世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国での入国規制などにより、世界各国の航空会社は大きな影響を受けています。
IATA(国際航空運送協会)によると、2021年4月の世界の航空需要は、国内線では前月より改善したものの、国際線は各国の入国規制の影響で依然厳しい状況が続いています。
2019年4月と比較して、有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)は、国際線・国内線をあわせると65.4%、国際線のみでは87.3%と大きく減少しました。
IATAは6月2日、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした一連の渡航規制について、データやAIなどの情報に基づいた柔軟な規制に置き換えるよう、G7(主要7か国)に要請しました。
また世界各国の航空会社では、新型コロナウイルスワクチンの接種が進められており、ルフトハンザドイツ航空は6月7日、ドイツで働く従業員へワクチン接種を開始しました。
海外ではエミレーツ航空のほか、カタール航空、シンガポール航空、キャセイパシフィック航空などでも、ワクチン接種済みの乗務員による定期便を運航するなど、パイロットや客室乗務員のワクチン接種を積極的に行っています。
日本でも、企業や大学などでの職域接種が6月下旬から開始される予定で、JAL(日本航空)ANA(全日空)もワクチン接種に向けて準備を進めています。
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【アジア】日本では減便続くも、夏の需要回復見込む
日本国内では依然として減便調整が続いていますが、夏の旅行需要を見込み、臨時便の運航も予定されています。
日本国内
ANA
ANA(全日本空輸)は、国内線で7月も1万便以上を減便し運航率51%となるほか、国際線では10月まで36路線を運航し運航率は20%となります。
なお4月の搭乗率は、国内線が44.6%、国際線が16.9%でした。
7月の4連休や8月のお盆休みのピーク時には、全国で1日10万人の国内線利用を見込んでおり、7月の連休では国内線6路線で臨時便を設定します。
またヤンゴン発成田行きの臨時便を、沖縄/那覇経由で7月9日に運航するほか、7月にサンフランシスコ、シカゴ、フランクフルト発の関西行きの臨時便をそれぞれ1便運航します。
JAL
JAL(日本航空)は7月に2度目となる減便調整を行いますが、運航率は6月の61%から74%に改善します。
国際線は、7月から羽田~シアトル線の増便などを行うものの、運航率は9月まで25%程度で推移する予定です。
JALは6月21日に、羽田空港で2020年12月に本格定期に開始されたサービス「JAL SMART AIRPORT」を新千歳空港でも全面オープンしました。
その他
ソラシドエアは6月に減便を追加し、6月の減便は合計で532便、減便率23%となったほか、7月2日付けでJALグループとなる春秋航空日本も、夏休み前まで減便を継続する計画です。
また中部空港(セントレア)は6月17日に国際線旅客便の運航再開から1年を迎え、現在の便数は最盛期の98%減ですが、各社とも再就航の動きがみられています。
成田国際空港では、2020年4月から閉鎖していた一部ターミナル施設を7月1日から再開するほか、7月5日からは空港内事業者の従業員を対象に、新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施します。
また関西エアポートは、2020年度連結決算を発表し、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業収益は前期比73%減となりました。
中国
フィンエアーと吉祥航空は、7月1日に共同事業契約を締結します。
両者は2019年7月の吉祥航空による上海/浦東〜ヘルシンキ線開設にともない共同運航(コードシェア)を開始し、翌8月からはマイレージ提携も行っています。
共同事業により運賃の調整やマイレージ会員への特典の強化などを図るほか、上海/浦東から中国57都市、ヘルシンキからヨーロッパ65都市への接続性の改善も見込んでいます。
台湾
スターラックス航空は、台北/桃園〜マニラ線について、7月8日から週2便で開設すると発表しました。
8月からは週3便を運航する予定で、機材はエアバスA321neoを使用します。
同航空は桃園を拠点に、ペナン、マカオ、バンコク、東京、大阪、クアラルンプールにエアバスA321neoで就航し、週に30便程度運航しています。
【東南アジア】増便や再開、新規路線の開設相次ぐ
東南アジアでは、各国で増便や再開、新規路線の開設などの動きが出てきています。
タイ
タイ国際航空は、関西〜バンコク線を7月1日から増便します。
成田~バンコク便は7月以降、週3便の運航を継続し、羽田~バンコク便は週1便から週2便に増便し、中部~バンコク線も週2便で再開します。
シンガポール
シンガポール航空は6月16日から、成田経由シンガポール/ロサンゼルス線を再開します。
なお最新の旅客と貨物需要を鑑み、運航便数は当初計画の週5便から週3便に変更されます。
フィリピン
フィリピン航空は、6月14日から福岡~マニラ線を週4便に増便するほか、6月19日から名古屋/中部~マニラ線を週4便に増便します。
さらにマニラ~テルアビブ線を10月までに開設する予定です。
イスラエルでは推定28,000人のフィリピン人が働いているとされ、フィリピン航空は1940~50年代にテルアビブに就航しており、路線が復活することとなります。
ベトナム
6月2日、ベトナム航空当局は、5月31日から停止していた首都ハノイとホーチミンへの国際航空便受け入れを、即日再開すると発表しました。
またベトナム航空は、7月の日本路線について旅客便全休を運休を決定しました。
ベトナムで変異株が確認されたことなどを受けたもので、旅客機を利用した貨物便の運航と、ベトナム政府の要請による、帰国支援を目的とした運行は継続されます。
インドネシア
ガルーダ・インドネシア航空は、日本発着の3路線を7月1日から運休します。
