緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。今回は中国人調査・データ販売事業を展開する株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子氏に寄稿いただきました。
私たちヴァリューズは、2016年から、盛り上がる中国インバウンド市場の理解をサポートするための中国人調査・データ販売事業を展開している調査会社です。
2019年には959万人と、1,000万人に届こうかという訪日観光客数を誇った中国。インバウンドによる日本の観光業・経済活性化に大きく寄与してきた存在がコロナ禍によりどう変化するのか。
現在の中国人の消費意欲をデータで説明しながら、展望していきたいと思います。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
コロナショックで中国人の消費はどう変化したか?
中国では、コロナウィルスが発生した2020年1月から、春節の外出自粛・国を挙げての強力なロックダウン実施など、消費活動がストップする状況が続いてきました。
4月に入り、徐々に外出自粛の解除も始まり、経済活動が再開の兆しを見せています。
このコロナショック前後で、実際に人々の動きはどう変わったのか、いくつか数字をご紹介します。
コロナ流行後も、消費マインドは落ち込んでいない?!コロナ禍による消費変化
コロナ禍で、人々はうちにこもり何をしていたのか?以下のデータをみると、家庭内で楽しめることをエンジョイする中国の人々の姿が見て取れます。
![▲[コロナ禍による消費者の日常生活の時間消費変化]:著者作成 ▲[コロナ禍による消費者の日常生活の時間消費変化]:著者作成](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6489/main_image5.png?auto=format)
青が「コロナ禍により増加した消費時間」、赤が「コロナ禍により減少した消費時間」を示しています。消費時間が増えたことの1位は「料理をする」です。
外出できないために人と会うことができない時間、家の中で料理をしたり、家事をしたり、子供と遊んだり、といった日頃できていなかった家族の時間を楽しんでいる様子がわかります。ここは、現在の外出自粛要請下の日本人の行動と似ていますね。注目すべきは「投資・財テク」に費やす時間も増えていることです。
先が見えない経済の中でも、「今が底値だろう」「自身の財産を育てるチャンスだ」という前向きな発想があることが推測できます。
続いて、コロナ禍での消費支出の変化を見てみましょう。
![▲[コロナ禍による消費者の消費支出の変化]:著者作成 ▲[コロナ禍による消費者の消費支出の変化]:著者作成](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6490/main_image4.png?auto=format)
衛生用品・食品・医薬品などの必需品消費額が増えている中、「家庭用健康器具」の消費も23%増となっています。家から出られない中でも運動したい、という思いが、そのまま消費増につながっている様子がわかります。
一方、減少しているのは、美容関連・アパレルなど。外に出られないのでおしゃれに関する消費は大きく落ち込んでいたことがわかります。
ECの威力がますます上がっている傾向。アフターコロナでも継続か
コロナ禍で躍進しているのがECです。
もともと、EC利用率の高い中国ですが、コロナ流行によりECの威力がさらに高まっています。データを見てみましょう。
![▲[コロナ禍による商品購入チャンネルの変化]:著者作成 ▲[コロナ禍による商品購入チャンネルの変化]:著者作成](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6491/main_image6.png?auto=format)
このグラフでは、青が利用時間の増減を示し、赤がコロナ終息後の利用意向の増減を示しています。
コロナ流行時の利用時間は左側にあるEC(総合EC・垂直型ECなど)が軒並み伸びており、当然ながらショッピングモールや美容院などは落ち込んでいます。
今後の利用意向で見ても、ECは軒並み高い数字を示しているのに対し、ショッピングモールやコンビニエンスストアなどは利用意向率が伸びていません。今回のコロナ禍の影響で、食品や日用品をECで購入する経験をした人が、「今後もECでいい」と思っている可能性が高いと思われます。
中国での商品販売を促進していくうえで、越境ECも含めたECチャネルの重要度が高まっていくと考えられます。日本企業が、越境ECを通じて日本のものを売っていく、という動きを取るうえでは朗報といえるかもしれません。
「アフターコロナ」の中国人インバウンド
ここまで、コロナ禍を経ての消費変化について概観してきました。中国人は、経済に対して長期的には前向きで、消費意欲は落ちていないと考えられる中、一方で海外旅行に行く意欲・日本の商品の購買意欲はどのように変化しているのでしょうか?
コロナ禍による都市封鎖で、外に出ておこなう活動ができなかった中で、「コロナの流行が終息したらやりたいこと」として「旅行に行くこと」が高いスコアとなっています。
![▲[コロナの流行が終息後、一番やりたいこと]:著者作成 ▲[コロナの流行が終息後、一番やりたいこと]:著者作成](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6492/main_image2.png?auto=format)
家の中で料理をしたり、家事をしたり、子供と遊んだり…と、コロナ流行時にはその時の楽しみ方でやり過ごしていた人々も、消費意欲は落ちておらず、コロナが終息したら「おいしいものを食べに行きたい」「旅に出たい」という気持ちは変わらず存在しているようです。
別の調査になりますが、香港のYahoo!の調査によれば、コロナ明けに行きたい旅行先の1位は「日本」。
Yahoo!新聞:假如肺炎疫情終於受控,你最想去邊度旅行?
