【ポストコロナのインバウンド戦略】『ピンチをチャンスに!』 中国インバウンドのV字回復に向けて:株式会社フレンドリージャパン 近藤剛

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緊急企画『ポストコロナインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。

今回は中国市場へのインバウンドコンサルティングを提供する、株式会社フレンドリージャパン 近藤剛氏に寄稿いただきました。


世界規模で大きな打撃を与えているコロナショックは、個人的な印象として、とてつもなく長い時間苦しめられているように感じていましたが、振り返ると、我々日本人が一般的に、コロナショックを認識した1月の中国武漢での新型肺炎による厚労省の注意喚起が報道されてから、5か月しか経過していないことに少し驚きを感じています。

日本においては、2月初めに豪華クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客に発症者が確認され、その後、急激な勢いで感染者が拡大し、4月7日に緊急事態宣言が発令され、そして日常生活が大きく変貌しました。

もちろん、この2~3か月間におけ る経済活動へのダメージは非常に大きく、今後も引き続き警戒しなければならないことを考えると、どうしてもネガティブになってしまいます。

しかし、今のままのマイナス状態が永遠に続くことはなく、いつか終息します。その終息の日に向け、復活するためには、少しでもポジティブな気持ちで“今やれること=アフターコロナ”を考え、実行していくことが重要だと思います。

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コロナ禍が与えた衝撃

中国インバウンドにおけるコロナによる影響は、日本国内での発症が確認される前から始まりました。今年1月まで絶好調だった中国人観光客が2月から激減したことによる、観光業、宿泊業、流通業、飲食業へのインバウンドロスです。

先ずは、中国の現地旅行業界での衝撃を振り返ってみたいと思います。今年1月下旬から表面化した、武漢でのコロナ禍は予想をはるかに超えて拡大し、中国政府は早々に1月30日までだった春節休暇の大幅延期政策を発令し、最終的に2-3月は、ほとんどの企業の業務が完全にストップしました。

国内の往来も止まり、春節休暇で田舎に帰っていた人達は足止めされ、まさに各地がゴーストタウンとなりました。人々は徹底した自宅待機や、在宅勤務を余儀なくされました。

特に、旅行業界では、1月25日に海外旅行が販売中止、続いて、国内旅行が販売中止となり、ビジネスの柱を奪われました。

そのような中、当然ながら旅行会社の皆さんは、途方に暮れていたと思われがちですが、そこが切替の早い国民性です。普段から、十分に睡眠もとれないほど忙しい彼らは、かえって今こそと、自身の体調を整え、気持ちを元気に今後の商品造成の為、「観光情報収集・資料作り」や「オンライン社内教育」を活発に行いました。

今でも、弊社に「訪日資料を整理したいので観光情報を送って欲しい」とか、「社内スタッフ向けに訪日セミナーをやりたいので、PR動画や画像を提供して欲しい」といった声が、今まで以上に頻繁に、細かく寄せられています。

当然のことながら、収入面、経営面では大きなダメージを受けていますが、まさに“今でも出来ること”“今だからこそできること”を、来るべきV字回復に向け取り組んでいる姿勢に、そして各々が自然と前向きにシフトチェンジする力を携えていることに感服しました。

その後、中国政府の徹底した封じ込みの政策が功を奏し、1月末~3月末の約2か月間で、中国のほとんどのエリアで新規の発症者が無くなり、4月8日には武漢市の都市封鎖が解かれ、以降、国内すべての都市間の移動が可能になりました。

飛行機の前に、横断幕を持った航空会社の中国人社員が横一列に並ぶ
▲[武漢閉鎖解除により東方航空が運航再開]:北京日報

「アフターコロナ」の観光業

中国の旅行業界・観光業界では、3月19日から省内(自宅エリア内)での旅行が解禁となり、4月から少しずつ国内の観光地も再開しました。今では、政府も含めて国内旅行の推進に向けた取り組みが活発化しています。

特に、中国の宿泊業界では、5月下旬から中国国内のビジネス需要が戻り、全体的に回復傾向になりました。

あるホテル関係者の話によると、コロナの影響が出始めた春節時期から急激に稼働が落ち込み、2月は前年90%以上の減少となりましたが、3月中旬から回復傾向に転じ、5月は稼働率が40%まで回復、6月は感染状況の落ち着きとともに更に改善し、前年並みである60-70%となる見込みです。

彼らは、コロナの影響を大きく受けている2-3月の段階において、すでにアフターコロナ対策として、事前購入による宿泊優待券(長期間有効の宿泊クーポン)を販売し、積極的に回復後の需要喚起を行いました。そのようなアクションが今の急激な回復につながったと見られます。

