沖縄県に訪日台湾人はどれくらい来ている?コロナ前後で訪日台湾人の傾向に変化

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2024年9月、ビッグデータ解析などを行うVpon JAPANらが共同で「沖縄県内における台湾からの入域客の動向に関するレポート」を発表しました。

本記事ではこのレポートを踏まえ、台湾から沖縄への入域客の現状と課題についてお伝えします。沖縄の事例から、全国の観光地が取り組むべきインバウンド戦略のポイントを解説していきます。

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沖縄のインバウンドの現状

日本屈指の観光地、沖縄。2022年10月の入国制限緩和以降、沖縄のインバウンドに関する状況はどれほど回復したのでしょうか。

Vpon JAPANとりゅうぎん総合研究所が共同で発表した調査レポート「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」を参考に見ていきましょう。

訪日客数はコロナ禍以前の42.1%まで回復

調査レポートによると、2023年度に日本を訪れた外国人の数は2,883万4,290人でした。これはコロナ禍以前の2018年度の91.2%にあたります。

一方、同年度に沖縄県を訪れた外国人の数は126万3,500人で、2018年度の42.1%にとどまります。日本全体と沖縄の割合を比較すると、沖縄の回復ペースが遅れをとっていることがわかります。

観光収入は過去最高を記録

観光庁の発表によると、2023年の訪日外国人旅行消費額は5兆3,065億円で、過去最高を記録しました。2019年比で10.2%ほど増加しています。

国籍・地域別では台湾の消費額が最も多く、7,835億円(構成比14.8%)を占めています。次いで中国が7,604億円(14.3%)、韓国が7,392億円(13.9%)と続きます。

▲国籍・地域別に見る訪日外国人旅行消費額と構成費:「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

台湾が沖縄のインバウンドをけん引

2023年においては、台湾の消費額が全国籍・地域中で最も多く、沖縄のインバウンドをけん引していることがわかりました。さらに、訪日台湾人の数も増加傾向にあり、2023年度には489.7万人と過去最高を記録しました。

これを踏まえて、沖縄県における台湾からの入域客の動向をお伝えします。

全体の4割以上が台湾からの入域客

Vpon JAPAN らが発表した調査レポートによると、2023年度に沖縄を訪れた外国人の41.8%が台湾からでした。2018年度の30.6%から大きく増加しています。

▲沖縄県内における外国客構成費の割合(2023年・2018年度):「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

沖縄県の外国人入域客数は2018年度の42.1%にとどまっているなか、台湾からの入域客数が2018年度の57.7%まで回復しているなど、台湾が沖縄のインバウンドをけん引している様子がうかがえます。

▲台湾からの入域客数の推移:「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

支出はほかの国籍・地域と異なる傾向も

続いて、沖縄県を訪れた台湾人の消費額、消費傾向に焦点を当てて見ていきましょう。全国籍では「宿泊費(34.6%)」と最も多く、「買物代(26.4%)」「飲食費(22.6%)」と続いています。一方、台湾では、「買い物代(34.8%)」が最も多く、「宿泊費(28.2%)」「飲食費(21.3%)」の順番です。

ほかの国籍・地域と比べても、台湾からの入域客は、買い物への支出が多く、ショッピングを楽しみに訪日している傾向にあることがわかります。

▲国籍・地域別にみる訪日外国人1人あたり費目別旅行支出(2023年):「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

一方で、2024年においては訪日台湾人の消費傾向が、「モノ消費」から「コト消費」へシフトする兆しも見られるようになりました。

観光庁が実施した「消費動向調査(2024年 1-3月、2019年 1-3月) 」によると、2024年1-3月期の台湾からの入域客の旅行消費額は2,595億円と、2019年同期比で70.8%増加しています。内訳を見ると「宿泊費」「飲食費」「娯楽等サービス費」が2019年同期比で75%以上増加している一方、「買物代」は47.9%の増加にとどまっています。

沖縄に限らず、台湾からの入域客向けの「コト消費」を促すことは一層インバウンドの誘致、インバウンドによる消費の活性化につながることが考えられます。

関連記事:訪日台湾人観光客のインバウンド

コロナ前後で訪日台湾人の傾向に変化

ここからは、コロナ前後における台湾からの入域客の変化について詳しく見ていきましょう。

訪問先に変化、イベント開催やSNSが要因か

調査レポートによると、コロナ禍前後で訪問先に変化が生じていて、石垣市が大きく減少している一方、沖縄市、浦添市、宜野湾市、豊見城市が大きく増加しています。

石垣市が減少している背景には、2019年には就航していた台北-石垣便が2023年は運休していることが要因であるとしています。

増加した背景としては、2023年にFIBAバスケットボールワールドカップ、エイサーまつり、花火大会などの大規模なイベントが開催されたことに加え、浦添市にある港川ステイツサイドタウンがSNSで注目を集めたことも、訪問先の多様化に影響を与えたと結論づけています。

