株式会社メルカリは2024年8月、越境取引事業に関するメディア向け説明会を実施。執行役員(General Manager Cross Border)の迫 俊亮氏が登壇し、事業が成長した理由と今後の取り組みを発表しました。
2019年に始まった同社の越境EC事業は、2024年8月現在で累計取引件数が1,700万件を突破。また、2024年6月時点のGMV(流通取引総額)は前年同月比3.5倍を記録するなど大きな成長を遂げています。
本記事では説明会の内容を踏まえ、メルカリの越境取引事業で人気の商品カテゴリや今後のグローバル展開に向けた取り組みをご紹介します。
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メルカリの越境事業、累計取引件数1,700万件突破
メルカリが越境取引事業を開始したのは2019年です。2023年にはメルカリ内にショップを開設できるサービス「メルカリShops」でも越境取引を開始。2024年にはWebページの多言語化にも対応しました。
2024年8月現在、世界74社のパートナーと連携し、約120の国と地域でサービスを展開しています。
その結果、メルカリの越境取引事業の累計取引件数は1,700万件を突破。2024年6月のGMV(流通取引総額)は前年同月比3.5倍を記録しました。
世界の越境EC市場規模は2030年には7兆9,380億ドルになるという予想があり、これは2021年の市場規模(7,850億ドル)の約10倍に相当します。メルカリは市場の需要拡大に伴い、グローバルなサービス展開を強化していく予定だということです。
メルカリの越境取引事業で人気の商品カテゴリは?
メルカリの越境取引事業の成長の背景には、人気ジャンルの盛り上がりや、日本のリユース商品への期待値の高さがあるといいます。
ここでは、メルカリの越境取引事業で人気が集まっている商品カテゴリをご紹介します。
人気ジャンル1. エンタメ・ホビー
メルカリで取引件数が多い商品カテゴリートップ5は、以下の通りです。
- ゲーム・おもちゃ・グッズ:ピンズ・ピンバッジ・缶バッジ
- CD・DVD・ブルーレイCD:CD(K-POP / アジア)
- ゲーム・おもちゃ・グッズ:アイドルグッズ
- ゲーム・おもちゃ・グッズ:アクリルスタンド
- ゲーム・おもちゃ・グッズ:(コミック・アニメ関連の)フィギュア
動画配信サービスの普及により、特にアニメやマンガ関連商材の人気が高く、メルカリでも「エンタメ・ホビー」を中心とした推し活グッズが人気となっています。
「カプセルトイ」や「くじ」でしか手に入らないアニメ・キャラクターグッズやアイドルの日本限定グッズなども好調で、CtoCマーケットプレイスだからこそ手に入るアイテムが活発に取引されています。
政府はこれまで、「クールジャパン戦略」としてアニメ・マンガなどのコンテンツやポップカルチャーを中心に展開してきました。2023年には日本のコンテンツの海外市場規模は約4.7兆円に達しており、市場の拡大がうかがえます。
またクールジャパン戦略については、6月に発表された新たな方針をもとに、取り組みが進められていきます。
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人気ジャンル2. 高級ブランド・カメラなどの中古品
迫氏によると、日本の二次流通(リユース)市場で流通する商品は状態が非常に良好であるため、日本の中古品(USED IN JAPAN)の需要は拡大傾向にあるといいます。
特に高級ブランドやカメラが人気で、それぞれファッションブランド・家電取引件数のトップを占めています。
■ファッションブランド取引件数トップ5
- LOUIS VUITTON
- BURBERRY BLUE LABEL*
- COACH
- GUCCI
- BURBERRY
*2015年に終了
高級ブランドは二次流通市場だけでなく百貨店でも人気となっており、百貨店の免税品売り上げの好推移に貢献しています。
■家電取引件数トップ5
- デジタルカメラ(Canon)
- デジタルカメラ(OLYMPUS)
- インスタントカメラ(富士フイルム)
- デジタルカメラ(Panasonic)
- デジタルカメラ(富士フイルム)
メルカリの家電取引件数では、トップ5をカメラ関連の商品が独占する結果となりました。
日本の中古カメラは海外で「新品に近い品質の信頼できる商品」として高く評価されており、活発な取引が行われているといいます。
メルカリのグローバル展開に向けた今後の取り組みは
こうした海外需要の高まりを受けてメルカリは、アメリカ版において新機能「Mercari × Japan」を発表。日本のユーザーが出品した日本版メルカリの商品を、アメリカ版のメルカリから購入可能になりました。
そして今後のグローバル展開に向けては、以下の「越境取引事業の戦略」に沿って取り組みを進めていく予定だといいます。
- 海外への越境取引のさらなる加速
- 海外の商品を日本の「メルカリ」から購入可能に
次に、それぞれの戦略ごとに具体的な取り組み内容をまとめていきます。
取り組み1. 台湾でのメルカリサービスの提供開始
越境取引事業戦略の1つ目である「海外への越境取引のさらなる加速」の具体的な取り組みとして、2024年8月29日より台湾でのサービス展開を開始。台湾在住のユーザーがWeb版メルカリを通じて日本のユーザーが出品した商品を購入できるようになりました。
台湾でのサービス展開にあたっては、越境ECパートナーと協力して配送を簡素化。商品の重さや大きさによって違いはあるものの、送料は500円〜1,500円程度で、1週間〜2週間程度で日本から台湾国内の住所に届く予定です。台湾ユーザーにとっては、現地のネットショッピングと同じ購入体験で日本商品を購入できます。
