インバウンド消費含む日本酒の輸出市場は1,000億円規模へ:2024年度日本酒輸出総額記者発表会

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日本酒業界最大の団体である日本酒造組合中央会は2月7日、「2024年度日本酒輸出総額記者発表会」を開催しました。

2024年度の日本酒輸出実績が金額・数量ともに昨年を超えたことや、インバウンド需要に対する取り組みなどについて説明しました。

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日本酒輸出金額・数量ともに前年超え 輸出相手国の数は過去最多

まずは日本酒造組合中央会 理事 宇都宮氏より、2024年度の輸出実績について報告がありました。

▲日本酒造組合中央会 理事 宇都宮氏:訪日ラボ撮影
▲日本酒造組合中央会 理事 宇都宮氏:訪日ラボ撮影

輸出額1位は中国

2024年度の輸出実績は総額434.7億円(2023年比105.8%)、数量3.1万kL(2023年比106.4%)となり、ともに2023年を超える結果となりました。宇都宮氏は、前年超えの理由としてコロナ後の物流の混乱や在庫過剰などの影響が解消して正常な状態に戻りつつあることを挙げました。
▲日本酒輸出量・金額の推移:日本酒造組合中央会リリースより
▲日本酒輸出量・金額の推移:日本酒造組合中央会リリースより

また輸出金額1位は中国で約116.8億円(2023年比93.7%)でした。次いで2位はアメリカ(約114.4億円・同125.9%)、3位は香港(約51.2億円・同84.9%)となり、上位3か国で全体の65%を占めています。

1Lあたりの輸出金額が2,000円を超える国もあるなど、比較的高価な日本酒が市場を牽引する傾向が続いているようです。

アメリカについては、レストランや現地小売店での取り扱いが増加したことで、輸出金額が過去最高となりました。前年から減少している中国香港について、宇都宮氏は景気後退などの理由で現地の高級日本食レストランでの需要が落ちたことが原因として考えられるとしており、なかでも中国については訪日旅行が活性化するほど現地での需要が落ち着く、と述べました。

欧州でも需要増

ほかにも韓国では金額・数量ともに、ドイツ、フランス、イタリアでも過去最高額を記録しました。

宇都宮氏はワイン文化が浸透している欧州圏でもファインダイニング富裕層向けレストラン)で日本酒が提供される機会が増加していると述べ、輸出相手国の数も80か国で過去最多となるなど、海外でも日本酒の存在感が高まりつつあるとしています。

▲日本酒の輸出量・金額マップ:日本酒造組合中央会
▲日本酒の輸出量・金額マップ:日本酒造組合中央会

今後は日本酒の輸出先の多角化を目指す

続いて宇都宮氏は、中長期的な今後の展望について説明し、以下を今後の重点課題として挙げました。

  • 世界に誇れる「日本酒のブランド確立」「正しい理解の普及」、認知度の向上
  • 継続的な輸出拡大のための「商流の確立」と「市場・販路の拡大」
  • 輸出に関わる事業者をサポートする体制の整備・充実や関係業者の連携強化、政府への要望など基盤の整備
  • 国・地域を重点化し、浸透度や地域特性を加味した「地域別の戦略」の共有
    • 重点国:北米、欧州、中国、香港、台湾、シンガポール
    • 準重点国:韓国、東南アジア、オーストラリア、ブラジルなど

東南アジア市場などを強化

中国、アメリカ、香港で全体の65%を占めている状況を踏まえて、宇都宮氏は今後について、輸出相手国・地域の多角化を行う必要性を示しました。

特に東南アジア地域は経済成長や人口増加が見込まれていることから新たな日本酒市場として期待しているとしました。

また引き続き重点市場である中国圏に関しては、中国SNSWeChatREDなど)を積極的に活用するほか、訪日客数が多い市場であることから酒蔵ツーリズムなどの取り組みにあわせてプロモーションを展開する必要があると述べました。