新型コロナウイルスの影響に伴う需要動向を鑑みたもので、成田~デンパサール線は7月31日まで、関西~ジャカルタ・デンパサール線は10月29日まで運休します。
インド
インドのタタグループとシンガポール航空が共同設立した航空会社、ビスタラは、6月16日から羽田~デリー線に就航する計画を発表しました。
ビスタラはJALやシンガポール航空とのコードシェアで日本へ乗り入れていますが、自社運航便の就航は初めてです。
【北・南米】ハワイやカナダで運航再開相次ぐ
北・南米では、ハワイやカナダで運航の再開が相次いでいます。
アメリカ
アラスカ航空は冬スケジュール期間中、フロリダやメキシコなどへの季節運航を行います。
また同社は2022年春までに、シアトル・ペインフィールドのエバレット発着全便の運航を再開する予定です。
ハワイ
ハワイアン航空は8月7日から、ホノルル~タヒチ線の運航を再開します。
また成田~ホノルル線は、週3往復に加えて夏休み期間は8月上旬に1往復を追加します。
関西~ホノルル線は週1往復が継続されますが、その他の日本路線は9月末または10月初旬まで運休の予定です。
カナダ
エア・カナダは、成田~トロント線の運航を7月7日から再開するほか、成田~モントリオール線も8月に1往復運航します。
またウエストジェット航空では、ハワイへのフライトを大幅に拡大し、ボーイング787-9型機を投入します。
【オセアニア】カンタス航空、国際線運航再開を12月下旬に先送り
オセアニアでは、オーストラリアのカンタス航空が、国際線の運航再開を12月下旬に先送りしました。
オーストラリア
カンタス航空は、10月末に予定していた国際線の運航再開を、12月下旬に先送りしました。
オーストラリア政府が、ワクチンの接種完了の予想時期を年末に、国境の大幅な開放時期を2022年中旬に修正したことによるものです。
ニュージーランド間のトラベル・バブルによるフライトについては、運航が継続されます。
【ヨーロッパ】英、米との渡航解禁へ、各国で運航再開や路線開設も
ヨーロッパでは、イギリスがアメリカとの渡航解禁に向けて動きを進めているほか、フランスやイタリアなど各国でも運航再開や路線開設が相次いでいます。
イギリス
イギリス政府は6月9日、ジョンソン首相と、アメリカのバイデン大統領が、可能な限り早期に両国間の渡航を解禁するために取り組むことを合意する見通しであると明らかにしました。
両国間で旅客便を運航している、英ブリディッシュ・エアウェイズや、米アメリカン航空などの航空会社のCEOは、両国間の規制解除を要請しています。
フランス
エールフランス航空は6月20日、羽田~パリ線の運航を再開し、7月6日にはパリ~ヘルシンキ線も開設します。
フランスなどでの移動制限の緩和にともない、同社は夏スケジュールには約200都市へ運航する予定で、2019年夏に比べ、全体で65%程度まで運航規模を回復します。
ドイツ
ルフトハンザ・ドイツ航空は、関西~ミュンヘン線の運航再開を8月2日に延期します。
7月4日から運航再開を予定していた中部~フランクフルト線についても、夏スケジュール中の運休を決定し、10月31日から週5便での運航を予定しています。
イタリア
アリタリア-イタリア航空は、羽田〜ローマ線を7月9日に開設すると発表しました。
当初は2020年3月から1日1便運航予定でしたが、複数回の延期を経て、夏スケジュール期間中は最大週5便を運航する予定です。
オランダ
KLMオランダ航空は、夏スケジュールの運航規模を、2019年とほぼ同レベルまで回復させると発表しました。
渡航需要のゆるやかな回復を背景に、アジア17都市への就航を予定しており、冬スケジュールにはプーケットへ週4便で乗り入れます。
ロシア
アエロフロート・ロシア航空は6月1日、シベリア中部のクラスノヤルスクを拠点空港として、ロシア国内線の直行便を拡充しました。
またヤクーツク航空は、成田~ハバロフスク線で臨時チャーター便を7月14日から9月28日まで6往復運航する予定です。
フィンランド
フィンエアーは夏スケジュール期間、成田~ヘルシンキ線を週3便で継続しますが、羽田~ヘルシンキ線の新規開設と、中部・関西~ヘルシンキ線の運航再開は9月に再延期します。
また冬スケジュール期間中には観光需要の回復を見据え、ニューヨークやプーケットなど約70都市に乗り入れる予定です。
スウェーデン・デンマーク・ノルウェー
スカンジナビア航空は7月、羽田~コペンハーゲン線を開設します。
従来成田発着で運航されており、2020年夏スケジュールに発着空港を羽田に切り替えての開設が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されていたものです。
【中東】カタール航空とオマーン航空がコードシェア提携、エミレーツ運航拡大
中東では、カタール航空とオマーン航空がコードシェア提携を拡大するほか、エミレーツ航空は新型コロナウイルス感染拡大前の約90%までネットワークを回復します。
カタール
カタール航空は、7月1日からドーハ~プーケット線の運航を週4便で再開するほか、7月2日からドーハ~マラガ線の運航を再開します。
オマーン
カタール航空とオマーン航空は5月31日、コードシェア提携の拡大について合意しました。
オマーン航空の旅客は、カタール航空が運航する16都市へ新たにアクセスできるようになります。
またカタール航空の運航便にオマーン航空がコードシェアを付与するのは、81都市に拡大します。
アラブ首長国連邦
エミレーツ航空は、7月末までに124都市への運航を再開する予定で、ネットワークは新型コロナウイルス感染拡大前の約90%まで回復します。
また同社は6月15日に発表した2021年3月期通期決算で、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、過去30年以上で初めての最終赤字となったことを明らかにしました。
トルコ
ターキッシュ・エアラインズは、2021年3月から週5便に増便して運航していた羽田〜イスタンブール線を、7月15日から9月8日まで1日1便に増便します。
東京オリンピック・パラリンピック期間に合わせた増便で、大会の開催状況に合わせて変更となる可能性もあります。
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