【独自】万博を見据え、関西観光本部が掲げる「2025に向けた3つの挑戦」とは デジタルマーケティング室長・桑原氏インタビュー

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一般財団法人関西観光本部(理事長:松本正義関西経済連合会会長、以下関西観光本部)は、2府8県を対象エリアとする関西唯一の「広域連携DMO」です。

関西は2022年に「ワールドマスターズゲームズ2021関西」、2025年に「大阪・関西万博」が予定されているなど、世界的に注目を集めるビッグイベントが多数控えています。

コロナ後のインバウンド市場の牽引が期待される関西エリアにおいて、関西観光本部はどのような戦略を描いているのでしょうか。

今回、関西観光本部 デジタルマーケティング室長の桑原宗久氏に取材し、「2025に向けた3つの挑戦」について詳しく話を伺いました。

本記事ではその内容をご紹介します。

取材の様子。資料を用いながら、「2025に向けた3つの挑戦」について詳しく説明していただいた。
▲取材の様子。資料を用いていただきながら、「2025に向けた3つの挑戦」について桑原氏から詳しく伺った。

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関西観光本部とは

関西観光本部は2017年4月に設立された官民連携の広域連携DMOであり、関西の各府県、政令市、経済団体、観光団体、国の地方支分部局など官民の62団体および事業者約230社が参画しています。対象エリアは福井県、三重県、鳥取県、徳島県を含む関西2府8県におよびます。

桑原氏は関西観光本部のプロモーションのゴールとして、以下のように語っています。

「短期的には関西広域周遊の活性化、中長期的には持続可能なものにしていかなければなりません。それから関西をゲートウェイとした全国普及への波及、そして一番大切にしているところは観光消費額増に伴う地域GDPの向上。この辺りを念頭に置きながら事業に従事しています。」

▲関西観光本部のプロモーションのゴールについて
▲関西観光本部のプロモーションのゴールについて

続いて、桑原氏は今後の関西エリアにおける、インバウンドの起爆剤となるイベントが多数控えている状況を説明します。

「最近、いろいろな方から「これからは関西だよね」とよく言われます。

その根拠の一つとして、2022年に関西で行われるワールドマスターズゲームズは、アジアで初めての開催だということが挙げられます。

それから大阪・関西万博、その先には大きな集客装置となりうるIR開業に関して、和歌山と大阪とに2つ構想がございます。

このように、世界から注目されるファクトが集中しているということが、インバウンド観光を関西が牽引するといわれている由縁だと思います。

しかし、昨年の訪日外客数は411万人と、1988年以来の低水準になりました。

我々は今までも3つの大きな山(SARS発生、リーマンショック、東日本大震災)を乗り越えて今日に至るわけですが、このコロナ禍をどう乗り越えていくのか。まさしく我々のチャレンジになります。」

▲ワールドマスターズゲームズ関西、大阪・関西万博をはじめ、関西は今後世界の注目を集めるイベントが多数控えている
▲ワールドマスターズゲームズ関西、大阪・関西万博をはじめ、関西は今後世界の注目を集めるイベントが多数控えている

「2025に向けた3つの挑戦」に向けて:桑原氏から詳細に解説

今回の取材では、関西観光本部の「2025に向けた3つの挑戦」について、桑原氏から詳しく伺いました。

以下、桑原氏のプレゼンテーションの内容をご紹介します。

1. 関西広域周遊の活性化:大阪・京都の二極化の緩和

「2025に向けた3つの挑戦」について、1つ目の「関西広域周遊の活性化」についてお話しします。

関西広域周遊の活性化を挑戦とした掲げた背景に、大阪・京都への二極集中が起きている現状がありました。

二極化の話に入る前にこちらをご覧ください。訪日観光客数の関西の構成比です。ここからわかる通り、約40%の外国人が関西に訪れているというのが実態です。

▲2018年度における、訪日観光客数に占める関西の構成比
▲2018年度における、訪日観光客数に占める関西の構成比

2014~18年までの訪日外国人の県別の動向です。見ておわかりの通り、大阪と京都の二極化になっています。

大阪・京都への二極化の状況。この2つのエリアへの訪問者数が、他の関西エリアの訪問者数と比較して圧倒的に多いことがわかる。(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
▲大阪・京都への二極化の状況。この2つのエリアへの訪問者数が、他の関西エリアの訪問者数と比較して圧倒的に多いことがわかる。(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)