中国国内でも、コロナウイルスへの一連の対応の中で、日本についての評判は上がっているという話もあります。中国でコロナ禍が激しくなった2月、日本からのマスク寄付に感動の声が多数あがり、親日感情が上がっているようです。
アフターコロナにどう向き合っていくべきか
様々なデータから、中国人のコロナ前後の心境を覗いてきました。ここから、皆さんはどのようなことを感じ取られたでしょうか?
訪日外国人に依存していたインバウンド消費の回復には、世界的なコロナ禍の終息を待たねばならないことは確かです。一方で、2019年に1,000万人に届こうとしていた中国人の消費意欲・旅行意欲は決して落ちてはいません。
旅に来たくても来られない状況の中、日本の良さ・魅力を海外に発信し、旅行意欲を喚起するというのも一手でしょう。旅行や日本についての情報を求める層はたくさんいます。貴重な地域ブランディングの機会と捉え、認知を高める取り組みを強化する時期として、SNSを活用したり口コミ施策を促進するなどといった考え方もあるかと思います。
例えば、百度で「旅游(旅行)」と一緒に検索されるワード(共起ワード)を見ると、コロナが一巡しつつある4月上旬には「中国で絶対行くべき都市10選」といったワードが上昇しており、「そろそろ国内旅行なら大丈夫かも」と思った人々が旅行のおすすめ情報にアクセスし始めていることが分かります。また「欧米旅行」なども少しずつ興味が上がってきているようです。
![▲[百度指数:「旅游(旅行)」検索の共起ワード(2020/4/6~4/12)]:著者作成 ▲[百度指数:「旅游(旅行)」検索の共起ワード(2020/4/6~4/12)]:著者作成](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6493/main_image3.png?auto=format)
今後、「日本」に関する情報収集が増えてきたタイミングで、自分たちの観光資源に気づいてもらい、魅力付けできるかどうか。今はそのためのコンテンツ作り・webマーケティングを準備する好機ではないでしょうか。
また、観光資源・その土地独自の商品があるのであれば、その良さを伝えるサイト作りや、越境ECを活用したアウトバウンドでの販売というチャネル開拓をおこなう時期と捉えることもできるかと思います。
中国のECは、天猫や京東などの大規模モールがメインではありますが、日本の良いものを買いたいという消費者が、Kaolaを始めとした越境ECなどで輸入品を求める傾向も強くあります。
ヴァリューズが過去実施した調査では、「日本で一度買ったものを、越境ECでリピート購入する」というユーザーが2割近くに上っており、旅行でのモノとの出会いをECで再現するニーズが強く存在しています。
コロナ終息まで先が見えず、観光業界をはじめ、旅行客を対象にしたビジネスは非常に苦しい状況に置かれています。そのような中でも、中国人の消費意欲・旅行へのニーズは決して下がってはいません。次を見据えた打ち手を講じ、コロナ終息後に再び起こるであろう訪日ラッシュに向けて、観光資源のPR・EC化推進などを仕込むタイミングであると、ヴァリューズでは捉えています。
著者:株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子
慶應義塾大学 環境情報学部卒。システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、株式会社マクロミルに入社。ネットリサーチ黎明期から調査ソリューション開発に携わる。
2011年よりヴァリューズに参画。独自データを用いたListening型リサーチの手法を開発、多数の企業のデジタルマーケティング支援を行っている。2016年より中国データ分析サービスを開始。現在は中華圏を始めとした海外調査サービス部門を統括している。
緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』寄稿募集
訪日ラボでは、現在のコロナ禍をどうやって乗り越えていくべきなのか?ポストコロナをどのようにとらえ、今対策をしていくべきなのかなどを、インバウンド業界の「中の人」に寄稿いただく特別企画を実施しております。本企画において寄稿を募集しておりますので、ぜひご応募ください。
ご応募の際には、まずは問い合わせフォーム( https://honichi.com/contact/ )より、
- お名前
- 所属・役職
- 寄稿したい記事内容の草案(タイトルやどんな内容になりそうかが見えれば問題ございません)
をご連絡くださいませ。ご連絡の際には完成した原稿は必要ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。
なお、ご応募頂いたすべての方の掲載を保証するものではございませんのでご了承ください。ご応募受付のさいには、お問い合わせの返信を持ってお知らせいたします。
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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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