効果的なマーケティング戦略を立てるには、自社の商品やサービスがどのような顧客に支持されているのかを把握することが重要です。
デシル分析は、顧客を購買金額の高い順に10のグループに分け、購買傾向を分析する手法です。デシル分析することで、売上に貢献している顧客層を明確にし、より効果的なマーケティング施策を立案できます。
インバウンド需要が拡大する中、訪日外国人の購買データを分析することで、売上の中心となる顧客層を特定し、ターゲットに合わせたプロモーションやリピーター施策を実施することが可能になります。
本記事では、デシル分析の基本概念、メリット・デメリット、そして具体的な活用方法について詳しく解説します。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
デシル分析とは
デシル分析の「デシル」とは、ラテン語で「10等分の」という意味を持つ言葉です。デシル分析の基本は、顧客を購入金額や売上構成比などを通じて上位から10個のグループに分類することです。
顧客を層に応じて細かくグルーピングすることで、マーケティング施策の効率化が期待できます。デシル分析は、自社が現状で抱えている顧客の像を、より詳細な把握を可能にします。
分類したそれぞれのグループを分析し、どのグループの売上比率が最も大きいかを把握することで、どのような施策が売上アップにつながるかを検討できます。
漠然とした売上の認識から、10グループごとの現状把握に細分化できるため、より詳細で具体的な施策の考案が期待できます。
また、細かいグループの売上認識を通じて、自社の抱える課題を把握し、改善に向けて施策を立てることも可能です。
デシル分析のメリットとデメリット
デシル分析には、顧客層を分けて認識してマーケティング施策を決められる以外にもメリットがあります。
同時にデシル分析にはデメリットもあるので、施策決定のためにデシル分析を採用する場合は、注意が必要です。
メリット/簡単に分析が可能
デシル分析は、顧客を10個のグループに分類することで成立しますが、その基準は購入金額に基づいているため、グルーピングが容易です。
指標が複数に分かれる分析の場合、複雑な業務を要することもありますが、デシル分析の場合は手軽に素早く作業を進められます。
デシル分析は専門的なツールの使用の必要はなく、エクセルなどの表計算ソフトを活用してすぐに開始できる分析であるため、ハードルの低いマーケティング施策といえます。
デメリット/分析が単純
分析の工程が単純であることは、メリットであると同時にデメリットでもあります。
デシル分析は、購入金額だけを基準にして分析をすすめるため、これだけではマーケティングに必ずしも有効な分析結果を得られるとは限りません。
多くの指標を用いるRFM分析など、他の分析方法と合わせてデシル分析を活用することで、マーケティングに役立つ分析結果を期待できます。
また、購入履歴を基準にするデシル分析では、いつの購入記録であるかに注意を払う必要もあります。履歴が古い場合は現状に即した結果ではない場合もあるので、詳細の分析や長期的なマーケティング戦略を構築するためには、デシル分析は最適な方法とはいえません。
指標が多いRFM分析などを併用する必要があるでしょう。
デシル分析の方法
デシル分析は、手軽でスピード感をもって行える分析方法です。
具体的な手順には、特別なツールを用意したり、スキルを身に着けたりする必要はありません。
1. 顧客層の購買データを用意
デシル分析は顧客の購買金額に応じてグループ分けするため、まずは顧客層の購買データを用意するところから始めます。
データの期間は、あまりに古い場合は有効な結果を得られない可能性もあります。
例えば、対象期間を長くした場合、過去に一度だけ高額購入した人が上位グループに振り分けられてしまう場合もあります。
デシル分析においては、期間設定を慎重に行うことと、顧客層の特徴をある程度絞り込んでからグループ分けすることが大切です。
2. 10等分にグループ化
期間を設定したら、顧客ごとの購買金額のデータを金額が大きい順に並べていきます。
そこから、10等分にグループ分けし、デシル1からデシル10と名前をつけて管理します。
10等分の方法はグループの総額ではなく、人数を基準にします。例えば、1,000人のグループを10等分にする場合は、100人ずつのグループになるということです。
3. 売上構成比を算出
10等分されたグループが完成したら、売上構成比を計算します。
グループ内での総額を計算したのち、他のグループと比較して全体に対する構成比が何パーセントになるかを算出します。
各グループが上位からどの程度の比率を占めるのか、累計購入金額比率を出すことで、どの層が主な購入層に当たるのかを明確にできます。
この分析結果をもとに、どの層に対するアプローチが有効なのか、自社のウィークポイントはどの層なのかを把握し、マーケティング戦略の参考にすることが可能です。
デシル分析以外の分析手法
デシル分析は、簡単に取り掛かれる分析方法であるものの、細かなマーケティング情報を得られる手法ではありません。
そのため、デシル分析を活用する際はここで紹介する他の分析方法との併用も有効です。
RFM分析
RFM分析とは、Recency (直近いつ)、Frequency (頻度)、Monetary (購入金額)の3つの指標をもとに顧客を分析する方法です。
これらの3つの指標から顧客を段階的に分類しグループを作成したのち、それぞれのグループの特徴を分析し、マーケティングの施策を講じる手法です。
デシル分析よりも多くの指標を組み合わせてグルーピングするため、より正確性の高い分析ができます。
分析結果をもとに、優良顧客、休眠顧客などのカテゴリーに向けて最適な対策を見つけ出すことが可能です。
関連記事:RFM分析とは?分析の目的や手順を分かりやすく解説
ABC分析
ABC分析は、購買金額を分析するという点においてはデシル分析と同じですが、A、B、Cの3つのグループに分けるという点が異なります。
分類するグループの数はデシル分析より少ないため、よりスピーディに分析結果を取得できます。
購買している顧客層の全体像を素早くつかみたいという際に有効ですが、1つのグループに所属する顧客の数が多くなるため詳細の把握には不向きな分析手法です。
デシル分析をマーケティングに活用し、売上アップへ
デシル分析は、マーケティング施策の方向性を決定する際の基礎情報として、簡単に素早く行える分析方法の1つです。
購買金額に応じて10等分のグループに分類することで、どの顧客層が売上に大きく影響を与えているかを把握できます。
ただし、購買金額という側面だけで分析するため、詳細なマーケティング情報というよりは簡易的な顧客像把握の要素が強い分析方法でもあります。
より効果的なマーケティング施策を検討するためには、デシル分析に加え、RFM分析のような、複数の指標を組み合わせた分析方法との併用が必要な場合もあります。分析する目的に合わせて、状況に最も適した手段を選択することが重要です。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月前編】最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!