ではなぜ二極化が起こってしまうのか。これについて2018年、年末年始に関西に訪れた外国人約1,000名の対面調査を行いました。

その結果、非常に多くの外国人が大阪と京都に泊まり、日帰りで他のエリアに行っては戻り、行っては戻るというベースキャンプ型の訪問を行っていることがわかりました。

この現象は関東でも同様の傾向が見られるのですが、逆に言えばこれを改善すればまだまだ伸びしろがあると考えています。

▲二極化の正体は大阪・京都を「ベースキャンプ」とした、日帰りの他エリアへの移動によるもの。:2018年度自主調査 抜粋
▲二極化の正体は大阪・京都を「ベースキャンプ」とした、日帰りの他エリアへの移動によるもの。:2018年度自主調査 抜粋

課題解決への挑戦:「THE EXCITING KANSAI」宿泊型観光滞在圏開発の推進

上述した二極化を緩和させるための打ち手として、宿泊型観光滞在圏の開発に着手しています。

そこで造成するプロダクトのブランドをTHE EXCITING KANSAIと設定しました。

THE EXCITING KANSAI」とは、関西のもつ食資源、自然資源、伝統文化資源の魅力を活用し、訪日観光客に非日常体験を提供する「観光テーマのShowcase」というブランドイメージを掲げるものです。

関西の持つ伝統文化資源、自然資源、食資源を活用し、訪日観光客に魅力的な非日常体験を提供する試み
▲関西の持つ伝統文化資源、自然資源、食資源を活用し、訪日観光客に魅力的な非日常体験を提供する試み

実際のプロダクト戦略を表した図をご覧ください。

ハイエンド向けのプロダクトには、今欧米で非常に流行っている「セルフガイドツアー」を位置づけ、セルフガイドツアーのトップランナーである奥ジャパン株式会社さんとアライアンスを組み、進めています。

ミドルレンジには、地域の事業者さんとオリジナルの商品を作り、そしてボトムには地元の事業者さんの既存商品、これをトッピングメニューとして位置づけます。

以上のような、3層のプロダクト戦略を推進しています。ハイエンドプロダクトに光を当てることで全体としての効果があるような、そんなプロモーション戦略の実施に着手します。

セルフガイドツアーの商品単価は一つ当たり大体30万円前後と高額ですが、実際に欧米ではそういった価格帯の商品が売れている現状がありますので、関西においても必ず売れると考えています。

▲「THE EXCITING KANSAI」のプロダクト戦略
▲「THE EXCITING KANSAI」のプロダクト戦略

多彩な観光テーマを有する関西を際立たせるために、地域の特色を生かせるよう関西を8つのエリアに分け、一つひとつのエリアにテーマを設けました。

そのテーマに紐づくようなプロダクトを地域の皆様方と今調整しており、受け入れ環境の整備を着々と進めています。この宿泊型観光滞在圏を開発することによって、1つ目の課題であった二極化を緩和することが出来ると考えています。

▲「THE EXCITING KANSAI」宿泊型観光体験のエリア分布図
▲「THE EXCITING KANSAI」宿泊型観光体験のエリア分布図。8つのエリアにそれぞれのテーマが設けられている。

2. 地域GDPへの貢献

続いて、「2025に向けた3つの挑戦」の2つ目の、「地域GDPへの貢献」について説明します。

2018年度の訪日観光客消費額のおける関西が占める構成比は27.1%です。訪日観光客構成比は39.8%だったことと比較すると、消費額の低さという課題が浮き彫りになります。

過去の関西地区の一人当たりのインバウンド消費額の動向を辿ると、2018年度は関東と比較して消費額は36,000円低く、それ以前においては5〜6万円程度、関東より消費額が低いという現実がありました。

