世界的に温暖化が進む中、夏の暑さから逃れ、涼しくて過ごしやすい地域で休暇を楽しむ「クールケーション(coolcation)」が活発化しています。夏には厳しい猛暑が続く日本でも、今後避暑地でのクールケーションが人気となることが予想されます。
この記事ではクールケーションについて詳しく説明するとともに、国内外で急速に活発化する理由、クールケーションをキーワードにしたインバウンド誘客の可能性について解説します。
クールケーションとは
クールケーションとは「Cool(涼しい)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、夏の猛暑を避けることを目的に、涼しく過ごしやすい地域で休暇を楽しむことをいいます。
クールケーションが盛り上がりを見せる背景にあるのは地球温暖化です。日本でも記録的な高温が続いていて、気象庁によると2023年の日本の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差は+1.29℃で、1898年の統計開始以降、最も高い値となっています。
この傾向は日本に限った話ではありません。環境省の資料によると、世界全体の平均気温は過去100年で0.74℃上昇し、近年になるほど温暖化の傾向が加速しています。
アメリカやヨーロッパでは都市によって40度を超える日が増えています。地球温暖化によって世界的に気温が上昇したことで、暑さを楽しむのではなく、休暇期間中は涼しい地域で過ごす「クールケーション」の動きが活発になっています。
クールケーションが2024年の旅のトレンドに選出
アメリカの大手旅行誌であるコンデナスト・トラベラーは、「2024年の旅のトレンド予想」のひとつにクールケーションをピックアップしました。かつては南フランスやシチリアなどのリゾートや、日差しに熱せられた砂浜で夏休みを過ごす人が多かったものの、近年では記録的な猛暑を理由に“涼”を求める傾向にあるようです。
また高付加価値旅行会社の「Virtuoso(ヴァーチュオソ)」の調査によると、同社の顧客の82%が気候の穏やかな旅行先を検討しているなど、クールケーションが2024年の旅のトレンドになるとしています。
国内外でクールケーションの動きが活発化
まだ聞き馴染みのないクールケーションですが、すでに国内外でクールケーションの動きが活発化しています。
【世界】北欧などの航空券発券数や検索数が増加
ヨーロッパでは北欧におけるクールケーションのニーズの高まりを受け、2024年の夏にノルウェーの航空会社が北欧と欧州を結ぶ路線を新たに就航しました。
また、クルーズ船を運航するクリスタルでは、2019年以来となる北米航路を開航し、アラスカやカナダ、そしてカリブ海を運航。さらに北欧を経由し、パナマ運河を経て大西洋を航海するクルーズ旅を企画するなど、世界的にクールケーションの動きが活発化していることがうかがえます。
民泊サービスを手掛ける企業では、2024年の上半期においてノルウェーやスウェーデンなど涼しい地域の検索数が上昇していることも明らかになっています。
【日本】夏に避暑地の検索数が20%ほど上昇
クールケーションのトレンドは日本にも訪れていて、ホテルズドットコムでは暑い時期に避暑地として知られる地域の検索数が上昇していることを発表。静岡県の「御殿場」は26%増、長野県の「軽井沢」は20%増、山梨県の「富士河口湖」は17%増と、避暑地と呼ばれるこれらのエリアの検索数は20%程度の増加傾向にあったということです。
訪日外国人においても日本国内でクールケーションを求める声はあり、「JNTO訪日旅行誘致ハンドブック2022」によると、7〜8月の夏季休暇を利用して訪日する韓国人からは、「涼しい印象がある」という理由で北海道の人気が高くなっています。
日本のインバウンドのハイシーズンは夏
コロナ禍前2019年の月別訪日外客数をみると、7月が最も多い299万1,189人でした。夏にインバウンドのピークを迎える一方で、日本の夏が蒸し暑かったと感じている訪日外国人は多く、クールケーションのニーズが今後高まることが予想されます。
訪日外国人の9割「日本の夏は蒸し暑かった」
観光庁が訪日外国人630人を対象に実施した「訪日外国人旅行者の夏の暑さに関する意識調査」によると、東京の夏が蒸し暑かったと回答した訪日外国人は全体のおよそ9割にのぼりました。なかでも欧米豪の回答者においては、ほぼ全員が「蒸し暑い」と回答しています。
また、どんなときに蒸し暑かったか聞いたところ、「屋外を歩いたとき」が9割、「屋外でスポーツをしたとき」が7割、「鉄道やバスに乗ったとき」が4割でした。
蒸し暑かったと回答した人の8割以上が、東京の夏が蒸し暑いことを訪日前から把握していたことも明らかになっています。蒸し暑いことは知っていたものの、涼める場所や暑さ対策グッズへの情報が不足していることが浮き彫りになっています。
訪日外国人は日本の夏の暑さに慣れていないのはもちろん、時差ボケ、疲労の蓄積などによって体調を崩しやすくなっています。今後も気温の上昇が続くと、熱中症などへの懸念からクールケーションのニーズが高まることが予想できます。
避暑地が人気に。地方誘客の訴求ポイントとしても効果的?
先述した通り「日本の夏は暑い」ということが知れ渡ってきており、混雑が少なく涼しいエリア(避暑地)が人気になってきています。たとえば北海道、長野県の軽井沢・上高地、栃木県の那須高原や奥日光、富山の立山黒部アルペンルートなどが挙げられます。
今課題となっている「地方のインバウンド誘客」の訴求ポイントとしても効果的に利用できそうです。
また、中国人旅行者の間では「逆向旅行(反向旅游)」の人気が高まっています。「逆向旅行(反向旅游)」とは、“みんなが行く場所とは逆の方向に行く”という意味で、混雑を避けて、比較的人の少ない穴場の観光地を訪れる旅行のことを指します。定番の避暑地だけでなく、ニッチな地域においても好機となりえるかもしれません。
関連記事:中国人の間で流行中の「逆向旅行(反向旅游)」とは?混雑避ける”穴場”が人気【訪日ラボ中国人スタッフが解説 vol.1】
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<参照>
気象庁:日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2023年)
環境省:地球規模の温暖化の影響 現在生じている影響
Hotels.com:暑い時期に検索数上昇!「避暑地」で猛暑対策~ Hotels.com、夏に涼しく過ごせる国内外の「ひんやり観光地」を発表
JNTO:訪日旅行誘致ハンドブック2022
コンデナスト・トラベラー:The Biggest Travel Trends to Expect in 2024
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