近年、消費は「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしてきている傾向があります。モノで満たされた現代では、精神的な豊かさとなる体験を求める傾向が強くなるのは当然かもしれません。
観光市場においても、現地だけの特別な体験ができるアドベンチャーを求める声は世界的に増えてくるでしょう。そして訪日外国人を観光で呼び込むためには、「アドベンチャーツーリズム」の提供が優先事項です。アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ」「自然」「異文化体験」うち2つ以上の要素で構成される旅行の形態を指し、良い体験を提供できれば、リピーターの増加にも繋がります。
島国の日本には海という恵まれた資源があります。アドベンチャーツーリズムの中でも、シュノーケリングやスキューバダイビング、サーフィン、カヤックなどに代表される水中アクティビティはさらなる成長が予測されている市場です。
本記事では世界的に需要が高まるアドベンチャーツーリズムの中で、伸び代のある日本の水中アクティビティ市場について解説します。環境面は整っているだけに、早急なインバウンド対策が求められます。
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水中アクティビティに広がる可能性
アドベンチャーツーリズムを構成する要素のアクティビティには、「陸上アクティビティ」「水中アクティビティ」「空中アクティビティ」などの体験が含まれており、観光庁が発表した「ビーチの観光資源としての活性化に向けたナレッジ集(2019年)」によると、日本を含むアジア太平洋地域の水中アクティビティ市場は共に、2016年から2023年までの間に約3倍もの成長が予測されています。
一方で、日本における海に関わる遊び「マリンレジャー市場」では、海水浴客の人口は直近10年間で約3分の1と著しく減少し、同様に釣りは半数近くまで減少しています。
ただし、スキンダイビングやスキューバダイビングは増加しており、水中アクティビティに分類される体験は減少傾向ではありません。日本では日常的な海離れが進んでいますが、観光やリフレッシュ目的の水中アクティビティの伸び代は高いといえるでしょう。
他国ではオーストラリアは世界遺産でダイビングスポットのグレート・バリア・リーフを有し、また、英語圏であることから、今後の水中アクティビティ市場の伸び率は世界的にも高くなっています。
ダイビングを楽しんでいる人たちの年齢は20~50歳代と幅は広く、特にアクティブなのは30〜40歳代の層といわれています。旅行先で1回だけの体験ダイビングでは10〜20歳代の割合も高くなりますが、継続した趣味としてダイビングを楽しむには装備や旅費などにお金と時間がかかるため、余裕がある層がメインとなっているようです。
世界に向けて日本の水中アクティビティ市場を売り出すには、訪日外国人へ日本の海でしか体験できない水中アクティビティの良さを伝えることと体験までの動線を整備する必要があります。
日本がダイバーに推すべきは「伊豆」
水中アクティビティの中でも、日本のダイビング環境は注目の市場です。島国である日本には数多くのダイビングスポットがあり、特に沖縄県には恵まれた環境があります。
沖縄本島にも美しい海が存在しますが、石垣島や宮古島などの離島にはウミガメやマンタなどの大型の生物やダイナミックな地形があり、さらに慶良間諸島は世界でもトップクラスの透明度の海で近年訪日外国人に人気のスポットです。
しかし、実は日本のダイビングのメッカと呼ばれるエリアは、静岡県の伊豆半島にあります。
海の透明度は沖縄に劣りますが、30以上ものダイビングスポットがあり、見たい生物や水中洞窟などの地形、沈船など求めるダイビング中の体験によって、スポットを選べる利点があるのです。さらに都内から2時間程度で到着できるアクセスの良さも魅力であり、訪日外国人たちが移動に疲れることが少なくなります。
また、伊豆の西側にある駿河湾は日本で最も深い湾であり、日本に生息する魚類約2,300種類のうち約1,000種類が生息している海域です。伊豆で潜り慣れているダイバーが海外や他のダイビングスポットでダイビングをすると、見られる魚の種類が伊豆に比べて少ないと感じるそうです。ダイビング中に見られる魚の種類の豊富さは、日本で特別な体験をしたい訪日外国人に十分な訴求ができる環境といえます。
ダイビングは冬にも実施できるアクティビティですが、その好みはダイバーによってさまざまです。冬と夏では見られる魚が変わることも多く、ダイビングの需要が落ち着くため、冬のダイビングにはリラックスしてダイビングができるメリットもあります。
魚の種類の多い伊豆は冬のダイビングに最適なスポットであるとアピールすることで、刺激を求める需要に応えられるでしょう。
ダイビング市場のインバウンドの課題
日本のダイビング市場はまだまだインバウンド対策が不十分です。そもそもダイビングショップの公式サイトがほとんど更新されていなかったり、問い合わせ方法が電話だけだったりと、日本人でも不便に感じるところがあります。
たとえばダイビングのために訪日外国人が多く訪れる沖縄のダイビングショップでは、公式サイトの多言語化を行い、外国人スタッフを雇用するなどのインバウンド対策を実施して集客効果を得ています。
インバウンド対策として多言語化はもちろんのこと、特に伊豆の場合は都内から電車でアクセスした後、駅からダイビングショップまでの送迎や、宿泊付きプランの提供など、アクセス面でのカバーも必要となるでしょう。
また、体験ツアーを予約できるサイトへ掲載するなど、集客と利用時の両面から訪日外国人が利用しやすい対策を行うことが、コト消費を求める旅行者層への訴求につながります。
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土台は揃っている。あとはインバウンドへの施策
アドベンチャーツーリズムの拡大が予測されるなか、これからの日本の観光業は水中アクティビティへ力を入れていくことが必須になっていきます。日本の水中アクティビティ、特にダイビングの環境は他国と比べても恵まれていますが、訪日外国人を誘致して無事に体験を終えるまでの流れを整えなければ、せっかくの環境を活かせません。
世界に向けて日本のダイビング環境をアピールして、訪日外国人が利用しやすい仕組みづくりの実施が早急に必要です。
<参照>
国土交通省:ビーチの観光資源としての 活性化に向けたナレッジ集 -参考資料-
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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