2023年年間の訪日外客数で、韓国に続き2位となった台湾。日本との国交はないものの国家間の往来は自由で、2023年は約420万人もの台湾人が日本を訪れました。今月2月8日からは台湾における春節(旧正月)も始まることから、さらなるインバウンド市場の盛り上がりも期待されています。
そんな台湾は、歴史的には複雑な関係があるものの、おおむね親日的な国家だと言われています。最近では、能登半島地震への支援として台湾市民から25億円を超える義援金が集まったことが話題となりました。
また、1月13日には総統選挙の投開票が行われ、与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が550万票を超える票を獲得し当選しました。台湾の国家元首が交代するということで、今後日本、そして中国との関係にも大きな影響を及ぼすかもしれません。
本記事では、日本と台湾の関係について、最新情報も踏まえながらまとめていきます。
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日本と台湾の関係は?
以前から「親日国」の一つとして知られる台湾。日本台湾交流協会が2022年に行った「台湾における対日世論調査」では、「最も好きな国」として日本がトップになりました。
日本との国交はありませんが、民間の交流は非常に活発で、2023年の1年間では約420万人の台湾人が日本を訪れました。台湾の人口は約2,342万人(2023年末時点)であるため、台湾人の5〜6人に1人が日本を訪れた計算になります。なお、日本からはおよそ85万人が台湾を訪れました。
2023年の市場別の訪日外客数では韓国に続き2位となり、コロナ前の2019年と比較しても85.9%まで回復しています。
訪日外国人消費額では、中国を抜いて市場別でトップに。
2019年に1位だった中国がまだあまり回復していないということもあり、インバウンド市場における存在感を増しています。
さらに台湾は訪日リピーターが多いことでも知られており、2023年7-9月期の調査ではリピーターが全体の86.5%を占めました。このようなデータからも「台湾人の親日さ」がうかがえます。
台湾と日本は正式な国交がない
ただし、先程もお伝えした通り、台湾と日本との間には正式な国交が結ばれていません。両国関係を簡単に振り返ってみましょう。
1894年に勃発した日清戦争で日本が勝利すると、その講和条約として1895年に締結された下関条約によって台湾は日本へ割譲され、日本による統治が始まりました。日本の植民地支配は、第二次世界大戦終結後の1945年10月まで続きました。
その後1972年に「日中共同声明」が発出され、それまで国交のない状態であった中国(中華人民共和国)と日本は国交を正常化します。そこで日本は中華人民共和国政府を中国唯一の「合法政府」と認めたため、台湾(中華民国)とは断交となりました。
現在まで日本と台湾は国交を結んでいませんが、それぞれ相手国との間を自由に行き来してきました。先述した通り、多くの台湾人が日本を訪れているほか、日本人にとっても台湾は人気の海外旅行先として知られています。
また、こうした歴史的背景から、台湾では日本語を話せる人が比較的多いことも特徴です。日本統治時代の日本語教育の結果、台湾の年配の人は今でも日本語が話せると言われていますが、それより後の世代でも日本語を勉強している人や日本語を話せる人は比較的多いようです。
日台間関係に関わる直近のニュース
日台間関係に関連するニュースをまとめます。
能登半島地震への義援金:台湾市民からの寄付が25億円を超える
1月1日に発生した能登半島地震で、台湾政府が6,000万円の支援を発表したほか、市民から日本円で25億円を超える寄付が集まりました。
2週間という短い間にこれだけの額の義援金が集まったことについて、台湾外交部の呉釗部長(外相)は、「このお金は無数の台湾の人々の厚意の表れだ。台湾と日本がまるで家族のような感情を持つことを改めて感じることができた」とコメント。日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表(駐台日本大使に相当)は、「互いに支え合うという台湾と日本の得難い友好関係を証明するものだ」と述べ、台湾の各方面に感謝の意を示しました。
台湾観光署が日本人のパスポート取得費用の補助を検討
台湾の観光庁にあたる交通部観光署は1月16日、日本人の訪台を促進する措置として、日本人のパスポート取得費用の補助を検討していると明らかにしました。新たにパスポートを取得し、かつ台湾系の航空会社を利用して訪台する日本人に対し、航空券代を値引きする形で最大1万円を補助するというものです。