なぜこの差が生まれるのでしょうか。先ほど、訪日外国人ベースキャンプ型の周遊スタイルを取っているということは、東京も同じだと申し上げました。

それでは、その日帰り観光スポットの数は関東と関西とではどれくらい差があるでしょうか。東京からの日帰りスポットは大体15例ぐらい。大阪・京都ではどうかと考えると10例ぐらいです。

つまり、日帰りスポットの数が多いほどベースキャンプの日数が増し、観光消費額の単価が上がるということですね。これらを意識して改善していかなければならないと考えています。

東京と関西の日帰りスポットの数の差が、観光消費額単価に影響する
▲東京と関西の日帰りスポットの数の差が、観光消費額単価に影響する

次に、我々はもう一度頭に入れておかなければならないのは消費額の構成比です。我々は特に宿泊費とコト消費に注目しています。

特に宿泊費を改善することで飲食費と交通費も改善すると考えています。

そして、滞在期間の長いターゲット層に足を運んでもらうことも重要です。

外国人旅行客の滞在期間のボリューム層は4日~6日です。これは訪日者数が最も多い訪日中国人の旅行スタイルを反映していますね。対して、最も滞在期間の長いといわれている豪州は、中国のほぼ倍である7〜13日です。また、2019年の一人当たりの訪日支出額が最も高いのも豪州です。このあたりを狙っていきたいところです。

2018年 訪日外国人の滞在期間別の内訳。中国のボリュームゾーンは4〜6日間に対して、豪州のボリュームゾーンはその倍に近い。(出典:日本政府観光局)
▲2018年 訪日外国人の滞在期間別の内訳。中国のボリュームゾーンは4〜6日間に対して、豪州のボリュームゾーンはその倍に近い。(出典:日本政府観光局)

課題解決への挑戦:長期滞在型観光客の獲得

これらの状況を踏まえて、関西観光本部では課題解決のために「長期滞在型観光客の獲得」に挑戦しています。

この戦略を練るにあたって、関西観光本部はWho, What, Howを定め、実現に取り組んでいます。

Who:ET、SIT、そしてSBNR層をターゲットに

以下の図は、旅行者の客層を三層に分けたイメージです。

その中で、FIT(個人旅行客)のなかでもETと呼ばれている、Educate Traveler、それからSITと呼ばれているSpecial Interest Traveler、ここにターゲットを定めています。

なぜなら、彼らは趣味嗜好や学びへの投資を惜しまない層だからです。

旅行客の客層のイメージ
▲旅行客の客層のイメージ

我々はさらに、注目したい層としてSBNRを掲げました。SBNR層とはSpiritual But Not Religious、無宗教型スピリチュアル層と訳され、精神的なものに非常に興味を持たれている層です。現在欧米で増加傾向にあり、彼らは自然循環指向、禅、マインドフルネスやビーガン等に対してとても高い関心を持っています。

つまり、SBNR層は、日本の文化や価値観にシンパシーが高いと我々は考えています。

また北米の調査期間であるピュー・リサーチ・センターのデータによると、北米で18歳以下の87%がSBNR層、全国民の1/5がSBNRだということです。

さらに、欧州の方がSBNRの方が浸透が速いということ、調査の数値でいうと約4割がSBNRだと言われています。

▲欧米豪各国で台頭するSBNR層の取り込み
▲欧米豪各国で台頭するSBNR層の取り込み

ではこのSBNR層になぜ我々が注目していくのか、3つの理由をあげます。

1つ目は、さきほどご紹介しました、日本の誇りでもある関西の伝統文化資源との親和性が非常に高いということ。

2つ目に、彼らはSIT層でもあり、またET層でもあるので可処分所得が非常に高い層であるということ、3つ目に、なによりも2025年の大阪・関西万博以降のボリュームゾーンに相当すると考えております。これがコアターゲットの考え方です。

