訪日客「年間2,000万人ペース」ってホント?データの深堀りで見えた2023年のインバウンド動向

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政府が水際対策の大幅緩和に踏み切ったのが昨年の10月。そこから半年が経過した今年4月の訪日外国人客数は約194万人を記録し、コロナ禍からの回復が明らかに進んでいます。

この数値を受け、共同通信は10日、今年の訪日客数は「年間2,000万人ペース」との記事を公開しました(共同通信:訪日客回復、2000万人ペース 観光受け入れ再開1年)。

そこで今回は、この「年間2,000万人ペース」というデータについてさらに深掘りします。

日本のインバウンドが再始動した2023年、果たして年間の訪日客数はどの程度まで回復するのでしょうか。訪日客の国籍別データ、さらには国際線就航状況のデータから概観していきます。

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政府目標「2025年めどに2019年並回復」

訪日外国人観光客数の年間値は、ピークであった2019年には3,188万人を記録しましたが、2020年から2022年にかけては、コロナによる世界的な渡航制限の影響を大きく受けたことで、訪日客数は激減しました。

この逆境からの回復を狙ううえで、観光庁は2022年末ごろ、「2025年の大阪・関西万博をめどに訪日客数を2019年並みに回復」という目標を掲げました。

しかし、2022年10月に政府が敢行した水際対策大幅緩和、いわゆる日本の再びの「開国」がインバウンドに与えた影響は、当初の想定を超える大きなものでした。

今日では、観光庁が掲げた前述の目標については「2025年を待たずに前倒しで達成できるのではないか」との見方も強まっています。

コロナ前の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
▲コロナ前の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
訪日外国人観光客数の回復:JNTO(日本政府観光局)デービッド・アトキンソン氏予測データより引用
▲訪日外国人観光客数の回復:JNTO(日本政府観光局)デービッド・アトキンソン氏予測データより引用、訪日ラボ加工


今年ここまでは「年間2,000万人」ペース

訪日外客数の月間値は、最新の2023年4月のデータでは約194万人となっています。

また訪日外客数を今年1月から4月の合計値でみると、約673万人になります。国・地域別で同期間の入国数をみると、韓国、台湾、香港といった東アジアの各国・地域が半数以上を占めていることがわかります。中国からの訪日客に関しても、今年ここまでは月を追うごとに大きな増加が見られています。

2023年4月の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
▲2023年4月の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
2023年1〜4月の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
▲2023年1〜4月の訪日外国人数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工

この1月から4月の合計の訪日外客数を、同期間の過去数年間分のデータと比較してみます。すると、今年の「673万人」という数字は2015年と2016年の間にあたる人数であることがわかります。

2015-2023年1-4月訪日外国人観光客数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
▲2015-2023年1-4月訪日外国人観光客数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工


そのため、今年の訪日外客数の年間値は、2015年の約1,974万人を少し上回る「2,000万人ペース」にあるとされています。共同通信社も、この「2,000万人ペース」という数字を基調とした報道をしています。

中国市場の動き次第ではそれ以上もありえるか

一方で、今後の市場の動きも踏まえると、今年の年間値が「2,000万人という数字を大きく上回る可能性」も見えてきました。

2015年と2023年の訪日外客数のデータを、さらに国・地域別に深掘りして比較してみましょう。今年の1月から4月の訪日外客数を国・地域別にみると、ほとんどの市場において、2015年を超える人数を記録していることがわかります。

そんな中、その傾向を大きく外れる国が一つだけあります。それが中国です。

2015-2023年1-4月訪日外国人観光客数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工
▲2015-2023年1-4月訪日外国人観光客数:JNTO(日本政府観光局)より訪日ラボ加工


確かに中国からの訪日外客数は、中国のいわゆる「ゼロコロナ政策」の影響が尾を引いて、今年ここまでは大きな回復はみられていません。1月から4月の合計値でみると、中国からの訪日外客数は、2015年比で今年は100万人以上少なくなっています。今年ここまでは、コロナ前に「インバウンドの最大顧客」であった中国市場を失っている状況です。

この大きなディスアドバンテージを背負った状況下でも、今年の年間の訪日外客数は「2,000万人ペース」にまで来ているわけです。

これを踏まえると、訪日中国人の回復により前述のディスアドバンテージが解消されたときには、訪日外客数全体の回復もこの「2,000万人」というペースを超えてくる可能性が出てきます。その場合、今年の訪日外客数の年間値は、2015年比で微増の2,000万人を大きく超え、2016年並みの2,500万人付近にまで達する可能性は十分にあるといえます。

そんな折、在中国日本国大使館は6月13日、中国人向けに観光目的の電子ビザを発給することを発表しました。手続きが電子化・簡素化されたことで、訪日中国人の回復をさらに促進することにも期待がかかります。今後も訪日中国人の回復状況を注視していく必要がありそうです。

関連記事:中国人向け 観光目的の電子ビザが発給開始 6/19から

訪日数を左右する、国際線就航状況

「訪日外客数の回復ペース」を占うもう一つの要素が、日本国内の各空港における、国際線の就航状況です。四方を海に囲まれている日本には、飛行機や船がなければそもそも入ってくることができませんので、航空便の回復・増便ペースが訪日客数を大きく左右します。

国際線の就航状況(2023年夏ダイヤ):国土交通省より訪日ラボ作成
▲国際線の就航状況(2023年夏ダイヤ):国土交通省より訪日ラボ作成

コロナ前の2019年の、主要3空港(羽田・成田・関西国際)における入国者数を国・地域別にみると、3空港全てで最多は中国人でした。特にアジア方面の路線が充実している関西国際空港では、2019年には空港別で国内最多となる約330万人の中国人が入国していました。

しかし今年ここまでは、中国路線の低調が続いています。

2023年の夏ダイヤの、主要3空港の週当たりの就航便数を国・地域別にみてみます。すると、各空港の全路線に占める中国路線の割合は、3空港の中で最大の関空においてもわずか6.1%にとどまるなど、中国路線の就航便数が非常に少ないことがわかります。

韓国、台湾、香港といった他の東アジア各地からの就航状況が活況なだけに、中国路線の落ち込みが目立っているのが現状です。

羽田空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成
▲羽田空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成
成田空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成
▲成田空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成
関西国際空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成
▲関西国際空港就航便数(週)/2023年夏ダイヤ:国土交通省より訪日ラボ作成

「訪日需要増→日本路線便増」の好循環に期待

今年後半にかけて、中国の「ゼロコロナ政策」の余波はさらに下火になっていき、中国人海外旅行者の動きは一層活発化していくと考えられます。そして前述の電子ビザ発給などが追い風となり、訪日需要の回復が促進されることが期待されます。

その流れに乗って、中国と日本を結ぶ航空路線の需要も高まっていけば、「訪日需要が回復したことにより、当該路線の便数回復が進み、さらに訪日客が増える」好循環を生み出すことも可能になります。2023年の年間訪日客数がどこまでコロナ前に近づけるのか、そのカギを握る中国市場の動向を、今後も注視していく必要がありそうです。

一方、コロナ前には観光客が地域に殺到したことによる「オーバーツーリズム」も問題視されており、観光の回復に合わせてそうした問題もまた復活してきてしまう可能性があります。観光客受入の環境をどのように整えていくかも、官民一体となって取り組まなければならない問題となるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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