コロナ後の訪台日本人旅行者数の回復が遅れていることや、日本人のパスポート取得率が世界的に見ても低いことから、この措置は日本市場のみを対象に行うとしています。早ければ2024年4~6月にも実施する予定だということです。
今後の日台間関係の見通しは?台湾総統選で与党民進党の頼清徳氏が勝利
1月13日には、総統選挙の投開票が行われました。今回の台湾総統選は、2期8年務めた蔡英文前総統(民進党)の任期満了に伴う後継者争いでした。候補は、与党・民進党の 頼清徳氏のほか、野党・国民党の侯友宜氏と台湾民衆党の柯文哲氏の計3名。投票の結果、頼清徳氏が558万6019票を獲得し勝利しました。得票率は71.86%で、副総統には、台湾の中米代表を務めた蕭美琴氏が就任予定とのことです。
一方で、総統選と同時に行われた立法院(議会)の立法委員(議員)選挙においては、民進党は過半数の議席を取れず、頼氏は「努力が足りない」と発言。政党を超えたコミュニケーションが必要だとし、台湾の団結を目指していく考えを示していました。
とはいえ1996年に台湾で直接選挙が始まってから、同じ政党が3期連続で政権を握るのは初めてのことで、国民の期待は高いと言えそうです。頼清徳氏は、中国からの圧力に断固として反対してきた蔡英文前総統の姿勢を引き継ぐことを明言しているため、中国とどのような関係性を構築していくかに注目が集まっています。
中国との関係
台湾総統選の結果を受け、中国ではさまざまな反応が見られました。
中国国務院台湾事務弁公室の陳賓華報道官は、台湾総統選で民進党の頼清徳氏が勝利したことを受け、1月13日に「民進党が台湾の主流世論を代表していないことを示している」と発言。さらに1月17日には「台湾の選挙は中国の地方問題であり、選挙結果は台湾が中国の一部である事実を揺るがすことはできない」と述べています。「祖国を統一する」という立場を一貫して表明し、中国の立場に変更がない点を強調しました。
米CNNは、1,400万人以上が参加し、投票率が71%強となった選挙の様子を詳細に伝えた上で、頼氏の勝利が「中国と台北の関係改善につながる可能性は低い」と指摘。中国が今後数日から数週間のうちに台湾への経済的・軍事的圧力を強める可能性があることを指摘するアナリストのコメントと合わせて、中国との関係が悪化するとの予想を伝えています。
CNN以外にも、台湾との関係強化を進めてきたアメリカのメディアは、総統選を続々と報道。民主主義を貫く姿勢の民進党の勝利により、中国からの圧力や両国間の緊張が一層高まると予想しています。
日本との関係
頼清徳氏は、2022年の安倍晋三元首相の葬儀には副総統として参列するなど、親日家としても知られています。1月15日には、古屋圭司元国家公安委員長と会談し、日本訪問への意欲を示しました。
また、頼清徳氏は1月14日に日本台湾交流協会の大橋光夫会長が台湾を訪問した際に自身のX(旧Twitter)を更新。「台湾と日本は強い絆で結ばれており、常に『まさかの時の友こそ真の友』これからも私たち日本との関係を深化させ、さらに交流を増やしていきたいと願っています。」と投稿しています。
頼清徳氏の当選を受け、日本の外務省も1月13日に、上川陽子外相が祝意を示す談話を発表しましたが、中国政府はこれに反発。「内政干渉だ」と抗議しました。林芳正官房長官は、1月15日の記者会見で、台湾について「極めて重要なパートナーであり、大切な友人だ」と述べ、中国の抗議に反論する姿勢を示しました。
日本のインバウンドにおいて最も需要な市場の一つである台湾。日台関係には中国との関係も大きく影響するため、インバウンドに関わる事業者は引き続きこの3か国間の関係を慎重に注視していく必要がありそうです。
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<参照>
中国共産党中央委員会台湾事務弁公室:国务院台办发言人评论台湾地区选举结果
中国共産党中央委員会台湾事務弁公室:国台办:台湾地区两项选举结果改变不了两岸关系基本格局和发展方向
時事通信:時事通信「頼清徳氏、訪日に意欲 台湾」
政府広報オンライン:内閣官房長官記者会見
中華民国内政部:民國112年12月戶口統計資料分析
公益財団法人日本台湾交流協会:台湾における対日世論調査 第7回調査結果(2022年1月5日~1月20日)
中華民国(台湾)外交部:今年の訪台外国人旅客数、予定より早く延べ600万人達成
台北駐日経済文化代表処:外交部、市民から寄せられた約25億円で能登地震の被災地復興を支援へ
フォーカス台湾 中央通訊社:観光署、日本人のパスポート取得費用補助検討 台湾系航空会社利用で最大1万円
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