What:「THE EXCITING KANSAI」を徹底的に訴求する

では、次に何を訴求していくか。それは我々のプロダクトブランド、THE EXCITING KANSAIを徹底的に訴求していくということです。

長期滞在型の旅行客が旅行に求めることは何かについて2019年度の我々の調査事業では、自然・食・伝統文化が圧倒的なニーズとして検知されました。

その後、さらに複数回答を取ってわかったことは、Tradition(伝統文化)の要素が最も高いということが判明いたしました。

また直近では、去年の秋にコロナ禍で体験したいテーマについて調査したところ、文化観光が圧倒的な関心値として検証することが出来ました。

このように2つの調査事業で検証された重要度が高いことが検証された伝統文化資源を、どうやって訴求していくとターゲットインサイトを動かすことが出来るのかを考えた図がこちらです。

関西が持つ多様な伝統文化資源を体験商品に昇華させることで、旅の提供価値が生まれる
▲関西が持つ多様な伝統文化資源を体験商品に昇華させることで、旅の提供価値が生まれる

上記の図の一番左が、関西の広域に点在する伝統文化資源の一例です。

これを体験商品に昇華し、文化観光体験を形成していきます。そこで得られる旅の提供価値を訴求していく、これがWhatの考え方です。

特に、先ほど紹介したSBNR層を捉えるうえで大事なことを以下の図に示しました。左は宗教感のある日本人です。右がSBNR層ですね。

例えば宗教観のある巡礼や、山岳信仰であったり、祈りというものはまさしく「宗教行事」ですが、SBNR層にとってみれば「ネイチャーウォーキング」と捉えられるわけです。

瞑想はメディテーションであったり、座禅は経営理念の学び、精進料理は実は自然食、武士道は教養。

こういったところを分析・解析して情報発信をしていかなければ、SBNR層には全く響きません。我々はここを重視します。

日本人が持つ宗教観を、SBNR層を意識した形で発信することが肝要
▲日本人が持つ宗教観を、SBNR層を意識した形で発信することが肝要

How:文化観光体験をテーマに沿って訴求していく

では、そういったものをどうやって伝えていくのか。つまりHowですね。具体的な方法としては、文化観光体験を訴求していこうと考えています。

テーマは、巡礼、瞑想、癒し、詫び寂び、精神、感謝、祈りです。そしてこのテーマが外国人に本当に響くのかというのを検証しました。

以下のグラフがその検証結果です。それぞれの体験意向の平均値は62.5%と非常に高い値として検出されました。

特徴的なものは、コロナ禍におけるストレスフルな状態が影響してか、「癒し」が非常に高かったですね。米国、英国、カナダ、豪州という英語圏で調査したのですが、この「癒し」が非常に高いというのがトレンドとしてありました。

ではその6つの中で、テーマをくくるコンセプトが必要になります。色々熟考の末、6つのテーマをまとめるコンセプトを「Spiritual KANSAIと設定しました。

6つの文化観光体験のテーマにおける、英語圏の需要性調査:2020年度テーマ需要調査 抜粋
▲6つの文化観光体験のテーマにおける、英語圏の需要性調査:2020年度テーマ需要調査 抜粋

Spiritual KANSAI:文化庁と連携して、関西特有のコンテンツを創造する

では、Spiritual KANSAIというコンセプトをどのようにターゲットに発信していくのか。これは具体的にコンテンツが必要ですよね。

実は今年度初めて文化庁さんと共に取り組んだものになるのですが、以下のスライドが文化庁との取り組みでSpiritual KANSAIを伝えていく取り組みの全体像です。

映像アーカイブとして約42本、デジタルマガジンとして32本のコラム、そして写真集。それから初の試みとして音声ガイドを作りました。

ここで感動を創造し、需要を喚起していくときに、受け皿とならなければいけない商品が必要となります。つまりさきほどご紹介したセルフ・ガイド・ツアーのような商品を具体的に造成しなければなりません。

こういった4つの素材をつくり、地上戦、空中戦で徹底的に活用することによって、THE EXCITING KANSAIを活性化していく、そういった戦略を描いています。

文化庁と連携し、文化観光体験の魅力を伝えるコンテンツを開発
▲文化庁と連携し、文化観光体験の魅力を伝えるコンテンツを開発

次年度の構想について:プレミア文化観光ツアー、特別文化体験の造成へ

次年度の構想を少しだけご紹介させていただきます。

来期は、特にSpiritual KANSAIをどう進化、拡張させていくのかということを考えています。

ウィズコロナ時代では3密を避けることが国内外で選ばれるのは周知の事実であり、その中でいかに満足を得てもらえるか、そうしたコンテンツを開発しなければいけないと思っています。これは政府が言っている「量から質への転換策」に通じると考えています。

