シビックプライド(Civic Pride)とは「都市に対する市民の誇り」であり、まちづくりの文脈では「地域住民ひとりひとりがまちづくりに対して持つ責任感」を指します。
シビックプライドを持つ住民が増えることで、地域の活性化や観光客を迎え入れる風土の醸成などにつながり、インバウンドにおいてもプラスの影響をもたらすと考えられています。
実際に、地域のイベントやキャンペーンを通して地域住民とコミュニケーションをとることで、シビックプライド醸成に成功した事例もあります。
今回の記事では、シビックプライドとは何なのか、シビックプライドを高めるにはどうすればよいのか、さらにシビックプライドを観光客集客に活用した事例について紹介します。
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市民がより良いまちづくりをする:シビックプライドとは
シビックプライドを持つ人が増えることで、まちが活性化するのみならず、まち全体で観光客を歓迎する雰囲気ができるというメリットがあります。
そこで最初に、現在「シビックプライド」という言葉がどのような意味で使われているかについて触れながら、インバウンドの誘致にどういった効果をもたらすかについて解説します。
シビックプライド:まちへの誇りと、まちづくりへの責任意識
シビックプライドは英語で「Civic Pride」といい、日本語に訳すと「市民の誇り」となります。
これは住んでいるまちを自慢する行為を指すものではなく、地域に属するアイデンティティや地域への愛着を持って、まちづくりに取り組む責任感を指します。
観光の面においても、シビックプライドを持つ住民が多く存在することで、地域が一体となって観光の活性化に取り組むことができ、観光客の満足度が向上するなどまちに良い影響を与えると考えられています。
このような背景から、住民のシビックプライドを育成する取り組みに注目している自治体も増加しています。
シビックプライドの高まりがインバウンド促進にもポジティブにはたらく
シビックプライドを持つ住民が増加することで、地域のインバウンド受け入れにもよい影響を及ぼすと考えられてます。
訪日外国人観光客の中には、王道の観光ルートを周遊したいと思う人もいる一方で、日本の暮らしや文化に触れたいと思う人も少なくありません。
この時に、シビックプライドを持つ地域の住民がまちの魅力を最大限に発信するおもてなしをすることで、観光客の満足度の向上やリピーター獲得につながると考えられます。
さらに、さまざまな地域からの訪日外国人観光客を迎え多様な価値観に触れることで、自身の地域がもつ魅力をあらためて自覚することにもつながり、さらなるシビックプライドの向上も期待できます。
インバウンド誘致をするために:シビックプライドを持つ市民の育成
シビックプライドを持つ市民が増えることで、インバウンドの促進にもつながることが期待されます。
そのためインバウンドの誘致に向け、地域まちづくりにかかわっているという責任感を持つ市民を育成する自治体もあります。
ここでは、シビックプライドを持つ市民を育成するためにどういった取り組みが考えられるかについて具体的に解説します。
市民への地域教育でまちへの誇りを高める
シビックプライドの醸成に有効だと考えられている方法のひとつに「地域教育」が挙げられます。
地域教育とは、まちの魅力を発見、発信し、また地域が抱えている課題や解決策について考える教育のことです。地域教育は一般的に小中学校などで盛んに行われていますが、本来は年代問わず市民を対象として行われるものです。
地域教育を実施することで市民はまちの誇りや魅力について意識するため、シビックプライドを持つきっかけとなります。
さらに地域教育では、ただ単に魅力を発信したり課題解決について考えるだけでなく、地域の文化や誇りについて問い、それを地域で共有することも重要です。
住民参加型イベントでまちの魅力を再発見
ワークショップなどを通してまちの課題解決に取り組む参加型のイベントでは、課題解決を通してまちの魅力に気づけます。そういったイベントを通して、市民が主体的に自身の住むまちについて理解を深めることも、シビックプライドの醸成に効果的です。
実際に埼玉県熊谷市では観光協会が主催、制作会社が制作に携わり、複数回のワークショップで構成される住民参加型のガイドブックを制作するイベントが実施されました。
参加した住民は取材や執筆を通して、普段の生活では気に留めることのなかった地域の個性や魅力を認識し、結果的にシビックプライドの醸成につながりました。イベントで作成したガイドブックは熊谷市の全戸に配布されました。
自治体を中心に若者の醸成
シビックプライドの醸成は短期では難しく、中長期的な取り組みが必要です。
さらに自治体を中心とした若者の育成もシビックプライドを持つ市民の育成につながり、中でもまちの小中学校へ通う児童や生徒を対象とした地域学習が最も一般的です。
地域学習では、歴史資料館の訪問や地域の人との交流をなどを通して地域の歴史や魅力を再発見することができ、それらを通してまちに対する誇りや愛情が育つという効果が期待できます。
シビックプライドを観光へ活かすには:国内外の事例
シビックプライドを持つ市民が増加するだけでは、インバウンドの誘致にはつながりません。
シビックプライドを観光に活かすにはどういった方法があるのか、国内外の事例を挙げながら紹介します。
1. 鹿児島県指宿市:市民が率先して訪日外国人を歓迎する、指宿春節フェスティバル
鹿児島県指宿(いぶすき)市では、中華圏の旧正月である「春節」に合わせて、休暇を利用して地域を訪れた訪日外国人観光客を歓迎するイベント「指宿春節フェスティバル」を開催しています。
春節を盛大に祝うために会場にはランタンが飾られているほか、フラダンスや太鼓演奏、花火の打ち上げなどが行われます。
イベントは主に春節の文化がある中国、香港、台湾からの訪日外国人観光客を多く集め、リピーターの獲得にも成功しています。
また、このイベントは訪日外国人観光客から好評を得ただけでなく、訪日外国人観光客と交流する機会として市民からも高く評価されています。
このように、住民をも巻き込んで地域が一体となってイベントを行うことで、シビックプライドの醸成や観光客の満足度の向上につながります。
2. オランダ・アムステルダム:まちへの想いを観光客へアピール、I amsterdamキャンペーン
オランダの首都アムステルダムでは、世界に向けてまちをアピールする「I amsterdam」というキャンペーンを2004年から実施しています。
キャンペーンの名前にもなっている「I amsterdam」は、市民のみならずまちに関わるすべての人がまちを構成する一員であるという意味を持ちます。
このキャンペーンの特徴は、「アムステルダム&パートナーズ」という官民共同の非営利団体を設立し、都市開発や都市プロジェクトの支援につながるキャンペーンを展開していることです。
さらにこのキャンペーンでは、「I amsterdam」のロゴを自由に利用できるようにすることで、街中にロゴが溢れ、市民の地域への愛が観光客へのアピールにつながりました。
シビックプライドによる魅力的なまちづくりで、国内外の観光客へアピール
シビックプライド(Civic Pride)とは、直訳すると「市民の誇り」という意味です。しかしその意味は、単なる郷土愛やまち自慢ではなく、自身が地域のまちづくりにかかわっているという責任感を持つことを指します。
シビックプライドを持つ市民が増えると、積極的にまちづくりがなされ、観光振興にプラスに働くと考えられます。責任感を持ってまちづくりをすることで、訪日外国人観光客を含む外からの観光客に対してまちの魅力をアピールしたいという市民が増えるためです。
こういった責任感を持つ市民を育成するには、地域教育や住民が参加できるワークショップといったイベント、若者の育成が有効的です。実際にこれらの方法でシビックプライドを持つ市民の育成に成功している自治体もあります。
シビックプライドの醸成により観光客の誘致に成功している地域もあることから、これからインバウンドの誘致を進めていくにあたって、シビックプライドを持つ市民の育成は良い効果が期待できる施策の1つといえるでしょう。
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