アメリカ人の5人に1人が当てはまる「SBNR」とは?日本文化が興味の中心に・インバウンドへの活用事例も紹介

SBNRとは「Spiritual But Not Religious」の頭文字をとったもので、特定の宗教への信仰を持たないが、スピリチュアルに関心があり精神的な豊かさを求める信仰的スタンスのことです。現在、主に欧米を中心にSBNR層が拡大しています。

日本の文化はこのSBNR層に強い関心を寄せられています。日本ではこのSBNRという概念はまだあまり定着していませんが、すでにこのSBNRに注目し、ブランディングへの取り組みに活用している地域や自治体もあります。

この記事では、SBNRの概要とその活用例について解説します。

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SBNRとは?海外で注目されている新たな価値観

SBNRは主に欧米で提唱されるようになった概念ですが、日本ではまだあまり知られていません。しかし、その概念はアジアの文化と親和性があり、とりわけ日本はSBNR層から強い関心を寄せられています。

ここでは、SBNRとはなにか、そしてSBNRが注目されている理由について解説します。

SBNRとは?

SBNRとは「Spritual But Not Religious」の略で、日本語では「宗教的ではないがスピリチュアル」という意味です。特定の宗教への信仰を持たないが、物質的な豊かさ以外の精神的な豊かさを求める信仰的スタンスを指します。

SBNRという言葉が一般化したのは、アメリカのカウンセラーであるスヴェン・エルランドソンによって2000年に出版された同名の本によるものが大きいといわれています。しかし、実際にはそれ以前からアメリカでは特定の信仰を表明しない人が増えており、ムーブメントはかなり前から起こっていたといえます。

アメリカの調査シンクタンクであるPew Research Centerによる2017年の調査では、アメリカ人のうち24%がこのSBNRに属するという統計結果が出ています。

SBNR層が関心を持つもの

SBNR層は精神や健康に関する意識が高く、とりわけ欧米にはあまりない仏教および多神教的な価値観に基づいたアジアの文化に関心を示す人が多いといわれています。

たとえば、禅に代表されるマインドフルネスは、すでに欧米圏に多くの愛好者がいます。その他にも近年の流行である菜食主義が仏教への関心と関連しているなど、アジア的な価値観はSBNR層にとって親和性の高いものです。

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日本がSBNR層から注目されている理由

なかでも、日本の独特の宗教観および自然観は、SBNR層に強い関心を持たれています

日本は特定の信仰を持たない人が多い一方で、宗教的な心を尊重しているという、世界でも珍しい宗教的価値観を持っており、SBNR的な性格を元々備えているといえます。また上述したマインドフルネスや菜食主義を好むSBNR層のうち、日本の禅や精進料理へ興味をもつ人も少なくないと考えられます。

たとえば、日本では参拝や供養としての意味合いが強い「お遍路参り」が海外のSBNR層からは「メンタルヘルス&ネイチャーウォーキング」として捉えられることがあります。

このように、日本文化がSBNRの考え方とマッチし、取り組みとして受け入れられる場合もあります。

SBNR層インバウンド誘致の取り組み事例

近年、日本でもこれらSBNR層へのPRを目的の1つとした観光客誘致の取り組みが行われています。ここではその事例をいくつか紹介します。

福島県、茨城県、栃木県:Diamond Route Japan

東京から福島、茨城、栃木の3県へと向かう観光ルートを指す言葉として、「Diamond Route(ダイヤモンドルート)」というものがあります。これに関連して、デジタルプロモーションなどを行う「ダイヤモンドルート情報発信事業」が実施されています。

同事業は2016年にスタートし、2017年以降毎年、日本の歴史や自然、健康をテーマとした動画を公開しています。有名アーティストとのコラボレーションによるクリエイティブなプロモーションが特徴です。

プロモーションの結果、取り組み開始翌年の2017年には福島を訪れる外国人客数が増加し、特に訪日スペイン人の数は2016年の230人から1,170人に約5倍増加しました。

現在2020年までのPR動画が公開されており、2020年の動画の再生回数は約550万回にのぼっています(2020年2月現在)。


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伊勢:The Study of ISE

伊勢市の「The Study of ISE」とは、伊勢市、皇學館大学、南カリフォルニア大学の日本研究所が共同し、運営するプロジェクトです。

もともと伊勢市では、伊勢神宮を足がかりに伊勢市の魅力を海外に発信していこうという動きが盛んでした。その働きかけの一環として、伊勢神宮を中心とした市のPR動画などが作成され、海外でも評判を集めていました。