実は、私もその対策に乗り、上海花園飯店(上海オークラホテル)の特別優待券888元(2名・2食付)を2枚購入し、中国に出張出来る日を楽しみにしています。

中国の宿泊施設が発行した優待券
▲[宿泊優待券(長期間有効の宿泊クーポン)]:筆者キャプチャ


今後、コロナの影響が少ない国から、海外旅行が徐々に解禁になると予想されています。そこで、最も中国旅行社の皆さんが期待をしている訪日旅行について、大手旅行社の訪日キーパーソンにヒアリングした回答をお伝えしたいと思います。

中国では前述の通り、正味2か月で収束したことから、夏休み前後には日本も終息し、訪日旅行の販売が解禁され、そして10月の国慶節には日本へ送客できると期待している人が少なくありません。 また、終息したのちには、必ず、訪日ブームの再来を、ほぼ全員が回答しています。

その背景として、多くの中国人が、今回のコロナ問題を通し、日本の衛生水準の高さや、うがい・手洗い・マスクの慣習から垣間見られた日本人の生活の真面目さを理由として挙げていました 。

一方、政治関係においても、日本の対応により、過去に例がないほどの友好的な関係が築かれていることも大きな好要素です。

中国政府高官は、「現在、中日両国はコロナウィルスによる肺炎の感染拡大を全力で防止・抑制すると同時に、感染状況が経済に与えるマイナスの影響を緩和すべく努力している。また中日両国は感染症との戦いで連携したことは、協力深化の新たな原動力となるものだ」と、日本を特定し、友好的な発言をしたことは異例であります。


中国メディアが中国政府高官の日本に対する好意的な発言について報道
▲[中国政府高官の日本に対する好意的な発言について報道する中国メディア]:筆者キャプチャ


まさに、「山川異域 風月同天=山川、域を異にすれども、風月、天を同じうす」の精神のもと、中日の絆はより強いものになっています。

このような流れの中、延期になっている習近平主席の国賓としての来日行事について、日中間における政府間調整も進んでいます。

来日が早期に実現されることになれば、両国間の出入国政策も大きく緩和・改善され、訪日客が戻ってくることは間違いありません。

どう向き合っていくべきか

今はまだ、日本国内における第2波を警戒しつつ辛抱が必要な時期だと思いますが、一方で、回復したら出来る限り早く観光需要、そしてインバウンド需要を復活させるために、“今でも出来ること”“今だから出来ること”を着実に実施することも重要です。 どうせやるならネガティブにならず、ポジティブにモチベーションを高めて取り組んでいきたいと思います。

では、中国人観光客の誘客を復活させるため、何をすれば良いのでしょうか。それは、中国観光マーケットに向けた情報発信です。 今、情報発信を止めないことが絶対的なセオリーです。

尖閣諸島国有化による関係悪化の時でさえ、中国への情報発信を止めなかった企業や自治体が、今なお、中国マーケットに受け入れられていることが何よりの証です。状況が良い時は目を向けて、状況が悪くなると情報発信も中止するような姿勢では、相手に伝わってしまい、絶対に受け入れられません。 

国内と並行してインバウンド向けに需要喚起を実施するという考えは、今はまだ難しいとお考えの観光業界、宿泊業界の方もおいでだと思います。 しかし、将来的な需要を考えると、中国からのお客様の復活が必要だと思います。

皆さんが普段持たれている情報を、伝えていく事を、是非継続して欲しいと願います。

著者プロフィール:株式会社フレンドリージャパン 近藤剛

全日空ワールド株式会社(現・ANAセールス㈱)にて、海外・国内旅行企画造成や、組織人事、経営企画、営業統括、訪日旅行、イベント統括(北京オリンピック等)を経験。

2009年にANAセールス株式会社を退職し、同年に株式会社フレンドリージャパンを設立。中国観光ビジネスにおけるコツと企業の展望を踏まえたインバウンドコンサルティングを行う。

緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』寄稿募集

訪日ラボでは、現在のコロナ禍をどうやって乗り越えていくべきなのか?ポストコロナをどのようにとらえ、今対策をしていくべきなのかなどを、インバウンド業界の「中の人」に寄稿いただく特別企画を実施しております。本企画において寄稿を募集しておりますので、ぜひご応募ください。

ご応募の際には、まずは問い合わせフォーム( https://honichi.com/contact/ )より、

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3.寄稿したい記事内容の草案(タイトルやどんな内容になりそうかが見えれば問題ございません)

をご連絡くださいませ。ご連絡の際には完成した原稿は必要ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。

なお、ご応募頂いたすべての方の掲載を保証するものではございませんのでご了承ください。ご応募受付の際には、お問い合わせの返信を持ってお知らせいたします。

<参照>

北京日報:6个瞬间,见证武汉“解封”!

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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