外国人旅行者に比べ日本人が海外旅行に積極ではないことです。

JTB総合研究所によると、2019年11月国・地域別日本人訪問者数は韓国で258,522人(訪日韓国人 248,000人)、台湾は216,968人(訪日台湾人 348,300人)、香港は52,467人(訪日香港人 249,600人)でした(中国はデータなし)。

韓国のみ日本人の訪問が上回っていますが、近年の日韓関係の冷え込みがなければ訪日韓国人の方が上回っていたでしょう。上記の3か国は、訪日外国人旅行者のトップ5に入る国です。

特に香港への訪問者数と訪日者数が大きく離れています。日本側ばかりが誘致に成功し、提携先の国にとって旨味がないばかりか利用客数も頭打ちになりやすい状況となっています。

今まで訪日外国人旅行者誘致のため積極的に地方航空へ路線の誘致をしてきましたが、地方空港が生き残るためには路線の確保と同時に、いかに日本人を国外へ出すかがカギとなるでしょう。

まとめ

新型コロナウイルス拡大によって航空需要は大きく落ち込んでいますが、一時的な需要の落ち込みであり、今までの経験からも新型コロナウイルス感染拡大が終息すれば需要は伸びると考えられます。

航空時需要は世情に敏感に反応するため落ち込みやすい特徴がありますが、反対に事態の収束や先行きがわかれば回復しやすいとも言える業界です。

ただし、地方空港に関してはその限りではありません。需要見込みが小さい地方空港への誘致は困難であると同時に、需要が減少すれば真っ先に縮小対象になるのが地方空港の路線です。

今までの近隣アジア圏への依存から脱却すること、日本人が地方空港から国外へ出国するように動機づけを行うことが今後ますます重要となるでしょう。

<参照>

NHK NEWS WEB:トランプ大統領 航空会社などに国が出資する救済策を検討

JETRO:国際・国内路線とも運航停止や減便相次ぐ、政府は航空会社への救済策を近く発表へ

JTB総合研究所:国・地域別 日本人出国者数

JTB総合研究所:国・地域別 訪日外国人数

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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