デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?意味やメリット・デメリット、事例をわかりやすく解説

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【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。

デジタルトランスフォーメーションDX)とは、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を用いてビジネスモデルや組織、企業文化そのものを根本から変革し、新たな価値を創出することを指します。

激化する市場競争や変化する顧客ニーズに対応し、持続的な成長を遂げるために、今や多くの企業にとってDXは避けて通れない経営課題です。

しかし、「DXとは具体的に何をすることなのか?」「なぜ必要なのか?」「導入するとどんな良いことがあるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、DXの基本的な意味から、注目される背景(必要性)、導入によるメリット・デメリット、そして業種別の事例まで網羅的に解説します。

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デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

各方面でデジタル化が重要視される昨今、デジタルトランスフォーメーションを導入する企業が増加しています。

最初にデジタルトランスフォーメーションについてその概要を紹介していきます。

デジタルトランスフォーメーションの概要

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation、DXはデータとデジタル技術の活用により業務、組織、企業の風土等を変革し、競争において優位性を確立することを指します。

ここ数年で日常生活を支えるあらゆるサービスや商品のデジタル化が進んでいますが、企業においても同じことがいえます。

加速していく競争社会の中でより優位性を保ちながらビジネスを進めていくには、業務や組織経営、企業の風土づくり等に最先端のデジタル技術を取り入れることが必要となっています。

集客や顧客の満足度向上を考えても、変わりゆく時代に合わせ、デジタル技術を用いたサービスや商品を生み出し続けることが求められています。

なぜ今DXが必要なのか、注目される3つの背景

近年、デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれていますが、その背景には複数の要因があります。

1. 競争環境の激化と市場の変化への対応

グローバル化やデジタル技術の急速な進展により、あらゆる業界で既存のビジネスモデルが通用しなくなる可能性があります。

異業種からの新規参入も増え、競争はますます激化しています。こうした変化に迅速に対応し、競争優位性を確立・維持するためには、データとデジタル技術を活用したビジネス変革、すなわちDXが不可欠です。

新型コロナウイルス感染症の拡大は、非対面・非接触型のサービスへの移行を加速させ、DXの重要性を一層浮き彫りにしました。

2. 「2025年の崖」問題とレガシーシステムからの脱却

しかし、今まで利用していたシステムは「レガシーシステム」と呼ばれ、複雑化、ブラックボックス化、老朽化しているとされ、問題視されると同時に、その特性から、運用や保守に非常に多くの人手が必要といわれています。

そこで問題にあがっているのが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。2025年の崖とは、デジタル化が進むにつれてIT人材不足が進み、さらに基幹システムの老朽化、SAPやERPのサポート終了が重なり、デジタルトランスフォーメーションの実現が遠のくといわれている問題です。

経済産業省ではこの2025年の崖に備えて「DX実現シナリオ」を掲げ、レガシーシステムからの脱却の重要性について言及しています。

3. 顧客体験(CX)の向上と新たな価値創造

消費者の行動様式はデジタル化の進展により大きく変化しました。

スマートフォンを通じていつでもどこでも情報を収集し、商品を比較検討、購入することが当たり前になっています。企業は、こうした変化に対応し、顧客一人ひとりに最適化された体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)を提供することが求められています。

DXを通じて顧客データを収集・分析し、ニーズを深く理解することで、パーソナライズされたサービスや、これまでになかった新しい価値を提供できるようになります。

関連記事:CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客の体験価値を向上させる3つの方法

デジタルトランスフォーメーション3つのメリット

デジタルトランスフォーメーションを導入することで多くのメリットがあります。

先述した2025年の崖に対応する以外に、ビジネスにおいてどのような効果が期待できるのか、3つのポイントに焦点を当てて紹介していきます。

1. 効率性・生産性・精度の向上によるコア業務への集中

DXを導入し、これまで手作業で行っていた定型業務や、部門ごとに分散していたワークフローを統合・自動化することで、大幅な業務効率化が期待できます。

たとえば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によるデータ入力作業の自動化や、SFA/CRMツール導入による営業活動の可視化・効率化などが挙げられます。

これにより、従業員はより創造的で付加価値の高いコア業務に集中できるようになります。

加えて、統合されたワークフローやデータ共有は、部門間の連携を促進し、迅速な意思決定を可能にします。AIによる需要予測や検品作業などは、ヒューマンエラーを削減し、業務の精度向上にも大きく貢献します。

関連記事:CRMとは?主な機能とメリットデメリット、オススメツール10選を紹介

2. 市場の変化に柔軟に対応

デジタルトランスフォーメーションを導入することで、市場の変化に柔軟に対応できるようになります。

たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの業界で市場の変化やこれまでとは違ったビジネスモデルへの変化を余儀なくされました。

もともとITツールなどの活用でデジタルトランスフォーメーションが進んでいた企業とそうでない企業とでは、業務への影響の差が大きくなっています。

3. 新商品・サービスの開発に貢献

デジタルトランスフォーメーションの目指すところは業務や組織のデジタル化ではなく、その先にある新しいサービスや商品、ビジネスモデルの開発にもあります。

すでにクラウド、ビッグデータアナリティクス、AIやIoTを活用して新たな商品やサービス、ビジネスモデルが誕生しています。

実際にデジタルトランスフォーメーションを導入した企業の中には、自社商品に取り付けたセンサーで情報を収集している企業もあります。集めたビッグデータはアナリティクスやAIで分析し得られた結果を活用して、定期的メンテナンスレスといったサービスを提供しています。

