2021年1月19日、観光庁により2021年度の観光庁関係予算概要が発表されました。観光産業の再生を目指し、さらに「新たな旅のスタイル」の定着と普及を図りながら、国内外の観光客を集めるための滞在型観光コンテンツの実現を目指す内容です。
この記事では、2021年度における観光庁の予算内容について解説します。
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今後は感染予防に取り組みながら、積極的な変革が求められている
観光庁は新型コロナウイルス感染予防策を大前提としつつ、観光需要を回復させるために、まずはGo Toトラベル事業を延長すると発表しました。さらに企業と地域の環境整備や、企業と地域の持続的な関係性の構築を図り、国内の観光需要を喚起させることを目指していく予定です。具体的には新型コロナウイルス感染予防策のために、事業者と旅行者の双方に対してガイドラインを提示し、これからの旅における新しいエチケットを周知することを徹底させます。また、ホテルや旅館、観光街を再生させることを目的として、国が補助制度や融資制度を拡充させて強力に支援していきます。
また、将来的にインバウンド回復も重視しており、海外の観光客を惹きつけるコンテンツの充実化、外国人の受入環境整備、インバウンドの段階的復活も推進していくことが決まりました。たとえば、古民家や城、社寺など地域特有の宿泊施設を整備していきます。観光地では多言語対応や無料Wi-Fiの整備を促進させ、ストレスフリーな旅行の提案を目指していきます。
このように新型コロナウイルス感染予防策に取り組むことを基本として、積極的な変革を進めていくことを観光庁は今後の方針としています。
観光予算は「新しい」、「改革」、「デジタル」注視
2021年度の新しい観光予算では「新しい」、「改革」、「デジタル」という3つの大きな枠組みを設定して予算を決定しています。以下で大きく3つに分けて予算の中身を解説します。
観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着に17億1,700万円 :前年比の1.34倍
観光庁は「新たな旅のスタイル」を普及・定着させることを目指しており、合計で17億1,700万円の新規予算を計上しました。この予算額は前年比の1.34倍となり、国全体で注力していきたい施策といえるでしょう。新型コロナウイルスによる社会変化を踏まえたうえで、従来とは異なる観光スタイルの定着を図ることが目的です。
これまでは特定の時期に一斉に休暇を取得して、短い宿泊日数で旅行することが一般的でした。しかし、このような従来型のスタイルではなく、長期滞在型の「新たな旅のスタイル」を普及・促進させることを目指して予算が計上されています。
「新たな旅のスタイル」を普及させるために、ワーケーション、ブレジャー、サテライトオフィスに注力します。
ワーケーションでは、テレワークを活用してリゾート地や温泉地で余暇を満喫しながら仕事ができるように取り組んでいきます。ブレジャーとは出張の機会を活用して、出張先で滞在日数を延長して余暇を楽しむことです。サテライトオフィスをワーケーションに利用する環境整備の支援も実施しています。
さらに、滞在型旅行を実現するためのコンテンツ整備や旅行会社による「新たな旅のスタイル」に適した旅行商品の提案なども観光庁が支援します。企業と地域を対象としたモデル事業、旅行者や企業経営者への普及啓発なども図ることが予定されています。
また、健全な民泊サービスの普及を目指していきます。違法民泊を排除して、安心して利用できるサービスを普及させることが狙いです。
加えて、ユニバーサルツーリズムの促進事業も展開します。誰もが旅行を楽しめるように観光地の受け入れ体制の強化や消費者への情報発信などを実施し、意識の転換を促します。
これらの取り組みを実現するために地域と民間企業、旅行会社が協力する体制の構築が進められます。三位一体となって取り組むことで、新しい旅のスタイルを定着させることが目的です。
「国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの造成」に177億7,200万円:観光業界を全面的に改革
「国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの造成」には全体で177億7,200万円の予算が計上されています。予算内容の1つとして、DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出が挙げられてます。予算は8億円です。デジタル技術を複合的に活用し、観光サービスの変革や新たな観光需要の創出を目指しています。
具体例は以下のとおりです。
- オンライン空間上で観光ツアーを楽しみ、観光地の情報収集や消費機会などを提供する
