新型コロナウイルスの流行により、新常態(ニューノーマル)という言葉が広まりつつあります。これまでも季節ごと、毎月のように様々なジャンルの新商品が登場していましたが、今後は新しい生活スタイルに合わせた商品やサービスが登場し、普及していくと考えられます。
新しい商品を消費者に知ってもらうために、広告やPRは欠かせません。
この記事では、広告の一形態であるプロダクトプレイスメントに着目し、実例をとりあげながら、海外の市場向けにどのような効果が期待できるのかを考察します。
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プロダクトプレイスメントの概要
広告の形態には様々なタイプがあります。インターネットの登場により、それまでになかった形式も生まれています。
こうした中で、広告の一手法である「プロダクトプレイスメント」は、昔から今まで長く用いられており、この先も活用が進んでいくと見られている手法です。
プロダクトプレイスメントの定義と事例について紹介します。
プロダクトプレイスメントとは?
プロダクトプレイスメントとは、映画やテレビ番組などといった映像作品の中で、実際に存在する製品やサービスを登場させる広告手法です。商品に対する視聴者の認知を高めたり、好印象を抱かせることができます。
本編の中に商品が登場するため、作品を鑑賞する消費者に必ず認識されることになります。
また登場人物や出来事と関連して商品が印象づけられ、ブランディングの効果もあります。
CMやウェブサイトの広告と違い、強制的に見せられている気がしない
テレビを録画して視聴することも増えた現在では、番組の途中で差し込まれるCMはスキップされる傾向にあります。また、インターネットユーザーの増加により、ウェブメディアも重要な広告媒体となっていますが、ウェブサイト上の広告表示を拒否するユーザーもいます。
作品の中に商品が組み込まれているプロダクトプレイスメントでは、視聴者は宣伝されている商品から目を背けることはできません。ただしその商品が無理に強調されておらず、自然に取り扱われていて、視聴者がストレスなく作品を鑑賞できるのであれば、こうした手法を拒絶する心理は多くの場合生まれないようです。
世界で「巣ごもり消費」拡大中!ECで日本商品が人気に・ネット上でできるインバウンド対策は?
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プロダクトプレイスメントの事例
映画作品におけるプロダクトプレイスメントの事例を2件紹介します。
1. 映画『天気の子』
プロダクトプレイスメントの代表的な例として挙げられるのが、大ヒット映画となった『天気の子』です。
同作品は、アニメ映画の中で巨匠と呼ばれる新海誠監督によって作られた最新作であり、2019年7月の公開以降、興行収入が100億円を突破することが確実と言われるほどの大ヒットとなっています。世界140か国以上で公開が予定され、世界中で何億人もの人が映画を見ることになると見られています。
『天気の子』ではプロダクトプレイスメントを多用しており、映像の中の飲食物から背景の看板まで、見覚えのあるロゴがあちらこちらに散らばっています。ただし、これらのロゴは自然に登場しているため、広告らしさに感じる人はあまり多くないようです。
2. 映画『007』
世界的に人気の映画「007」でも、プロダクトプレイスメントが採用されています。
007ではジェームズ・ボンド愛用のアストンマーチンの車やオメガの時計が挙げられます。他にも、ビールのハイネケンも登場しています。
この映画を通じてハイネケンは認知されるようになり、世界的に「オシャレなビール」の地位を確立することとなりました。プロダクトプレイスメントによって人気なるだけでなく、商品のブランドイメージの形成にまで結びつくこともあるようです。
主人公の着用する時計や服は、映画の知名度と同じく広く世間に知られるだけでなく、購買欲を刺激します。この宣伝効果を狙って、この作品に起用されるよう数多くのブランドが働きかけてきたそうです。
動画配信サービス利用者が増大し、映像作品の影響力もアップ
近年、NetflixやHuluはなど、様々な動画配信サービスが全世界で普及しています。こうしたサービスでは、これまでのテレビ作品と異なり、宣伝が存在しないサービスもあります。またテレビ番組は録画して視聴する形が広がっています。
コンテンツを視聴する消費者は、以前と比べて宣伝を目にする機会が減っているという一面があります。プロダクトプレイスメントは、動画配信サービスで配信する作品でも起用されており、従来の広告枠が存在感を減少させる中で、高い広告効果が期待されているといえるでしょう。
2019年の報道によれば、NetflixとHuluは、どちらもプロダクトマーケティング部門を拡大しており、今後プロダクトプレイスメントが大きな収益源になるとの予測が伝えられています。
ここでは中国市場で映像を通じて需要喚起に成功した事例と、従来のテレビCMと消費者の受け止め方の違いを紹介します。
動画配信サービスはじめ、オンラインコンテンツ視聴者の拡大
日本の映像作品は、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど多くの地域で好評を博しています。
スマートフォンの普及により、場所や時間の制約が以前よりもなくなり、オンラインでのコンテンツ消費も増えています。
動画配信サービスの場合、国を超えて放映されるケースもあります。海外の消費者が日本の映像作品を目にする機会も増えています。プロダクトプレイスメントによる商品の認知拡大、販売促進効果は今後ますます期待できると考えらるでしょう。
中国の映像作品が視聴者に影響を与えた例:広告効果が長く続く
2008年に上映された中国の映画『狙った恋の落とし方』(非誠勿擾)は、北海道を舞台にした作品です。映像作品が視聴者に与える印象の強さや、印象を与える期間の長さは特筆に値します。2020年現在、作品公開からすでに10年以上たっているにも関わらず、この作品に関連する場所として北海道旅行を検討したり実際に足を運んだりする人がいます。
また『君の名は。』は2016年に公開された映画ですが、この作品に登場する日本各地の景色は、3年後の2019年でも引き続き、訪日中国人の「聖地巡礼」需要に結びついています。
これらの事例からは、プロダクトプレイスメントが視聴者に影響を与える期間が数年~十数年と非常に長いことも確認できます。
中国の消費者のニーズについては、日本の恋愛ドラマで女優が着用していた衣類やアクセサリーを購入したいと考えるケースや、アニメ作品に出てくる飲食店に関連した食品に注目が集まる例も見られています。
訪日外国人がハマる聖地巡礼/映画3選から予測する2020年の注目スポット
映画をはじめとする映像コンテンツは
世界的「巣ごもり消費」がプロダクトプレイスメントの追い風に
新型コロナウイルスの流行により、世界各地で、日常の過ごし方、仕事のスタンダードが変わってきています。
エンターテインメント領域でも、コンテンツをオンラインで提供したり、乗用車から観賞したり、施設では追跡コードを提供したり、ソーシャルディスタンスの保てる施策を展開したりする様子が見られています。
同時に、自宅で快適に過ごすことへの関心も、かつてないほど高まっています。長編を観る時間を確保できることを背景に、日本でも韓国のドラマがブームとなっています。作品の感想をSNSでシェアする姿が頻繁に見られています。
このように、インターネットを通じ、映像はじめとするコンテンツは海外市場へリーチしやすくなっており、コンテンツに登場する商品も、作品同様、海外市場の消費者に認知される可能性は高いといえるでしょう。また、その商品が魅力的であれば、SNS上での拡散も期待できます。
全国的な外出自粛により、自宅で商品やコンテンツを購入し楽しむ「巣ごもり消費」が世界各地で観測されています。コンテンツ視聴への需要の高まりや、広告を受け付けない消費者心理の高まりを背景に、プロダクトプレイスメントは今後ますます効果的な広告手法として存在感を増していくでしょう。
<参照>
東洋経済オンライン:中国人が「次は北海道に行きたい」と言う理由
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