京都市は11月、サステナブルな観光都市を表彰する国際的なアワード「スイス観光賞」を受賞しました。
多くの文化観光資源を有しながらも、それに甘んじることなく常に新たな取り組みを進める京都市は、先進的な観光都市として世界から注目されているようです。
そこで今回は、
- 京都市産業観光局 観光MICE推進室 観光戦略課長 吉岡 久美子さん
- 公益社団法人京都市観光協会 企画推進課 企画推進課長 板東 潤さん
- 同じく企画推進課 担当係長 櫻井 麻衣子さん
の3名にインタビュー。
観光賞受賞の背景に加え、海外メディアから問い合わせが殺到するPRの秘訣など、他地域の自治体・観光協会の方々が気になるであろう施策内容についても伺いました。

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アジア初!京都市がスイスの観光賞「ベストトラベルデスティネーション」受賞
ーーこの度の受賞、誠におめでとうございます。改めて、受賞した経緯について伺えますでしょうか。
スイスから直接、「この賞を受け取っていただけませんか」とオファーレターが届きました。「ベストトラベルデスティネーション」という、サステナブルな観光都市を表彰するもので、日本初かつアジアでも初めてとなる受賞です。
ーーどういった部分が評価されたのでしょうか。
自然の景観、神社仏閣、街並み、そして家々が「並外れた美しさ」の中に溶け込んでいて、「日本文化の象徴」となる街であるとの評価をいただきました。
ウェブサイトなど様々な情報ツールを分析した中で、多くの方々に選ばれているかどうかが評価基準となっています。スイスのルガーノ大学が研究の一環として、ウェブ上の情報分析ツールの開発と、それを用いたデータ分析を行っていると聞きました。国の協力も受け、スイス国内外の旅行観光業を発展させていく目的で実施しているのだそうです。
自治体PRは「プル型」で
ーーウェブ上の情報をもとに評価されたということですが、どのような情報発信が影響したと思われますか?
もちろん我々が主体で発信しているプラットフォームにもアクセスはありますが、主に海外メディアに掲載されたことが大きな要因かもしれません。ハイエンドな方々にリーチできるメディアに「彼らの目線で」書いていただくことが重要だと考えており、情報を提供するなどして記事作成の支援を行っています。
また、一つの有力メディアに発信されることによって、派生して複数のメディアに取り上げられ、さらに派生して一般の旅行者にも知ってもらえるようになりました。いわゆる「プル型」で、こちらからプッシュするような営業はあまり行っておらず、向こうから問い合わせが来る形です。
ーー「プル型」でメディアに取り上げられるとは、まさに理想的な状態ですね。世界で評価されるようになったきっかけは、どこにあるのでしょうか。
実は、過去にもいくつかのアワードを受賞する機会がありました。例えば「トラベルアンドレジャー(Travel + Leisure)」のアワード、イギリスの「ワンダーラスト(Wanderlust)」のアワードなどですね。こうした有名旅行誌を読んでいる方々に京都の魅力を知っていただいて、階段を上るように少しずつ広まっていった形です。
今回受賞して、改めてメディアに情報を出し続ける努力を惜しんではいけないと感じました。京都市以外の地域の方々にとっても、世界規模のアワードはもちろん、こういった雑誌への掲載や、今回受賞したような地域のアワードに挑戦するというのも、一つの選択肢なのかなと思います。
海外から見た「京都の魅力」は、思っていたのと全然違っていた
ーー表彰式の様子はいかがでしたでしょうか。
日本だと冒頭にきちんとした挨拶があるものですが、そういったものがなかったのが新鮮でした(笑)でも、雰囲気は「満点」。自然体で、お祝いムードを出席したみなさんでつくりあげようという気持ちが感じられて、これがハイエンドのヨーロッパの雰囲気なんだと実感しました。
京都市はメインの観光賞を受賞し、植垣浩太朗・観光MICE推進室観光戦略担当部長が表彰状を受け取りました。終始出席者の皆さんから「おめでとう」と褒めていただきました!京都市で観光客をお迎えしている方々や、今まで京都に訪れ楽しんでくださった皆様のおかげで、このような賞をいただけたと思います。世界からこうして評価いただけていることを、ぜひ皆様にも知っていただきたいです。

ーー「スイス国際ホリデー展示会 ※」の様子はいかがだったでしょうか。
※観光賞の授賞式と併せて開催された。ラグジュアリー層を顧客とする旅行会社(バイヤー)と高級ホテルや観光施設等(出展者)が多数集まる。
我々は観光賞をいただいたので、場所も一等地に出展させていただきました。ブースの装飾も、本来はこちらがデザインして提案していくものだと思うんですが、今回はなんと向こうが用意してくださる形でした。
掲示する写真を選ぶとき、いつもはどれを載せるか、どの角度でどう切り取るかといったことで毎回悩むんです。今回は、能面の写真や、武道の写真を選んでいただいたんですが、正直、我々が設営してたら選ばなかった画像だったんです。

外国人の方が思う「京都の魅力」は、我々が想像していたものとは全く異なっていると知りました。これがスイスの方々が思う「京都」の答えなんだと。もちろん同じように魅力に思っているものもあると思うんですが、現地の方に選んでもらい、その感覚を知ることが大事なんだと思いました。
市民・旅行者・働く人の3者が共存できる観光へ
ーー「持続可能な観光」「ラグジュアリー層」がキーワードとなった賞・展示会でしたが、これらに関連するような取り組みや、今後の方針について教えてください。
今後の重要な課題は、観光課題対策です。これから京都観光が回復するにあたり、コロナ禍前に生じていた問題が再燃しないよう、持続可能な観光を目指しています。市民の方の中には、観光客がたくさん来られることはありがたいけれど、市バスが混雑したり、ゴミのポイ捨てで困っておられる地域もあったりと、市民生活へのネガティブな影響を感じている方もいらっしゃる。市民生活と調和できる観光をめざしたいと考えています。
京都市と京都市観光協会では、2020年11月に「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を策定しました。観光客だけではなく市民、観光業で働く方々も含め3者の皆様に呼びかける行動基準で、「京都が京都であり続けるために、こういうことを大切にしていきたい」ということをお示しするものです。例えば、観光客に向けては地域のルールやマナーの尊重など、観光事業者様に向けては地域に貢献いただけるような事業活動(地産地消など)を行っていただくなど、市民の皆様にはおもてなしの心をもって旅行者をお迎えし、交流を深めていただく、といった内容を呼びかけています。
今はまさに啓発、実践の段階。成果がじわじわと見えてきています。事業者みずから守る事業を始めてくださったり、サステナブルな意識の高い観光客も増えてきたりしています。普及啓発を進め、市民も観光客もみなさんが満足できる観光をつくっていけたらと思います。
▲Facebookでシェアしたモラル啓発ポスター。京都市が発信するモラル・マナーに対する良い反応が来たといいます。
観光課題に対処する際、「これはダメ・あれはダメ」といった禁止の連続に陥りがちですが、本来我々が目指すのは、市民の皆さんが大切にしている歴史・文化を守っていくことであって、観光を制限することではありません。これからも旅行者の方々に対し、京都の歴史と文化をともに守っていただけるよう、呼びかけていきたいと考えています。
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