京都市観光協会は8月10日、観光関連事業者を対象とした人手不足についての臨時調査の結果を公表しました。
調査結果から、京都市の観光事業者のうち約7割が人手不足を実感していることが明らかになりました。
ここ数年で多くの人材が離職したことや少子高齢化の影響もあいまって、今後観光客へのサービス水準や労働環境の維持が難しくなるおそれがあるとしています。
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京都市の観光事業者7割が人手不足を実感、接客業が特に不足
京都市観光協会が8月10日に発表した「観光業界における人手不足についての臨時調査」から、訪日外国人観光客が戻ってきた京都市の人材不足問題が浮き彫りになりました。
人手不足を感じているかという質問に対しては、「とても感じる」または「感じる」と回答した事業者が71.3%でした。

人手が不足している職種や技能については、「接客」が46.0%で最も高く、次いで「営業・渉外」(34.0%)、「調理」(22.7%)という結果になりました。

コロナ前(2019年)からの従業員数の変動については、従業員数がコロナ前(2019年比)を下回ったと回答した事業者が65.1%と、半数を超えています。
特に宿泊業界や飲食業界においては、コロナ前よりも従業員が2割以上減ったと回答した事業者が約4割で、他業種よりも高い割合となりました。
長時間労働や賃金の低さが課題
離職者が多い理由としては、「長時間労働や休日出勤、夜勤等」が30.7%でトップとなり、「賃金を上げる経済的な余裕がないから」が26.7%で続きました。

一方で、賃金水準の向上に取り組んでいるにも関わらず、就職希望者が集まらず苦労しているという声も多く聞かれたということです。
京都市観光協会はこれについて、他業界でも賃上げが相次いでおり、業界間での競争が激しくなっていると考えられるとしています。
宿泊・飲食業からの離職者は同じ職種に戻らないことが多い
京都市観光協会の調査では特に宿泊業界や飲食業界において離職状況が深刻であることが明らかになりましたが、日本総研によると、宿泊・飲食業では「いったん離れてしまった労働者が、再び労働需要が高まるなかでも業界に戻ってきていない」ことから人材不足感がより強まっていると言います。
日本総研のデータでは、2020〜2022年頃に宿泊・飲食業から離職し、再就職していない人の割合は2022年末時点でおよそ35%に上っています。
離職後再び職を得た人も、2022年末時点の現職が宿泊・飲食業である人の割合は30%台前半にとどまっています。
宿泊・飲食業界はコロナ前から離職率が高い現状がありましたが、離職後に人材がそのまま業界を離れてしまうことも人材不足を加速させていると言えます。
インバウンド本格回復で人手不足がさらに深刻化する懸念
日本政府観光局(JNTO)によると2023年7月の訪日外客数は232万人で、中国を除く総数ではコロナ前の実績を上回りました。
コロナ前に訪日客数トップだった中国は31万人と2019年比30%ほどにとどまっており、まだ回復の余地があります。
8月10日には中国政府により訪日団体旅行が解禁され、中国インバウンドの本格回復も視野に入ってきました。
京都は訪日中国人観光客にも人気の観光地であるため、今後中国からの訪日客が増えてくれば、京都市にはさらに多くの観光客が押し寄せると見られます。
コロナ禍で人材不足の問題が深刻化している現状では、需要がキャパシティーを大きく上回ってしまうことも考えられます。
京都市の観光業界では人手不足の解消に向けた努力が続けられていますが、インバウンドの本格回復が間近に迫り、いよいよ喫緊の課題となっています。
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<参照>
京都市観光協会:観光業界における人手不足についての臨時調査の結果について
日本総研:コロナ禍後を見据えた観光業の雇用改革に向けた課題 -労働生産性の向上と雇用の安定による人手不足克服が急務-
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