滞在日数が3.3日から4.7日へ長期化している

台湾からの入域客の平均滞在日数は、2019年の3.3日から2023年には4.7日へと大幅に伸びています。参考値ではあるものの、国内客の平均滞在日数は3.2日(2022年度)で、台湾をはじめ主要3か国(台湾韓国香港)の平均滞在日数は、国内客の約1.25〜1.5倍であることもわかっています。

▲国別平均滞在日数の変化:「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

また、14日以上の滞在率が増えているのもコロナ前後による変化といえます。台湾からの入域客は 2019 年には1%に満たなかった14日以上の滞在が、2023年には6%を超えるまで伸長しています。

コロナ禍以前と比べ、台湾からの入域客の沖縄滞在は長期化していることがわかります。

台湾からの観光客向けの「コト消費」促進の重要性が明らかになりました。前章で述べたように、イベントなどを通じて「コト消費」を促進することが、インバウンドによる消費の活性化につながる可能性が高いと考えられます。

沖縄の事例から見る、今後の課題と実施すべき取り組み

最後に沖縄の事例を踏まえ、インバウンド戦略の観点から課題と解決策を3点紹介します。

1. 満足度向上のための受け入れ体制・設備の強化

訪日外国人を取り込むために必要な施策のひとつが、受け入れ体制・設備の強化です。沖縄県が2022年に外国人観光客を対象に行った調査によると、旅行全体の満足度は非常に高く、88.3%(台湾からの入域客に限ると93.8%)が「大変満足」または「満足」と回答しています。

項目別にみると「安心・安全(95.3%)」「おもてなし(90.3%」」「食事施設(90.1%)」「観光施設(89.4%)」「宿泊施設(88.5%)」などへの満足度が高い一方、「キャッシュレス対応(72.6%)」「Wi-Fi(69.1%)」、特に「外国語対応能力(53.5%)」に課題があることが分かりました。

▲沖縄旅行の満足度:「沖縄県内における台湾からの入域客の動向」から抜粋

これらの課題に対応することも、インバウンドの誘致、インバウンドによる消費の活性化の強化につながります。解決策の一例は以下のとおりです。

・多言語対応の強化

従業員の語学教育、パンフレットやメニューの多言語化、通訳翻訳機能付きデバイスやアプリの導入など

・キャッシュレス決済の導入促進

クレジットカード、デビットカード、モバイル決済QRコード決済等、多様な決済手段の導入

・スピーディーで安定した通信ネットワークの提供

Wi-Fi環境の整備や速度の見直し

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2. データを用いた動向把握の拡充

データを用いた観光客の動向把握が重要性を増しています。Vpon JAPANらが実施した共同レポートは、人流データを観光へ活用した好事例といえます。

全国的にも、観光データの活用と公開が進んでいます。たとえば福井県の「エフタス」というプラットフォームでは、観光に関するデータを誰でも自由に閲覧できます。また、九州経済調査協会が提供する「おでかけウォッチャー」は、観光客分析に特化した人流モニタリングサービスです。

行政などが主導で観光関連データを積極的に公開する動きも広がっています。データ活用により、一層効果的なインバウンド戦略の立案が可能になります。

関連記事:「稼ぐ観光」をいかに実現するか?日本の観光DX、3つの先進事例と今後【観光庁 観光DX成果報告会を取材】

3. 地域の魅力となる「コト消費」への対応

台湾からの入域客は現在、買い物を主な目的としていますが、とくに2024年に入ってからは「コト消費」への興味関心が高まっています。

たとえば沖縄の場合、やんばる(沖縄本島北部)の豊かな森や青い海などの自然環境を活かしたエコツアー体験プログラムの開発が考えられます。

また、2024年7月に発表された沖縄コンベンションビューローの観光大使に、台湾出身でやんばる在住の張菀渝(チョウエンユー)氏が選出されました。外からの目線を持ちつつ、地域に根付いて活動している人材の知見を活用しながら、その魅力を発信していくことが効果的であるとしています。

このような取り組みも「コト消費」を促進し、インバウンド戦略の効果的な手段になると考えられます。

関連記事:台湾人向けのインバウンド集客対策とは?訪日旅行時の特徴からSNS別の利用率まで

沖縄の事例を応用して適切なインバウンド集客を

沖縄の現状と今後の課題、取り組みを紹介してきました。沖縄に限らず、台湾からの入域客を中心とした満足度の向上とデータ分析による「コト消費」のメニュー充実がインバウンド戦略の鍵といえそうです。

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<参照>
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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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