コロナ禍がもたらたした世界規模の大不況は、日本の観光スポットやアクティビティにも大きな打撃を与えています。例年国籍問わず多くの人が訪れ、トリップアドバイザーで数々の賞を受賞した「アキバフクロウ」も例外ではありません。
超人気店のアキバフクロウも、今年に入り来店者数が激減し、現在も店舗存続の危機に立たされています。こうした状況の中で開始したクラウドファンディングでは、開始初日で目標金額であった300万円を突破し、9月7日時点では5,496,377円もの支援金を集めています。
その一方で、ここまでの支援金を集めるほどのファンを育むことができたその秘訣はどこにあるのでしょうか。
今回訪日ラボはアキバフクロウに取材し、クラウドファンディングを始めた経緯、世界中のファンを獲得するに至ったサービスやお店づくりへのこだわり、コロナ禍に直面している現在の想いについて聞きました。
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秋葉原の超人気フクロウカフェ「アキバフクロウ」
アキバフクロウは、東京の秋葉原駅から徒歩3分の場所にある「小人数・完全予約制」のフクロウカフェです。
フクロウカフェブームの先駆的存在であり、フクロウのケアを最優先にした営業体制と、シャンデリアに囲まれ、ゆったりとしたクラシック音楽が流れる非現実的な空間がこだわりの店舗です。
これまで90各国以上・約10万人のゲストを迎えており、トリップアドバイザーでは人気の体験で「日本第1位」に選ばれ、同サイトで最も栄誉ある賞である「トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト」をはじめ、数々の賞を受賞しています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で世界的に渡航が制限され、国内でも外出自粛が呼び掛けられました。
そんな2020年はアキバフクロウにとって、予想もしていなかった未曾有の危機であり、店舗の存続すら危ぶまれる事態に陥っていました。
クラウドファンディングをやるのは「お門違い」だと思っていた
経営が厳しい状況が続く中、クラウドファンディングという支援の呼び掛けを決断するまでには強い葛藤があったと店主の矢部修作氏(以下、矢部氏)は語ります。
「自己責任で始めた事業である以上、来店されたお客様からいただくお金で経営を成り立たせるのは当たり前であり、それができないために支援金を募るというやり方には抵抗があったのは事実です。」
また、アキバフクロウの作り上げてきた店舗のブランドがお客様との距離をつくっていたかもしれないとも矢部氏は述懐します。
「アキバフクロウは非現実的で「魔法のような」時間と空間の提供を心がけている店です。そのため、これまでお客様に対しては運営側の私的な部分、経営的な事情は一切話したことはありませんでした。メディアの取材に関しても、フクロウの健康のためにならないような演出を要求するところは断ってきた経緯があります。」
しかし、その間にも来店者数はほぼゼロという非常に苦しい状態は続きました。こうした状況の中で、ある熱心なファンのお客様に初めて本音を吐露したところ、クラウドファンディングの提案を受けたということです。
「お客様から「アキバフクロウはなくなってはいけない!」と力強いメッセージをいただいたのを覚えています。クラウドファンディングという方法に頼ることについて初めは抵抗がありましたが、経営的に極めて厳しい状況であること、そしてここまでアキバフクロウを愛してくれているファンがいてくれたことで、前向きになることができました。」
クラウドファンディング開始初日に300万円を超す支援金が
多くの葛藤の末に開始したクラウドファンディングは、蓋を開けてみれば開始初日で目標金額である300万円を突破し、現在でも多くの支援者が集まっています。
ここまでの支援額が集まったことについては全くの予想外であったと矢部氏は語っています。
「クラウドファンディングを開始する前は、支援者様が集まったとしても10名くらいだと思っていました。というのも、昨年はお客様のおおよそ95%が外国人であり、日本人のお客様は割合的にはわずかだったからです。
クラウドファンディングを募っているCAMPFIRE(キャンプファイヤー)はそのシステム上、日本人を主な呼び掛けの対象としていますので、ここまで多くの支援者様が集まったことには正直驚いているとともに、非常にありがたいと思っています。」
熱心なファンを育んだ「アキバフクロウ」のこだわり
店主の矢部氏も予想外だったというほど、国内外問わず多くのファンを持つアキバフクロウ。
Twitter上でも今回のクラウドファンディングに対する多くの反響があり、その内容からいかにアキバフクロウが愛されていたかが伝わってきます。
また、一般的にリピーター化が難しいといわれる訪日外国人のファンの中にも日本に来るたびに必ずアキバフクロウに寄るという人や、限られた日本滞在期間の間で二日連続で来店するという方もいるとのことです。
一方で、秋葉原の小さなフクロウカフェが、なぜここまで多くのファンを惹きつけるのでしょうか?
その理由には、アキバフクロウの提供する体験への強いこだわりがありました。
「映画を一本観終わったような満足感」を目指して
アキバフクロウが多くのファンを獲得した理由について尋ねると、矢部氏は以下のようにサービスへの想いを語りました。
「私が個人的に映画が好きなこともあるのですが、「アキバフクロウ」という体験を一つの映画のようにしたいと思っています。
つまり「来て終わり」ではなく、来ていただいたお客様の心に刻み込まれるような物語にしたいということです。お客様に心に残る映画を一本観たあとのような満足感を抱いていただくためには、ストーリーづくりが大切だと考えています。
具体的には、まずお客様が自分の国からWEBサイトで来店予約した時には予約した人にしか観ることの出来ない、映画の予告編のような動画をご覧いただけるようにしています。
その動画ではちょっとしたTipsも織り交ぜながら、来店までの期待感を煽るようなつくりにしています。
そして、実際に来店してお帰りいただいた後にも、一般には非公開の動画をお送りしています。その動画では来ていただいた感謝の気持ちや、映画のスタッフロールのような演出で全員のお名前を流しています。
そのほかにも、お客様が来店されたその時間でフクロウと触れ合っている時の写真を即座にデコレーションし、ポストカードという形で最後にお渡ししています。
この取り組みは特に好評で、お客様から「Amazing!」と大変喜んでいただけています。」
矢部氏の語る「ストーリーづくり」とは、まさにインバウンド向けプロモーションにおける「旅マエ、旅ナカ、旅アト」のタイムラインに沿った施策というべきものです。
丁寧につくり込まれた映像や、愛らしいフクロウの写真やポストカードは、訪日外国人観光客に大きな感動をもたらし、その感動の記憶が持続することによって「また行きたい!」という気持ちを喚起し、リピーターが生まれるのでしょう。
コロナ収束まで、安心はできない状況
クラウドファンディングではすでに目標金額に達してはいるものの、コロナ禍の収束の目処が経っていない以上、予断を許さない状況には違いありません。
矢部氏は、多くの支援に対する感謝の気持ちを表す一方で、次のようにも語っています。
「まだまだ安心できない状況です。CAMPFIREでは実質海外のお客様から支援いただくのが難しいので、海外用のクラウドファンディングも準備中です。
また、フクロウと映像を組み合わせた新しいサービスや、アキバフクロウのオンライン化、生態販売など、徐々に入場料以外の収益体制も整え、なんとかしてコロナに負けず存続していきたいと思います。
クラウドファンディングで皆様からご支援いただいたアキフクの存続期間を、絶対に無駄にしてはならないと肝に銘じております。
また、新しい事にチャレンジしながらも、いつでもアキフクはお客様を迎え入れられる状態でい続けたいと思っております。」
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