一般財団法人 アジア太平洋研究所(APIR)は、万博関連事業費などの最新データを踏まえた「大阪・関西万博」の経済波及効果について試算を発表しました。
最終需要は「万博関連事業費」が7,275億円(前回比+1,381億円 / +23.4%)、「消費支出」が8,913億円(前回比+1,047億円 / +13.3%)の増加となりました。
本記事では今回発表された大阪万博の経済効果について、わかりやすく解説していきます。
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大阪万博の経済効果は?「3兆円超」の試算も
今回の試算の基盤となった、最終需要*1 は次の2つに大別されます。
- 主催者および出展者等による万博関連事業費(会場建設費、運営費、関連基盤整備等)
- 来場者による消費支出
この最終需要の想定と、「APIR 関西地域間産業連関表*2 」という分析ツールを用い、大阪万博の経済波及効果を計算しているとのことです。
*1 最終需要…生産過程に再投入されない支出
*2 APIR 関西地域間産業連関表…関西の産業間の取引を示したAPIR独自の統計表。ある事象が経済社会活動に対しどのような影響を及ぼすかを推計できる。
このうち消費支出の想定は、前回より13.3%増加した8,913億円と試算されました。今回の試算にあたり、消費単価(1人1泊ベース)は国内日帰り客が2万4,256円、国内宿泊客が3万4,538円、海外客が1万8,911円と想定。さらに来場者数の想定は約2,820万人と推計し、1日あたり来場者は15.4万人としています。
上記の想定をもとに、APIRは大阪万博の経済波及効果について計算し、基準ケースを含めた以下の3パターンを試算結果として公表しました。
万博会場のみの試算で2兆7,457億円を想定
万博の開催場所である夢洲会場でのみの発生を予想する「基準ケース」では、2兆7,457億円(前回比+3,698億円)の経済波及効果を見込んでいます。
その中で、基準ケースの消費支出である8,913億円の内訳は、次の通りです。
- 交通費:2,240億円
- 宿泊費:1,735億円
- 飲食費:1,619億円
- 買物代:1,867億円
- 娯楽サービス:1,450億円
総支出のうち、国内日帰り客は3,784億円、国内宿泊客は3,143億円、海外客は1,986億円だと推計されています。また国内宿泊客は1泊、海外客は3泊4日の想定で試算されています。
宿泊数増加の場合は3兆2,384億円
基準ケースに加えて、宿泊数の増加を想定した「拡張万博ケース1」では、3兆2,384億円(前回比+4,509億円)の経済波及効果を見込んでいます。「拡張万博ケース」では、万博へのリピート参加や会場以外でのイベントへの追加的な参加が想定されています。
拡張万博ケース1では、国内宿泊客は1泊から2泊に、海外客は3泊から5泊への増加で試算されています。
また総支出は1兆1,654億円と推計されており、その内訳は以下の通りです。
- 交通費:2,754億円
- 宿泊費:3,243億円
- 飲食費:2,096億円
- 買物代:1,867億円
- 娯楽サービス:1,693億円
拡張万博ケース1の総支出のうち、国内日帰り客は3,784億円、国内宿泊客は5,031億円、海外客は2,839億円だと推計されています。
宿泊数増加+日帰り客増加の場合は3兆3,667億円
宿泊数の増加を見込んだ拡張万博ケース1に加えて、さらに日帰り客の増加を想定した「拡張万博ケース2」では3兆3,667億円(前回比+4,849億円)の経済波及効果が見込まれています。
総支出は1兆2,411億円と推計され、内訳は以下の通りです。
- 交通費:2,997億円
- 宿泊費:3,243億円
- 飲食費:2,229億円
- 買物代:2,056億円
- 娯楽サービス:1,886億円
拡張万博ケース2は、ケース1と比べて日帰り客の交通費・飲食費・娯楽サービス費が20%増加すると想定されています。
また総支出のうち国内日帰り客は、拡張万博ケース1(3,784億円)からの増加想定を踏まえて、4,541億円となっています。
府県別の経済波及効果:大阪府は2兆621億円
府県別でみる大阪万博の基準ケースにおける経済波及効果は、大阪府が2兆621億円と圧倒的な想定を出しています。その他地域を除いた場合、大阪府の次に722億円の兵庫県が続きます。
万博会場外のイベントの参加を見込んだ「拡張万博ケース1・2」の経済波及効果をみると、兵庫県のほかに京都府が大きく数字を伸ばしています。京都府においては、拡張万博ケース1で1,963億円、拡張万博ケース2で2,124億円を見込んでいます。
経済効果が増加する一方で、コストの増加も
大阪万博の経済効果の想定が増加する一方で、コストも増加しています。万博関連事業費は、前回の試算より23.4%増加した7,275億円が計上されています。
会場建設費は503億円増加された2,350億円に
特に注目が集まる「会場建設費」は前回の試算から503億円増加した2,350億円が計上されました。会場建設費については、物価上昇による資材費の上昇や人件費の高騰が関係しているといわれています。
- 会場建設費(主催者):2,350億円
- 会場建設費(出展者):1,024億円
- 運営費(主催者):1,359億円
- 運営費(出展者):2,080億円
- 関連基盤設備:306億円
- 万博開催に向けた自治体費用:156億円
今回の試算には、前回には含まれなかった項目が計上されました。主催者側の運営費に含まれる「会場内の安全確保に万全を期するための費用」は、安倍元総理大臣の銃撃事件などを受けて、経済産業省負担のもと199億円が計上されています。また「万博開催に向けた自治体費用」は主に大阪府・市の事業費として、万博への参加促進や機運醸成などのために156億円が計上されています。
一方で、今回の試算で減少した項目もあります。「関連基盤設備」は前回の試算より822億円減少した306億円と試算されました。理由として、インフラ整備に関わる全ての費用が計上された前回と比べて、今回は万博開催に発生する事業費のみを計上したためと発表されています。
大阪万博費用の負担:国と大阪府・市の負担は2,964億円に
大阪万博の費用負担の内訳は、以下の通りです。
- 大阪府・市:1,344億円
- 国:1,620億円
- 経済界:1,348億円
- 博覧会協会:1,160億円
主催者側の会場建設費を大阪府・市、国、経済界の3団体で負担することになっています。
大阪府・市が「大阪ヘルスケアパビリオン」出展の費用として府と市で50億円ずつ負担する他に、国は日本館の出展費用として360億円を負担します。
大阪万博の先、IR(統合型リゾート)の経済効果は「毎年1兆円超」
大阪万博の開催後の経済効果については、特に「IR」が大きな存在感を放っています。
大阪IR構想は、2013年12月に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(通称IR推進法案)が上程されたことを受け、大阪府・大阪市が連携して立地準備に取り組むための「大阪府市IR立地準備会議」が設置されたことから始まっています。
大阪府は、IRの建設時において経済波及効果が約1兆9,100億円、開業後も毎年約1兆1,400億円の経済波及効果を見込んでいます。
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海外旅行者に大阪万博への興味を持ってもらうには
APIRによると、今回の想定は人手不足や物流の停滞による供給の滞りがないことを前提として試算されています。
発表された試算結果の実現にはDXの活用が鍵になると言われており、さらに海外の旅行者に万博に興味を持ってもらうためには、万博と旅行コンテンツの掛け合わせをいかに磨き上げられるかが重要視されています。
以上のように、大阪万博についてはパビリオンの建設遅れや度重なるコストの増額計上について不安の声が上がる一方、経済波及効果も大きなものになると想定され、様々な視点から注目が集まっています。
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