このような市のブランディング戦略と、海外におけるSBNRへの関心の高まりをうまく融合し、インバウンド対策につなげたものが「The Study of ISE」プロジェクトです。

このプロジェクトでは、神社文化を海外に伝えるシンポジウムや、皇學館大学における講義や伊勢各地でのフィールドスタディが行われています。

関西:Dream Online 企画・Spritual KANSAI

一般財団法人関西観光本部により2020年7月1日に開始された「Dream Online 企画」は、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞しているインバウンドの再開に備えて、動画を通じて関西周遊旅行の魅力を伝え、また海外の旅行者を待望しているというメッセージを発信するプロジェクトです。

YouTubeでは「バックストーリー篇」「ポジティブメッセージ篇」「ディスカバー篇」と題した動画が公開されています。

このうち「ディスカバー編」の「Travel is a pilgrimage, KANSAI Japan」は熊野古道巡礼などの関西における自然信仰やスピリチュアル文化に注目したもので、SBNRを意識した内容となっています。

※3月1日編集部追記

関西観光本部では、伝統文化資源の集積地である地域の特性を活かした、SBNR層の外国人観光客獲得に一層力を入れるとしています。

SNBR層を誘致するための戦略として「Spritual KANSAI」というコンセプトを立ち上げ、文化庁と連携して関西特有のコンテンツを創造しています。

この取り組みの一環として、SBNR層をよりコアターゲットに据えた動画も制作し、配信しています。


さらに、関西観光本部では動画視聴後の閲覧を見据えたスペシャルサイトも開設しています。

このサイトでは、瞑想や武士道など日本ならではの文化について、映像や写真、コラム記事でより理解を深められるようなつくりとなっています。

なお、訪日ラボでは、SBNR層への誘致戦略を含めた関西観光本部の「2025に向けた3つの挑戦」についてインタビューしました。インタビューの詳細は以下の記事からご覧いただけます。

【独自】万博を見据え、関西観光本部が掲げる「2025に向けた3つの挑戦」とは:デジタルマーケティング室長・桑原氏インタビュー

一般財団法人関西観光本部(理事長:松本正義関西経済連合会会長、以下関西観光本部)は、2府8県を対象エリアとする関西唯一の「広域連携DMO」です。関西は2022年に「ワールドマスターズゲームズ2021関西」、2025年に「大阪・関西万博」が予定されているなど、世界的に注目を集めるビッグイベントが多数控えています。コロナ後のインバウンド市場の牽引が期待される関西エリアにおいて、関西観光本部はどのような戦略を描いているのでしょうか。今回、関西観光本部 デジタルマーケティング室長の桑原宗久氏に取材...


愛媛県:Experience Ehime Japan

愛媛県では「Experience Ehime Japan」として、各国へ愛媛県の魅力を発信するキャンペーン動画やWebサイトを制作しています。

その豊かな自然や神社仏閣、1200年以上の歴史を持つお遍路参りなどを、日本の宗教観や自然信仰に興味のある訪日外国人向けのブランディングの1つとして掲げています。

キャンペーン動画は外国人のクリエイターによって制作されたものであり、海外からの目線を強く意識した作りになっています。


会津若松市:SAMURAI CITY AIZU

「SAMURAI CITY AIZU」は、「SAMURAI CITY」の著作権を持つ福島県会津若松市による訪日外国人向けの観光PRプロジェクトです。

特徴的なのは武道や武士道をテーマとしたプロモーションで、武士やサムライのファンの外国人をターゲットとしてPRを行っています。

具体的には、会津若松が持つ城下町としての歴史に着目した、武家社会の遺産や武士道の精神をアピールするブランディングや、幕末における会津の武士たちの「義」を追ったドキュメンタリー映画『AIZU−目覚めよ義の心−』の制作などがあります。

地域の文化を活用して欧米のSBNR層に響くインバウンド対策を

SBNRは欧米を中心に拡大しており、そのなかにはアジア、とりわけ日本の文化に強い関心を持つ人も多くいます。その理由は、日本の独特の宗教観や自然信仰の形式です。

すでにSBNR層へのアピールを意識した観光プロモーションの取り組みが日本各地で始まっており、アフターコロナを見越した観光地の戦略として重要視されていることがわかります。

海外から見た日本の魅力を再発見し、それをわかりやすい形でアピールすることで、拡大するSBNR層への訴求が可能となります。今後も拡大が予想されるSBNR層へのプロモーションが、有利な戦略となり得ます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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