- 自律走行やAR、MR、屋内測位などの技術を用いて、パーソナルスペースを確保しながら快適に鑑賞できる環境の整備
- 顔認証技術の活用により、自分の顔とクレジットカード情報を登録し、手ぶらで楽しめる観光の実現
観光地域づくり法人(DMO)の改革には、5億4,000万円の予算が計上されています。魅力のある観光地域づくりのために、各地に優良な観光地域づくり法人を設立する体制を強化します。
具体的には以下のような取り組みに支援を実施することが特徴です。
- 外部専門人材の登用
- 中核人材の育成
- 自主財源(地方税)導入に向けた関係者の合意形成
広域周遊観光促進のための観光地域支援事業には7億6,500万円の予算が計上されています。「新たな旅のスタイル」に対応するために観光地域づくり法人が中心となり、地域が一体となって実施する取り組みに対して支援されます。
補助対象事業として、以下5つの取り組みが含まれています。
- 調査、戦略策定
- 滞在コンテンツの充実
- 受け入れ環境整備
- 旅行商品流通環境整備
- 情報発信、プロモーション
他にもさまざまな改革や事業への支援が含まれています。観光業界全体の改革が求められており、そのために幅広い支援を実現させるように大きな予算が組まれています。
観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の可能性|VRでのデジタル旅行など事例も紹介
新型コロナウイルスの感染拡大は旅行業界に甚大な影響を及ぼしています。世界中で規制が広がり、国境を超えることはおろか、国内の移動も大きく制限を受けるようになりました。人が動くことで成り立っていた旅行業界には今、最新のデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出が求められています。実際に多くの旅行会社・旅行代理店では、コロナ禍を機にデジタルトランスフォーメーションによる事業変革が積極的に進められています。今回はデジタルトランスフォーメーション(DX)とは一体なにか、旅行業にできるデジタルト...
「受入環境整備やインバウンドの段階的復活」に 208億2,100万円
「受入環境整備やインバウンドの段階的復活」には、208億2,100万円の予算が計上されました。これにより、2021年度においてインバウンドの段階的復活を目指します。まず、インバウンドのために戦略的な訪日プロモーションを実施する費用として、73億7,000万円の予算が計上されています。新型コロナウイルスの収束状況を見極めながら、訪日客を回復させるためのプロモーションに取り組んでいきます。
具体的には以下のような取り組みが予定されています。
- 日本政府観光局のウェブサイトやアプリを通じた安心安全情報の発信
- デジタルマーケティングを活用したプロモーションの実施
- 東アジアを含むアジア10市場のリピーター層に対するキャンペーン
また、既存のプロモーションのさらなる強化を図ります。アジア市場や欧米豪市場への訴求、スポーツ関心層へのプロモーション、地方への誘客などです。
アジアはボリューム層が形成されているため、再訪日意欲を喚起します。欧米豪市場は旅行期間が長いという特徴があるため、アクティビティを中心にした訴求を実施する予定です。
さらにICTを活用した多言語対応などによる観光地の「まちあるき」の満足度向上には10億3,700万円の予算が計上されています。たとえば、街中の周遊機能の強化を図り「まるごとインバウンド対応」を実現します。
具体的には以下のとおりです。
- 多言語表示の充実、改善
- エリア無料Wi-Fiの整備
- 飲食店、小売店なども含めた多言語対応、先進的決済環境の整備
- 観光スポットにおける段差の解消
- トイレの洋式便器を整備
また、先進的なサイクリング環境整備事業も進めます。具体的には以下のような取り組みが含まれています。
- 走行環境整備
- 受け入れ環境整備
- 魅力づくり
- 情報発信
他にも、外国人観光案内所の機能強化、古民家などの歴史的資源を活用する観光まちづくり、「道の駅」のインバウンド対応などが計画されています。
以上のような幅広い環境整備や事業展開を通じて、最終的には2030年度に訪日外国人旅行消費額15兆円に達することを目指しています。
コロナ禍を受けて観光業での全面的な改革が求められる
新型コロナウイルスの影響により観光業は大きなダメージを受けました。そのため、今後はコロナ禍における「新しい旅のスタイル」の普及と新事業が求められています。観光庁の予算内容をみると、デジタル技術を活用した内容が目立ちます。観光業は全面的な改革を求められるため、大きな予算が計上されていることがわかります。
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