具体的には、我々は日本が誇る関西の伝統文化資源を活用した「特別文化体験」を作っていきたいと考えています。この「特別文化体験」の定義としては、「特別な場所×一流講師」という掛け算だと今は考えています。

例えば、由緒ある寺社仏閣の非公開のエリアなどがわかりやすいでしょうか。その中で、道を究めた人、例えば人間国宝、師範、師匠というような方に教えを乞うような特別な体験をイメージしています。

イメージが凝り固まらないようにあえてあまり具体的にはしていませんが、これらを核にしたプレミアム文化ツアーをつくっていこうというのが、次年度の柱になります。

▲次年度の構想
▲次年度の構想

3. コロナ禍における情報発信

そして今日の最後のチャレンジについてお話しします。色んな地域の自治体やDMOさんが悩んでおられます、「コロナ禍における情報発信」についてです。

実はこの件について、「国際往来の再開時に、観光客の争奪戦が起きる」という危機感、緊張感がみなさんあまりないのではないか?と思っています。

2018年には世界で年間14億人が海外を旅行して、約200兆円を消費しています。そしてこの消費額は世界の経済成長率が3%といわれている中で、4%、5%と伸びているとんでもないマーケットだということは改めて認識すべきでしょう。

その一方で、世界と比較すると日本の観光収入は9位であり、実は観光において日本は後進国です。コロナ禍が収束して再び国際往来が再開した時、日本は観光先進国である競合と戦っていかなければならないことを念頭にいれるべきと考えています。

そのためには、先ほどから申し上げている緻密な戦略のもと、仮説を検証したマーケティング、それからプロモーションを練りに練って発信していかないと、とてもじゃないけど世界には勝てない。そういった緊張感を持ちながら、日々、アイデアを練っています。

▲インバウンド市場の巨大さと、日本は「観光後進国」であることを強く認識すべきだ、と桑原氏
▲インバウンド市場の巨大さと、日本は「観光後進国」であることを強く認識すべきだ、と桑原氏

課題解決への挑戦:渡航地に関西が選ばれるための”Dream online企画”の推進

では、世界に勝ち抜くためにはどうしたら良いか。当然ですが、海外旅行を計画する際の旅行地に関西が選ばれなくてはなりません。

それをどうやって達成するかというと、訪れたい旅行地=関西というパーセプションを形成する。これが最後の挑戦です。

コロナ禍の世界では様々なことが起きていますが、在宅率の高さはデジタルプロモーションの好機と捉えています。

昨年の7月から在宅の海外旅行検討層に、関西の観光資源の魅力、それから海外から旅行者を待望するためのメッセージの拡散を始めています。すでに第一弾、第二弾のプロモーションを開始しています。

そしてその目的は、海外旅行を形成する際の目的地として関西が選ばれるということです。

第二弾のYouTubeプロモーションについては、12月28日から1月5日の年末年始にかけて特に注力しました。この期間は、世界で最も長く動画が視聴される時間だからですね。

第一弾、第二弾の合計再生回数は1,100万回を越えています。

しかしながらよく誤解されてしまうのですが、再生回数を増やすことが目的ではありません。

再生回数は確かに中間指標ではありますが、我々が大事にしているのはこういった動画を視聴する、コラムを読む、音声ガイドを聞くといったコンテンツを通して、どのような態度変容を起こせるかということです。

つまり、関西に訪れたいという態度変容が本当に起こっているのか。これが我々の注視しているところです。

▲関西観光本部が企画した「Dream online企画」は、第一弾、第二弾を合計して1,100万回以上再生されている。
▲関西観光本部が企画した「Dream online企画」は、第一弾、第二弾を合計して1,100万回以上再生されている。

うれしいことに、日々ありがたいメッセージが我々のマーケティングダッシュボードに寄せられています。

「本当に行きたい!バケットリストのトップだ!」イギリス在住の男性だとか、「私たちは今年再訪問を予約した!待ちきれない!関西エリア大好きです!」豪州の女性だとか、「来年の秋には、この美しい関西に行けることを望んでいる」だとか。

