日本政府は東京五輪において、海外客の受け入れを見送る方向で調整を進める方針を明らかにしました。
新型コロナウイルスの感染拡大の可能性を考慮し、東京五輪は海外からの観客がいないオリンピックとなる可能性があります。
それでも五輪自体を開催することには、インバウンド業界におけるメリットがあるといえます。
本記事では東京五輪をめぐる最新の動向と、コロナ禍で五輪を開催する意義を考察します。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
政府・IOC共に外国人一般観客受け入れには慎重な姿勢
東京五輪における外国人一般観客の受け入れについて、関係組織はどのような考えを持っているのか、各組織の姿勢をご説明します。
IOC、IPC、東京都、組織委員会、政府での外国人観客についての正式表明が待たれる
日本政府と、東京都、大会組織委員会は、外国人観客受け入れを見送る方針を固めました。
政府、都、組織委、国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)を交えた5者の代表者協議を経たうえで、聖火リレーが福島で始まる25日より前に、海外在住の一般客受け入れ断念について正式表明する方向で調整しています。
一方でIOCは、スポンサー関連の招待客らが入国し観戦できるよう要望しており、日本側が検討を続けているとされています。
コロナ禍で五輪を開催する意義とは
もしも東京五輪が海外からの観客を入れない形の開催になるとしても、その開催自体にはメリットがあります。
その理由を以下で詳しくご説明します。
五輪での宣伝効果は大きい:メディアを通じて世界中での宣伝につながり、効果が長期にわたっても観察できる
コロナ禍でも五輪を開催するメリットとして、まず五輪での宣伝効果の大きさが挙げられます。
企業スポンサーの広告は、テレビやインターネットを通じて世界中に流れるため、コロナ禍で東京会場に直接足を運べなくても、オリンピックを視聴している全世界中の人々に向けて好印象を与える影響があるのではないかと考えられます。
みずほ総合研究所がまとめた以下のグラフからは、スペインやオーストラリア、ギリシャなどこれまでの五輪開催国において、五輪前後を通してインバウンド観光客数の増加傾向が続いていることがわかります。
五輪の開催により、長期にわたって様々な場所で宣伝できるというメリットがあると考えられます。

開催した実績が「レガシー」に。「東京五輪モデルはコロナ後も継承」と橋本氏
大会組織委員会の橋本聖子会長は、海外客受け入れ見送りの報道が行われた3月3日の前日の協議で、巨大化したスポーツイベントの簡素化は重要だと表明しました。
今回の東京五輪の事例が、巨大化したスポーツを競技中心にそぎ落とすことにつながるとし、東京五輪モデルをコロナ後も継承することを提案しました。
ウィズコロナ時代に行われた最大級のスポーツの祭典として、東京五輪は感染症を乗り越えるための先行事例になり、今後も各国で参考にされるでしょう。
経済波及効果は五輪開催後の方が大きい
東京五輪の経済波及効果については、大会開催そのものにかかる直接効果よりも、開催決定後長期に渡ってもたらされるレガシー効果の方が大きいとされます。
東京都オリンピック・パラリンピック準備局は2017年に、「大会開催に伴う経済波及効果」を試算しました。
これによれば、東京オリンピックの招致が決定した2013年から2030年までの中で、レガシー効果としてあげられている経済波及効果は、東京で12兆円、全国で47.1兆円にのぼるとされています。
この効果は、コロナ禍後も長きに渡って持続するものといえます。
コロナ禍でも見込まれる経済波及効果
全国のレガシー効果として算出された47.1兆円の内訳としては、生産誘発額(27.1兆円)、付加価値誘発額(13兆円)、雇用者所得誘発額(7.3兆円)などが挙げられます。
コロナ禍で人の動きが制限される中、この試算通りの経済波及効果が本当に発生することは難しいでしょう。
しかしながら、長期的な視点では、経済にプラスの効果を及ぼすことは間違いありません。
生産者誘発額や、付加価値誘発額、雇用者所得誘発額として実際に試算対象となっているものとしては、以下の項目があります。
- 新規恒久施設・選手村の後利用、東京のまちづくり、環境・持続可能性
- スポーツ、都民参加・ボランティア、文化、教育・多様性
- 経済の活性化・最先端技術の活用
これらのうち多くの試算項目は、コロナ禍に関係なく見込まれる経済効果です。
たとえば雇用社所得誘発額において、会場の改修や仮設施設の撤去はコロナ禍に関係なく必要な作業です。
また東京都民に選手村を住居として利用してもらうことはすでに決定しており、その後はオフィスや商業施設など新たな用途での活用も期待されています。
これらの点は、コロナ禍の現在でもレガシー効果として見込まれることには変わりありません。
関西大学名誉教授の宮本教授も、生産者誘発額、付加価値誘発額について以下のように語っています。
「どんな形になったとしても、新型コロナ拡大による経済への打撃は大きい。しかしながら、これまで東京大会の準備のために実施されてきた公共事業などの経済効果はすでに実現しているし、東京大会を目指して開発されてきた映像、通信、自動運転などのITS技術・ロボット産業の拡大、5Gの進展、水素社会の実現などの技術開発は続けられて、レガシー効果として日本の社会、経済、医療、生活などの発展に貢献していくことであろう」
関連記事:五輪開催の意義をもう一度考える。コロナ禍で変容する価値と、遺すべきレガシー
五輪開催を最大のチャンスに、適切な情報発信を
外国人観光客の受け入れ判断の正式表明は3月25日と見られており、それまでは注視していく必要があるでしょう。
五輪後もコロナ禍での大会としてレガシーになるほか、宣伝効果や経済効果が見込まれるため、たとえ外国人観光客が来なくても五輪の開催実現はインバウンド業界にとってはポジティブといえます。
コロナ禍の五輪開催は、世界中から大いに注目されます。
情報発信などを適切に行うことで、五輪開催後往来が再開した際の訪日客需要を狙っていくことが期待されます。
<参照>
毎日新聞:東京五輪、海外客受け入れ見送りで調整 コロナ拡大懸念に配慮
朝日新聞デジタル:東京五輪、海外一般客の受け入れ断念へ 日本側が方針
みずほ総合研究所:2020東京オリンピックの経済効果
ブルームバーグ:東京五輪・パラで5者協議、海外観客受け入れは月内に判断で一致
東京都オリンピック・パラリンピック準備局:大会開催に伴う経済波及効果
関西大学プレスリリーズ:どうなる東京五輪!?
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!