より詳しく分析されてできた新しい商品やシステムの開発は、顧客満足度の向上や集客につながります。

DX導入における2つのデメリットと注意点

業務の効率化や新商品の開発に役立つ一方で、デジタルトランスフォーメーションの導入にはデメリットも存在します。

1. 初期投資と効果測定の難しさ

DXの推進には、新たなシステム導入やツール利用料、コンサルティング費用など、大規模な初期投資が必要となる場合があります。

また、導入効果がすぐに現れるとは限らず、短期的なROI(投資対効果)が見えにくいケースも少なくありません。実際に効果を実感するまでに3〜5年かかるとも言われています。

そのため、経営層の強いコミットメントと、費用対効果を継続的に測定・評価する仕組み、そして中長期的な視点での計画が不可欠です。

2. 既存システムからの移行が困難

すでに別のシステムを導入している企業では新しく導入を進めることが難しいケースもあります。

特に、社内で修正やアップデートが統一されていない場合は、社内の全データを統一するところから始めなければなりません。システムの導入までに多くの準備が必要であることはデメリットの1つです。

業務プロセスが変わってしまうこともあるので、システムを通した社内全体での連携をうまく取れない場合には、なかなか導入まで踏み切れないことも考えられます。

このように既存のシステムからの移行には、システムを管理する部署だけでなく社内全体の協力も求められます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)導入事例

DXは特定の業界にとどまらず、さまざまな分野でその取り組みが進められています。

ここでは、具体的な企業名ではなく、業種ごとの代表的なDXの取り組み例を3つご紹介します。

事例1:製造業におけるDX ~スマートファクトリーと新たな価値提供~

多くの製造業では、生産効率の向上、品質の安定化、熟練技術者の経験への依存といった課題を抱えています。これに対し、DXを活用した取り組みが進んでいます。

例えば、工場のスマート化はその代表例です。工場内の機器や設備にセンサーを取り付け、稼働状況や生産データをリアルタイムに収集・分析(IoT化)することで、生産ラインのボトルネック特定や、非効率な工程の改善を進めます。

また、収集したデータを活用し、AIによる予知保全や品質検査も導入されています。AIが設備の故障時期を予測して計画的なメンテナンスを可能にしたり、人による目視検査では見逃しがちな微細な不良品を検知したりすることで、品質の安定化と効率化を図ります。

さらに、製品自体にセンサーを搭載し、顧客先での稼働データを収集・分析することで、データに基づく新たなサービスの提供も可能になっています。遠隔監視や最適なメンテナンス時期の提案、稼働状況に応じたコンサルティングなど、製品販売にとどまらない付加価値の高いサービス展開です。

これらのDX推進により、生産性の向上、コスト削減、品質の安定化に加え、サービス化による新たな収益源の創出につなげているケースがあります。

事例2:小売業におけるDX ~顧客体験の向上とデータ活用~

顧客ニーズの多様化やオンラインショッピングの普及が進む小売業界では、顧客一人ひとりに合わせた快適な購買体験の提供が重要になっています。

DXを活用した取り組みとして、まずOMO(Online Merges with Offline)が挙げられます。これはECサイトと実店舗の垣根をなくし、顧客データを統合する考え方です。オンラインで注文した商品を店舗で受け取れたり、店舗での購買履歴に基づきオンラインでおすすめ商品を提案したりするなど、シームレスな顧客体験を提供します。

また、POSデータ、アプリ利用履歴、Webサイト閲覧履歴など、さまざまな顧客データを収集・分析し、データ分析によるパーソナライゼーションも進んでいます。これにより、個々の顧客の嗜好に合わせた商品レコメンデーションやクーポン配信が可能になります。

さらに、店舗運営の効率化DXの重要なテーマです。AIによる需要予測に基づいた発注・在庫管理の自動化や、キャッシュレス決済、セルフ(無人)レジの導入により、店舗スタッフの負担を軽減し、接客など付加価値の高い業務に集中できる環境を整えます。

こうした取り組みにより、顧客満足度(ロイヤルティ)の向上、売上増加、店舗運営の効率化を実現しようとしています。

事例3:金融業(銀行・保険など)におけるDX ~利便性向上と新サービス創出~

手続きの煩雑さや対面中心のサービスが課題とされてきた金融業界でも、DXによる変革が急速に進んでいます。FinTech企業の台頭も、既存金融機関のDXを後押ししています。

主な取り組みとして、まずオンラインチャネルの強化が挙げられます。

スマートフォンアプリを通じて、口座開設、残高照会、振込、保険契約、各種手続きなどを時間や場所を選ばずに行えるようにし、顧客の利便性を大幅に向上させています。

AIの活用も進んでおり、膨大なデータを活用して融資審査の精度を高めたり、顧客の資産状況やライフプランに合わせた最適な金融商品や運用方法をアドバイスしたりしています。

さらに、API連携によるエコシステム形成も注目されています。自社の金融機能をAPI(Application Programming Interface)として外部の事業者(例:家計簿アプリ、会計ソフトなど)に提供することで、顧客にとってより便利なサービス連携を実現し、新たなビジネス機会を創出しています。

これにより、顧客の利便性向上、事務コストの削減、より精度の高いリスク管理、そして従来の枠を超えた新しい金融サービスの提供を目指しています。

デジタルトランスフォーメーションで競争優位性を確立し、未来を切り拓く

本記事では、デジタルトランスフォーメーションDX)の基本的な意味から、その必要性、導入によるメリット・デメリット、そして業種別の事例まで解説しました。

DXは単なるITツールの導入ではなく、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化そのものを変革し、新たな価値を創造する取り組みです。

業務効率化や生産性向上はもちろん、市場の変化への柔軟な対応、そして新しいサービス開発を通じて、企業の競争優位性を確立し、持続的な成長を実現するための鍵となります。

一方で、導入にはコストや時間、人材育成といった課題も伴います。自社の課題を明確にし、経営層のリーダーシップのもと、長期的な視点で計画的に取り組むことが成功のポイントです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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