日本初の欧米型フリーウォーキングツアーを運営しております、Japan Localized インバウンドアナリストの宮本です。
日本国内での新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きはじめ、徐々に経済と日常が戻り始めました。そのような中、年内にはワクチン証明のデジタル化やGoToトラベル2.0などが開始される予定で、やっと国内観光の正常化が始まりました。
また、政府は入国制限の緩和を早急に検討しており、ワクチン接種証明とコロナ陰性証明で日本入国時の自主隔離期間が現在の10日間からさらに縮小される見通しです。そうなれば、アウトバウンドが復活し始めます。そして、最後にインバウンドの復活です。
では、インバウンドはいつ復活するのか?その時期を予測することに関しては様々な考え方、ご意見があるかと思いますが、今後、数回にわたってインバウンドの復活、そして訪日観光客数とインバウンド消費がいつ2019年の水準に戻るのかを株式市場から読み解いていきたいと考えております。
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株式相場は森羅万象を映し出す鏡
なぜ株式市場からインバウンド復活を読み解くのか?それは株式相場とは森羅万象を映し出す鏡であるからです。
そして、株価は将来の企業価値を映し出しています。つまり、株式相場や個別企業の株価から、未来をある程度予測することが出来ます。
また株価という水準があるので、思い付きの予測ではなく、ある程度論理立てて説明をすることが可能になります。
もちろん、完璧な理論や数理モデルがあるわけではなく、また正解などありません。それでも株式市場には未来を予測するための人類の英知と情報が集まっております。
インバウンド関連の企業業績と株価の動向を分析
では、どうやってインバウンドの復活を株式相場から読み解くのか?それはインバウンドに関する事業を行っている会社や売上の中にインバウンドの割合が比較的多い企業の株価をコロナ前の株価水準と比較し、その動向を分析することによって読み解いていきます。株価は未来の企業業績を織り込みに行きます。加えて期待先行や思惑などでも株価は大きく動きます。それが明日なのか、1年後なのか10年後の未来なのかはわかりません。
ただ、企業業績(四半期ごとの決算発表)や企業の成長期待感(PER:Price Earnings Ratio、1株当たりの当期純利益)は測定可能で、それらの情報を基に、株価の動向を予測していきます。
HISと近畿日本ツーリストクラブツーリズム(KNT-CT)の株価推移を比較
言葉で説明するより、図で見て頂く方が簡単だと思います。例えばインバウンド関連会社ではありませんが、皆様に馴染みがある、上場企業のエイチ・アイ・エス(銘柄コード:9603、HIS)とKNT-CT(銘柄コード:9726、近畿日本ツーリストクラブツーリズム)の株価推移を見てみましょう。
両社は日本の国内旅行とアウトバウンド市場の動向を分析するための代表的な銘柄です。 2019年12月30日の株価を100とした足元までのHISとKNT-CTの株価の推移です。KNT-CTの足元の株価は2019年末の株価より高く推移をしております。一方、HISの株価はまだ2019年末より2割程度安い水準で推移をしております。ではなぜHISとKNT-CTの株価水準に差があるのでしょうか?
HISとKNT-CTの業績を確認
まず、両社の直近の企業業績を簡単に見ていきたいと思います。HISの2021年10月期第3四半期の決算発表では、売上高907億円、営業利益▲467億円、純利益▲332億円と、大幅な赤字決算となりました。KNT-CTの2022年3月期第1四半期の決算発表では、売上高160億円、営業利益▲74億円、純利益▲64億円と、こちらも大幅な赤字決算となりました。
両社には決算期や売上高などの額の違いはありますが、売上高に対しての赤字額が同等程度なので、表面上は大きな違いが無いといえます。
海外旅行を多く取り扱うHISと、国内旅行の比率が高いKNT-CT
ただし、もう一歩踏み込んでみると、コロナ前のHISの2019年10月期の旅行事業の取扱高の内訳は、海外旅行4,521億円、国内旅行614億円と海外旅行取扱額が国内旅行の約7倍になっております。
一方、コロナ前のKNT-CTの2019年度(令和元年度4月-12月)の旅行取扱高の内訳は、海外旅行1,277億円、国内旅行2,287億円と国内旅行取扱高が海外旅行の約1.7倍となっております。
つまり、コロナ前のHISは海外旅行の売上比率が大きく、KNT-CTは国内旅行の売上比率の方が大きいといえます。
国内観光需要復活への期待感が影響か
上記の決算内容を見ても、HISもKNT-CTもコロナ渦で厳しい経営環境が続いているのは一目瞭然ですが、KNT-CTの方がHISより国内旅行取扱高比率が大きいので、緊急事態宣言発令が解除される前から国内旅行回復の期待感でKNT-CT株価は業績回復の先取りをし、上昇しはじめました。加えて、GoToトラベル2.0などの政策などで業績は大きく回復するという期待感から、2019年末の株価水準を大きく上回って推移をしております。
一方、日本政府の水際措置により、日本帰国時の待機期間が10日に維持されております。
なので、まだ本格的な海外旅行復活の見通しが立たないので、HISの株価はまだ2019年末の水準まで回復しておりません。しかし、今後の水際措置の動向により株価は年内にも2019年末の水準に迫る可能性があります。
株価は期待先行で動く
つまり、HISの株価が上昇し始めたら、アウトバウンド(入国制限の緩和等)の復活が近づいて来ていると考えられます。
業績面では両社とも黒字化、および2019年時の利益水準に戻るまではまだしばらく時間がかかる可能性はありますが、株価はそれを先取りし、織り込んでいく事がわかったかと思います。
もちろん、上記の理由以外にも様々な要因、思惑で株価は値動きしますが、経営環境、企業業績の内容を見ていくことで未来をある程度予測することが可能になります。
HISからはアウトバウンド、KNT-CTからは国内旅行の復活と展望を読み取ることが出来るかと思います。
インバウンド銘柄については次回さらに深彫りしていく
HISとKNT-CTは訪日旅行(インバウンド)を扱っておりますが、売上に対する割合が大きくありません。なので、両社の株価の推移からインバウンド復活の動向を読み取る事はとても難しいです。ではどの銘柄の株価推移を見ればインバウンドの動向がわかるのか?それは次回の記事で詳しく見ていきたいと思います。お楽しみに。
筆者紹介:Japan Localized代表 宮本 大
立命館大学卒。SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社。外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当。
米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)。
Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事。
Japan Localized 公式サイト
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