宇都宮氏は、各国で酒類に関する法規制や流通経路が異なるため、マーケティング調査の上で効果的な施策を展開し、日本酒市場の開拓・浸透を図っていく考えを述べました。

ソムリエを通じた富裕層需要の取り込みへ

宇都宮氏は、国際ソムリエ協会やフランスソムリエ協会(ASI)とのパートナーシップに基づく活動が活発化し、ソムリエへの日本酒の認知度が上がっていると指摘します。実際に、コンクールで受賞したソムリエを日本に招聘するなど、ガストロノミー分野で影響力が強いソムリエへの啓発活動に力を入れているといいます。

宇都宮氏は、今後もソムリエを通じて世界中のファインダイニング日本酒が扱われるように展開したい考えを述べました。

「伝統的酒造り」の文化遺産登録をプロモーションに活用

「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産への登録が決定したことによる影響についてコメントを求められると、まだ日が浅いためわかりやすい影響は見えにくいものの、今後積極的にプロモーションを行いたい考えを示しました。

また今田氏(日本の酒情報館 館長)は、今後「こうじ」の知名度の高まりが予想されることに対して期待を述べました。

インバウンド需要の取り込みへ 酒蔵ツーリズムや万博を契機とした取り組みも

日本の酒情報館 館長 今田氏より、訪日外国人観光客の動向について紹介がありました。

▲日本の酒情報館 館長 今田氏:訪日ラボ作成
▲日本の酒情報館 館長 今田氏:訪日ラボ作成

2024年のインバウンド市場について、訪日外客数は約3,687万人で消費額は約8兆円となりました。今田氏は、円安が続く状況で海外へ赴いた営業活動が難しいなかで、輸出の強化だけでなく旺盛なインバウンド需要を取り込んでいくことが重要になると述べました。

また訪日客が帰国後に現地でも消費するといった好循環を生み出す必要があるとしており、そのためには充実した文化体験を用意する必要があるとしました。

インバウンド客向けの取り組みとしては、「購買・飲食・体験」といったそれぞれの分野で施策を打ち出していくといいます。

免税制度の活用による販促

具体的には、国際空港にて免税制度を活用した販促を行っているとしており、2025年度はキャンペーンをさらに増強する予定だとしました。また酒蔵での日本酒購入でも免税制度を活用できることから、手続きの簡略化などを受けて販促を推進していきたいといいます。

ほかにも大阪・関西万博の開催を踏まえて、大阪で全国の日本酒を楽しめる「國酒フェア」を開催するとともに、会場内外で日本酒の魅力や文化的価値を発信していくとしています。

居酒屋文化などのアピール

課題として、インバウンド客の多くが日本食に興味を持っている一方で、日本酒業界は飲食消費の需要をまだ取り込めていない状況だといいます。

そこで、居酒屋文化のアピールなどを通じて訪日時の日本酒の消費拡大を後押ししていきたいとしています。

酒蔵ツーリズムの活性化

そのほかにも酒蔵ツーリズムも重要になるとの紹介がありました。今田氏によると、インバウンド客の誘致に積極的な酒蔵が増加しており、近年は酒蔵の見学だけにとどまらず、近隣の施設と連携して地域で1日を過ごせるような取り組みが進められているとしました。

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今田氏は、旅行会社や他業種業者との連携が強まることによって、その地域でしか体験できないようなツアー商品が増えているとしており、インバウンド客と酒蔵を結びつける役割になるとして期待を寄せました。

インバウンド消費を含め、日本酒の輸出市場は1,000億円規模に

宇都宮氏によると、今後の日本酒の輸出市場は順調な成長が見込まれるといいます。

2025年の政府目標である600億円の達成については、中国による輸入規制の関係で困難な可能性が高いとしたものの、2024年の記録を超えるのではないかという見解を示しました。

また具体的な時期は明言しなかったものの、「最終的にはインバウンド消費を含む日本酒の輸出市場が800億〜1,000億円規模の構造となるのではないか」という考えを述べました。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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