こういった来訪意向を直接示すようなコメントをたくさん寄せていただいています。

動画に対して、世界中から評価するコメントが寄せられている
▲動画に対して、世界中から評価するコメントが寄せられている。

大阪・関西万博を見据えた目標設定:「訪関西意向率」を70%以上へ

我々がコロナ禍でやるべきことは、現地には行けないわけですから、デジタルプロモーションを精緻化し、戦略を継続することでターゲットの態度変容を起こしていく。この積み重ねだと考えています。

そしてこの態度変容の積み重ねを数値化し、KPIを管理していかなくてはなりません。

我々デジタルマーケティング室が2025年の大阪・関西万博を見据えたKPIには、「訪関西意向率」を掲げています。「訪関西意向率」は2018年には25.7%でしたが、前回の調査では32.4%になりました。

今、まさしく第三回調査を実施中です。この積み重ねをすることによって、大阪・関西万博までに訪関西意向率を70%にしたい。できると確信しております。

関西観光本部のデジタルマーケティング室では「訪関西意向率」をKPIに掲げ、2025年には70%以上に改善させることを目指す
▲関西観光本部のデジタルマーケティング室では「訪関西意向率」をKPIに掲げ、2025年には70%以上に改善させることを目指す

観光事業者へのメッセージ:コロナ禍で気づけたことを胸に、「三方よし」の精神を

国際往来再開が待たれる中、我々が取り組むべきことは地道な準備に尽きると考えていまして。

誤解を恐れずいうと、政府が掲げた訪日観光客4,000万人の達成に固執しすぎたのではないかと思っています。

「三方よし」の精神がありますが、我々に置き換えると来訪者が満足し、地域が潤い、双方にまた訪れたい、また来てほしいという気持ちになる、そして関わる事業者の稼働率もあがるという循環型のスキーム、つまりは持続可能な観光産業を構築しなければならないということだと思っています。

そのスキームが非常に脆弱だった2019年度、この年は観光客数も消費額も最高値を上げました。その一方で非常に残念なことに、オーバーツーリズム観光公害という報道や、特定地域には「No More Inbound」というような空気感すらあったのも事実です。

様々な常識に変革を強いられるコロナ禍によって、多くのことを気づかされたのではないかとも思っています。

それがまさしく、「三方よし」の精神だと思っています。政府が観光立国を目指した本質的な意味合いは地域振興に他なりません。

関西観光本部は地域の皆様方のご支援をいただきながら、先にご紹介しました宿泊型観光滞在圏の開発、Spiritual KANSAIの取り組みという、関西特有の関西ブランディングを推し進めることで地域振興を加速させていきたいと思っています。

プロフィール:関西観光本部 デジタルマーケティング室長 桑原宗久

桑原宗久 MUNEHISA CARLOS KUWAHARA

一般財団法人関西観光本部デジタルマーケティング室長

・1988年4月 株式会社電通入社
・1988年5月 同関西支社新聞雑誌局中央部
・1999年1月 同関西支社営業局営業部
・2000年、2004年 営業褒賞受賞
・2018年8月 一般財団法人関西観光本部出向
・2020年3月 第2回日本国際観光映像祭国内誘客部門最優秀賞受賞


「大阪市・京都市2極化」と「観光消費額低調」という関西の2大観光課題を解決すべく、海外旅行客の三大関心観光テーマ「伝統文化」、「自然」、「食」を訴求、特に関西の最大の強みである「伝統文化」をフックとしたプロモーションで、海外旅行検討層に対する関西への訪問意向率を高めて、“訪れたい渡航地=KANSAI”というパーセプション形成を促すデジタルマーケティングを推進中。

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2023年年間の訪日外客数は2,500万人を突破。外国人消費額は5兆円で、過去最高額となっています。また、2024年1月の訪日外客数が268万8100人となり、2019年1月(268万9339人)とほぼ同数となったと発表され、今後さらなる伸びが見込まれます。

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訪日ラボ編集部

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