「稼げるまちづくり」に向けた事例を紹介!宿泊事業者を中核とした地域づくり3事例

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本記事では、観光庁が公開した「宿泊事業者が中核を担い、稼げる地域づくり」を目指す実証実験の取り組み事例集をもとに、3団体の取り組みと結果を解説します。

水際対策が終了して旅行需要が回復しつつあるいま、大いに参考になる情報が盛り込まれています。少しでも稼げる地域づくりに興味のある方は参考にしてください。

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宿泊事業者の価値を向上して「稼げる地域づくり」へ

宿泊事業者は来訪者・地元事業者のどちらにとっても重要な存在です。来訪者にとっては観光の拠点であり、施設によっては地域の歴史や文化に触れる機会になることも。また地元の事業者にとっては、食材や資材の納入を通じて深い経済的結びつきがあります。

そこで観光庁は、宿泊事業者の価値を向上することで「稼げる地域づくり」を行うプロジェクトを立ち上げ、8団体で実証実験を行いました。

その結果を「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービスの提供促進に向けた実証調査」として公開しています。今回はこの資料で公開された3団体の事例をまとめました。

事例1.  連泊商品の開発で富裕層を呼び込め「旅館くらしき」

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の4頁を抜粋
▲出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の4頁を抜粋

岡山県倉敷市にある「旅館くらしき」では、以下の課題を抱えていました。

  • 連泊を希望する宿泊者がいるにもかかわらず、旅館の提供する食事のオプションに限りがあって1泊にとどまっていた
  • 地域のレストランとの連携が不十分なことから、連泊希望の宿泊者のニーズに応えることができていなかった

旅館を訪れる宿泊者にとって、食事は重要な要素のひとつ。連泊したくても毎日同じメニューだったり、近隣にレストランがなかったりしたら、連泊を諦めてしまうのも無理はありません。

課題と戦略 連泊へ、夕食の選択肢を増やす

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の6頁を抜粋
▲出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の6頁を抜粋

そこで近隣レストランと連携し、宿泊2日目以降の夕食は近隣レストランで食事をしてもらうようプランニングしました。

外国人対応に不安があるレストランが多かったため、レストランの予約やオーダー、支払いなどは旅館が一括して行うシステムを構築。長期の滞在を促すとともに、地域全体への経済普及効果を高める土台づくりができたということです。

今後は「レストランの負担軽減」と「旅行者の要望」の両立が課題に

近隣レストランからは、「海外富裕層という新たな顧客層の獲得につながった」との声も。旅館のスタッフからは、「夕食提供の労力を削減できてワークライフバランスが向上した」といった声があったそうです。

一方でレストランでは提供時間が限定的になるだけでなく、来訪者の時間がルーズな点などといった課題も見つかりました。

今後はレストラン側の負担を軽減しつつ、コース料理以外を提供するなど、旅行者の要望にフレキシブルに対応できるかがカギとなりそうです。

事例2. 地域の特色を活かしたウェルネスツーリズムを実現「扉ホールディングス」

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の9頁を抜粋
▲出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の9頁を抜粋

長野県松本市里山は老朽した古民家が多く、高齢化によって農業の担い手が減り、里山が持つ価値を失う危機にあります。

そこで、世界的に注目されているウェルネスツーリズム市場をターゲットに、長野県の特徴を活かしたプログラムを立ち上げ、本格的なウェルネスリゾートづくりを目指しました。

また地域資源を活用することで、里山の生活文化を守りつなぐことも目的です。

ウェルネスツーリズムとは心身のリフレッシュや健康の増幅を図ることを目的としている旅行形態のことをいいます。

関連記事:ウェルネスツーリズムとは?健康を目的とした新しい旅、日本の取り組み

実施した施策:ウェルネスリゾート構築で里山を守る

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の11頁を抜粋
▲出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の11頁を抜粋

ただのウェルネスツーリズムではなく、地域にある資源を活用することで“ここでしか体験できない”ウェルネスプログラムを提供しました。

具体的には以下を提供したとのこと。

  • 古民家を改造した「Satoyama villa 本陣」への宿泊
  • 昔ながらの料理を楽しめる「ウェルネス・キュイジーヌ」での美食
  • 瞑想や護摩炊きなどのウェルネス・アクティビティ
  • 信州産の軽食や健康関連商品

地元の食材やサービスを活用することで地域全体で収益を得ることにも成功。健康関連商品を開発するなど、旅アトも利用できる商品によって継続的な収益の獲得を目指します。

今後は 「オンリーワン」の体験提供を

旅行者からは、築100年を超える施設への宿泊など、「ここでしかできないプログラムを体験できた」といった声があったほか、地域の事業者からは「宿泊施設との深い関わりにメリットを感じた」という声が聞かれました。

今後は旅アトも継続して体感できるウェルネス食品の開発や販路拡大に取り組んでいくそうです。

事例3. サステナビリティを観光フックに「小渕沢アートアンドウェルネス」

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の13頁を抜粋
▲出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の13頁を抜粋

八ヶ岳は「持続可能な地域」として注目されている一方、「持続可能な宿泊施設」としてアピールできる施設がないことに課題を感じていました。

またサスティナブルな観光コンテンツ自体は存在するものの、旅全体を通してサステナブルな旅行体験を提供できていない点も課題でした。

そこで宿泊だけではなく旅全体で八ヶ岳の暮らしを体験できる機会を設け、持続可能な一連の旅行体験を組み立てて提供しました。

今後は認知度向上と意識醸成がカギ

出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の17頁を抜粋
出典:『新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービス実証調査等の実証事業取り組み事例集』報道発表資料(観光庁)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001600552.pdf)の17頁を抜粋

たとえば環境に優しいアメニティを提供するだけでなく、地域の観光施設の土産品であるマイボトルをプレゼントしたとのこと。

また、サステナブルな旅の始まりを意識づけることを目的に、チェックイン時に「サステナブルトラベル誓約書」にサインしてもらうことで、みずからサステナブルな行動をしたくなるような仕掛けを盛り込んだのもポイントのひとつ。

サステナブル意識は世界的なトレンドになりつつあり、サステナブルツアーを構築できれば、土地の魅力を伝えられるだけでなく地域の売りにもなります。冬季の集客が課題の八ヶ岳地域にとって、「サステナブルツアー」は新たな集客フックにもなり得ます。

宿泊客からは「サービスに地域性を感じられ本物であった」「地域や歴史について学べた」という声も寄せられたそうです。

一方で国内では「サステナブルツーリズム」の認知度は低く、伸びしろはあるものの即効性がないことが課題として挙がりました。

また「サステナブルツアー」の成功は旅行客に接するスタッフの温度感にかかっており、スタッフや会社内の意識醸成が重要なこともわかったということです。

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<参照>
観光庁:新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービスの提供促進に向けた実証調査

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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