なぜ台湾なのか
日本政府観光局(JNTO)の調査では、台湾人の3人に1人は訪日経験があるといいます。日本への旅行者も多く、日本の製品が人気の市場です。
また、メルカリの代理購入サービス「Buyee」などを通じた越境取引で、金額・取引件数が多い国として台湾は2位にランクインしています。
■メルカリの越境取引で金額・取引件数が多い国・地域ランキング
- 1位 中国
- 2位 台湾
- 3位 アメリカ
日本商材に対する需要が大きいことや、台湾国内のマーケットプレイスに対するルールが日本と大きく変わらないなどの理由から、同社は台湾への進出を決定。また台湾では、若年層を中心に環境意識の高まりや経済的な理由からリユース品を選ぶ消費者が増加傾向にあり、ポテンシャルが非常に大きい市場といえます。
関連記事:訪日台湾人数は月間57.5万人、消費額も好調:台湾市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】台湾でのサービス展開イメージ
台湾版のメルカリは繁体字で「美露可利(読み:メルカリ)」と表記。商品説明は繁体字で表示され、商品価格も台湾ドルで表記されます。ユーザーは、商品の閲覧から購入までのすべてのプロセスを繁体字で実行できます。
8月29日からは、台湾でのサービス開始を記念したキャンペーンを実施。期間中に会員登録を行い、条件をクリアした1,000名を対象に、最大200台湾ドル相当のギフトカードをプレゼント予定です。
今後は、サービス拡充に向けた現地パートナーとの連携も強化。11月11日の「独身の日」に向けた大型キャンペーンなどのマーケティング施策も実施予定だといいます。
これまでの越境取引との違い
これまでメルカリの越境取引では、海外在住のユーザーは越境EC事業者のプラットフォームを通じて間接的にメルカリの商品を購入していました。今回、台湾で開始した取り組みではWeb版メルカリを通じて、台湾在住であっても他のサイトを経由せずにメルカリで商品を購入できるようになります。
海外への発送や購入者(海外ユーザー)とのやり取りは、越境事業者のパートナーが代行。日本で商品を出品するユーザーは、これまで通りの配送方法と配送料で取引できます。
海外ユーザーはメルカリならではの「宝探しのようなお買い物」を体験できるとしているほか、メルカリが実施する各種キャンペーンなどの特典も利用可能です。
日本のメルカリユーザーへのメリット
海外へのサービス展開によって、日本のメルカリユーザーにもさまざまなメリットが生まれます。
まず個人のユーザーは「買い手」が増えることで、メルカリへ出品した商品がより売れやすくなる可能性が高まるといいます。また、メルカリShopsの出店事業者も将来的に越境事業に対応予定で、実現すればメルカリを通して簡単に海外への販路を拡大できるとしています。
さらにメルカリとしても、海外の利用者にキャンペーンなどを含めた一貫性のある「メルカリ体験」を提供することによって、グローバルな顧客基盤を獲得。海外ユーザーに対して、メルカリから商品を購入するという選択肢を増やし、越境市場全体の成長にも寄与していきたい狙いです。
取り組み2. 日本のメルカリで海外の商品の購入が可能に
越境取引事業戦略の2つ目の具体的な取り組みとして、海外の商品を日本のメルカリから購入可能になります。
第1弾として、韓国の大手フリマ雷市場(ポンジャン)と連携を開始。雷市場からメルカリの商品が、メルカリから雷市場の商品が購入可能になりました。将来的にはさまざまな海外事業者に横展開していく予定だということです。
メルカリの越境取引事業の今後の展開
越境取引事業の今後の展開としては、まずは海外の商品を日本のメルカリで購入可能にしていくことで、日本のユーザーが気軽に海外の製品を楽しめる環境づくりを目指すとのこと。
また台湾を皮切りにさまざまな国や地域へ越境取引を展開し、将来的には海外在住のユーザーがメルカリに出品できる状態を作っていく予定だと述べました。
最後に、説明会で行われた質疑応答の中から、質問と回答を一部ご紹介します。
質問1:
海外ではまだリユース文化が定着していないところもあると思いますが、日本のリユース文化がどれほど海外に通用すると感じているか教えてください。
回答1:
現在「USED in JAPAN」の質の高さは圧倒的な強みです。実際メルカリの取引を見ていても、付属品や箱をきちんと保管してある出品者様は非常に多くなっています。これは世界からみると一般的ではなく、買い手にとってはより安心して、より満足が高いものを購入できるという信頼感があります。そうした点からも日本のリユース市場は競争力が非常に高いと考えています。
質問2:
台湾在住ユーザーは日本のメルカリのすべての機能やサービスを利用できますか?
回答2:
メルカリへのユーザー登録と商品の購入のみが可能です。商品を出品することや、「メルペイ」のような決済サービスは利用できません。また、商品を購入した際にコメントをつける機能も言語の問題があるため、現時点では制限しています。
質問3:
越境にあたって、売れない商品や海外へ持ち出せない(持ち込めない)商品の対応について教えてください。
回答3:
たとえば輸出が禁止されているものや、大きすぎて対応ができない商品は事前にシステムを組んでおり、現地(台湾側)で購入可能商品として表示されないように設計されています。
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