「終電繰り上げ」で日本のナイトタイムエコノミーはどうなる?新たな「時間市場」開拓の必要性

公開日:2020年10月23日

JR東日本は、9月初旬に発表していた2021年春に予定している終電時刻の繰り上げに関して、ダイヤ見直しの概要を発表しました。

今回発表された終電時間の改訂は、日本人の生活への影響はもちろんのこと、今後のインバウンド戦略に関しても一定の方針転換を迫るトピックといえます。

「新しい生活様式」によって変化するナイトタイムエコノミーへの影響、そして新たに模索すべき「時間市場」の開拓の必要性について解説します。

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五輪が今年開催されれば...コロナで真逆の方向へ

JR東日本が終電繰り上げに至った目的としては、新型コロナウイルスの感染拡大からくる「新しい生活様式」への変化の対応、鉄道工事における働き方改革の実現、鉄道設備の設置・保守の迅速化を図ることを挙げています。

終電繰り上げとなる対象は首都圏の17路線に及び、午前1時以降に運転する列車が軒並み短縮される格好となります。これによって、1日あたり2万人の利用者に影響が出るといわれています。

今回の終電繰り上げに至った経緯を鑑みると、JR東日本のみならず、都心部を中心とした他の路線にもこの動きが広がる可能性もあるでしょう。

元々今年の1月22日、東京都と東京2020組織委員会は大会期間中の深夜時間帯の鉄道の運行について、最大深夜2時ごろまで終電時間の繰り下げの調整を進めていました。五輪の競技終了時間が深夜にまで及ぶことが想定されることと、大会期間中の混雑を回避する目的があったためです。

また、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)は、大会開催期間中の東京観光及び訪日外国人の消費喚起を狙った「東京メトロ24時間券」の販売も予定していました。

今回の発表は、新型コロナウイルスを契機として今年上旬の方針から真逆に進んでしまったともいえるでしょう。

ナイトタイムエコノミーにも影響が

終電時間の繰り上げによって、今後のナイトタイムエコノミー(夜間経済)へもネガティブな影響が出ると予想されます。

ナイトタイムエコノミーとは文字どおり、夜間の経済活動のことを指します。新型コロナ流行以前まで、世界各国ではナイトタイムエコノミーを活性化させるための様々な取り組みが進められていました。

平成29年に観光庁が発表した「『楽しい国日本』実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」によると、イギリス・ロンドンではナイトタイムエコノミーによって、年間263億ポンド(4兆円)の経済効果と、125万人の雇用を創出しているとされています。

日本でも欧米の先進事例に習い、訪日外国人向けにナイトタイムエコノミーにおけるコンテンツの磨き上げが進められていました。実際に2017年には「ナイトライフエコノミー議員連盟」が結成され、法改正なども視野に入れた議論がなされていました。

しかし、新型コロナウイルスの脅威を経験した今日の世界において、やはり「夜の街」に対するネガティブなイメージは払拭しきれていないというのが実情でしょう。

また、今後将来的に訪日外国人観光客の客足が戻ったとしても、夜遅くまでの観光は近隣住民の理解を得ることが喫緊の課題となります。

「新しい生活様式」によって夜の時間の過ごし方は、そのあり方から見直されようとしています。

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「時間市場」を別のアプローチから考える必要性

アフターコロナのインバウンド対策を展望するにあたって必要なことの一つに、訪日外国人の「時間市場」をどのように開拓していくか、ということがいえるのではないでしょうか。

「新しい生活様式」への転換によって夜の時間の経済活動に制約がかかるのであれば、違う時間帯に目を向ける必要があります。その一つが「早朝の時間帯」です。

早朝の時間帯は観光客で殺到する日中を避けられるため、すでに訪日外国人の中には早朝の時間を楽しむ動きがみられています。

例えば大手口コミサイト、トリップアドバイザーの「日本の人気観光地ランキング」で常にトップ層に君臨する京都の人気スポット、伏見稲荷大社では、早朝の人通りが少ない時間帯に参詣し、千本鳥居の神秘的な空間を楽しんだというコメントが散見されます。

また、同じく訪日外国人観光客に人気である新宿御苑では、期間限定で通常9時からの開園を7時に前倒す、「早朝開園」の取り組みも過去に行っています。

その一方で、日本の施設側は訪日外国人の「早朝」のニーズに十分にアジャストできていないというデータも存在します。

2018年の観光庁の「公的施設等の早朝開館」に関する調査結果によると、訪日外国人約85%が早朝開館等の企画への参加意向を示しています。しかしながら、公的施設等は20%程度しか早朝開館等の企画を実施しておらず、また、早朝開館等の企画を実施している公的施設等を実際に訪問した訪日外国人が支払った金額は「無料」が70%程度だったという結果も出ています。

同調査によると、早朝開館等の企画への支払い可能金額は、欧米豪からの旅行者の50%程度が11ドル以上と回答しており、平均より高い金額を示しています。さらに、そのうちの約25%が21ドル以上としています。

混雑を回避できる早朝の時間帯は、アフターコロナにおいてさらに付加価値を持ちます。今後のインバウンド向けコンテンツを造成するにあたっては、こういった早朝の時間帯の付加価値を適切に価格に反映させていく必要があるでしょう。

そして早朝に限らず、今後のインバウンド向けの施策を検討する上で、訪問場所・訪問時間の分散化などの「3密」を避けるための工夫は必須といえます。

一度に多くの観光客を受け入れることが難しくなった観光産業において、「時間帯に付加価値を付与する」ことはアフターコロナのインバウンド市場を盛り上げるにあたって重要な戦略の一つといえるのではないでしょうか。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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