居住者の3000倍の観光客殺到した「白川郷」、コロナ後を見据えた新たな観光スタイルとは?

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1995年に世界文化遺産に登録され注目が高まった白川郷は、宿泊客の6〜8割が訪日外国人となるなど、インバウンド人気の高い観光地として知られています。

一方で、地域の受け入れのキャパシティを超える観光客が押し寄せることで発生する「オーバーツーリズム」が近年問題となっています。

オーバーツーリズムの問題を受け、これまで観光客の受け入れに対して受け身だった住民の間にも、地域が観光客を選ぶ「レスポンシブルツーリズム」という発想が広まっていきました。

そこで白川郷では、2021年から楽しみながらより深く白川郷について知ってもらうきっかけとして、ミッションラリーを開始します。

本記事では、白川郷が抱える観光業の課題とミッションラリーの特徴について解説します。

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世界遺産・白川郷の課題

白川郷では、訪れる大多数の観光客が短期滞在であり、通過型観光が主流である点が問題となってきました。

特に合掌造りばかりが注目され、文化や慣習を体験する観光客が少なく、古くから白川郷で大切にされている「結」の精神が観光客に伝わっていないことも課題の1つです。

そこで白川郷では、旅行者が主体性や責任意識を持ち行動するレスポンシブルツーリズムに着目するようになりました。

居住者の3,000倍もの観光客:オーバーツーリズムが問題

世界中の人気観光地で問題となっているオーバーツーリズムは、白川郷でも顕著な問題です。集落に居住するのは約600人であるのに対し、観光客は180万人も訪れるため、集落で受け入れ可能なキャパシティを超えています。

オーバーツーリズムが発生すると、ゴミの増加や騒音による住民の生活の質低下が生じるほか、サービスの対応が追いつかず観光客の不満が増加し、マナーの良い観光客の来訪を疎外することが懸念されます。

そこで地域商社の合掌ホールディングスは「レジデンス・ファースト」をもとに、住民の生活を最優先とした上で、住民と観光客が共存できるような地域づくりに取り組んでいます。

具体的には、次に紹介するレスポンシブルツーリズムの考え方を導入しました。

白川郷に押し寄せる外国人観光客「完全予約制」で解決:居住者の3,000倍になる年間180万人「美しい景色」「文化体験」に期待

[cta_toc_upper_banner] 目次 居住者の3,000倍もの観光客が押し寄せる白川郷は課題が山積 オーバーツーリズム対策に完全予約制導入 居住者の3,000倍もの観光客が押し寄せる白川郷は課題が山積 合掌ホールディングス株式会社は、12月29日、観光公害、オーバーツーリズム問題に直面している「白川郷に関するアンケート調査」の結果を発表しました。 今回の調査対象となった白川郷の集落の居住者は600人弱ですが、年間観光客の推計は約180万人です。プロモーションよりもマネジ...


新たな観光の考え方:レスポンシブルツーリズム

新型コロナウイルスの影響により、白川郷の住民の間で観光客に対する考え方が変化し、レスポンシブルツーリズムが浸透していきました。

レスポンシブルツーリズムとは、英語を直訳すると「責任ある観光」となります。すなわち、観光客が主体性や責任意識を持って行動する旅行を指します。例えば、観光客が地域やその環境に負担をかけないよう配慮し、なるべくゴミを出さないようマイボトルを持参するなどが挙げられます。

観光客が地域に与える影響に責任を持つことに加え、観光客を受け入れる側も取り組むべきことは多くあります。

例えば、受け入れ側は来てもらいたい観光客をフィルタリングすることが必要です。ペルソナを明確にしないと多くの人が訪れることになり、結果的にオーバーツーリズムが発生してしまいます。

白川郷では、2019年から冬のライトアップを完全予約制にし来場者数を制限することで、オーバーツーリズムへの対処を始めました。約8,000人だった来場者が約半数になった結果、違法路上駐車の問題や日帰り駐車場の待ち時間が大幅に解消されたほか、住民とのトラブルもなくなり、観光客はゆったりと観賞できるようになるなど、さまざまな課題が改善されました。

ミッションラリーを開始

ミッションラリーとは、主催者が出題するミッションをRPG感覚で順番にクリアしていくものを指します。

ミッションラリーの最も大きな目的は、その地域を訪れた観光客に楽しんでもらうことです。ミッションラリーを通じ、白川郷の結の精神や面白いストーリーについて楽しみながら理解を深めてもらうなかで、通過型観光から滞在型観光へのシフトチェンジを図ります。

白川郷は有名観光地でありながら、居住地であるということを改めて知ってほしいという住民の想いが込められています。

スマートフォンでミッションをクリアしながら楽しむ 合掌ホールディングス プレスリリースより
▲[スマートフォンでミッションをクリアしながら楽しむ]:合掌ホールディングス プレスリリースより

英語版のデジタルマップで白川郷の内なる魅力をアピール

合掌ホールディングスは、公式ウェブサイトで白川郷英語版デジタルマップを公開しています。

デジタルマップの特徴としては、以下の3つがあります。

  1. 白川郷の文化や歴史、生活風土などに関心を持つ外国人観光客に向けた、音声ガイド付きマップ
  2. 白川郷全体を1つの美術館や博物館のように捉え、音声ガイドと一緒に見学を楽しむことが可能
  3. 観光客のスマートフォンからアクセスできるデジタルマップのため、紙の地図を減らしエコに貢献

    デジタルマップでは、英語白川郷の各スポットについて、それぞれ歴史や文化などを解説しています。

    例えば、白川郷の屋根の雪かきについて解説する箇所では、「村の人々はお互いに助け合う必要がある」と解説されており、結の精神について理解を深められる内容が特徴です。

    「量より質」に転換し持続可能な観光地づくりへ

    すでにオーバーツーリズムが懸念される観光地では、今後は「量より質」に発想を転換し滞在型観光の促進にシフトチェンジすることで、地域住民と観光客が共存する持続可能な観光地づくりに繋げられるでしょう。

    新型コロナウイルスの世界的な流行により、国内外からの観光客の訪問が落ち着いている今だからこそ、レスポンシブルツーリズムをはじめ、改めて持続可能な観光地づくりのためにできることは何かを考え、アフターコロナの観光客の再誘客に備えて対策を講じることが求められます。

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    <参考>

    ・PR TIMES:【世界遺産・白川郷でミッションラリーが2021年1月にローンチへ】住んでよし・訪れてよしの地域づくりへ!新しい観光のカタチを提供。

    ・合掌ホールディングス:デジタルマップ(英語版)

    ・合掌ヴィレッジ:[キーワード] 新しい観光のカタチ -レスポンシブル・ツーリズムとは?

    ・合掌ヴィレッジ:[思考] 観光の負のスパイラル – オーバーツーリズムとは?

    ・PR TIMES:「量より質」の観光地経営へ。オーバーツーリズム課題に直面する白川郷で観光客にアンケートを実施。

    【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

    インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

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    【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

    2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

    「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

    初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

    参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

    <こんな方におすすめ>

    • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
    • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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    • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
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    【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


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    この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

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    この記事の筆者

    訪日ラボ編集部

    訪日ラボ編集部

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