観光庁は5月27日、同日閣議決定された令和7年(2025年)版の「観光白書」を公表しました。
観光白書とは、観光庁が起草・編集して年度ごとに公開される刊行物で、日本の観光に関する状況やデータ、観光に関する昨年度の政策および今年度の政策についてまとめられているものです。
今回の観光白書は「観光の動向」「令和6年度に講じた施策」「令和7年度に講じようとする施策」の3部で構成されており、インバウンド観光の現状や課題なども網羅的に記されています。
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令和7年版「観光白書」公表
観光白書の令和7年版が5月27日に発表されました。構成は以下のようになっています。
- 第1部 令和6年 観光の動向
- 第1章 世界の観光の動向
- 第2章 日本の観光の動向
- 第3章 日本人の国内旅行の活性化に向けて(テーマ章)
- 1 日本人の国内旅行の現状と課題
- 2 国内交流の拡大に向けた取組
- 3 日本人の国内交流の拡大に向けて
- 第2部 令和6年度に講じた施策
- 第3部 令和7年度に講じようとする施策
今年の「テーマ章」は「日本人の国内旅行の活性化に向けて」
毎年話題となるのが第1部第3章に書かれる「テーマ章」。今年は「日本人の国内旅行の活性化に向けて」がテーマとなりました。
事前に観光白書の内容について議論する会として開かれた交通政策審議会観光分科会(第49回)では、インバウンド需要が好調な一方、日本人の国内宿泊者数は昨年と比較して微減になってしまっているとの課題が挙げられていました。宿泊旅行は回復しているものの、出張需要や日帰り旅行需要の回復が鈍いことや、70代以上の高齢者の旅行回数が減っていることが要因となっています。
観光庁は、市場としての影響力が大きいのもさることながら、今後は人口減少・少子高齢化が進むことが予見されているため、国内交流の拡大にこれまで以上に取り組む必要があるとしています。
関連記事:交通政策審議会観光分科会(第49回)
第1部:令和6年 観光の動向
ではここから、観光白書の内容のうち、インバウンドに関わる内容を抜粋して解説していきます。
第1部は世界および日本の観光の動向がテーマとなっており、訪日旅行の状況はそのうちの第2章第1節にまとめられています。
- 訪日外国人旅行者数の推移
- 訪日外国人旅行者の内訳
- 訪日外国人旅行者による消費額の推移
- 国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比
- 費目別にみる訪日外国人旅行消費額
- 国際会議の開催状況
過去の訪日ラボの記事でも紹介しているデータではありますが、改めておさらいしてみましょう。
2024年の訪日外国人旅行者数は約3,687万人で、コロナ禍前2019年を超え、過去最高を記録しました。
国籍・地域別では韓国・中国・台湾・米国・香港の順となっています。

関連記事:2024年 訪日外客数
また、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円とこちらも過去最高に。
国籍・地域別では中国が最も多く、次いで台湾・韓国・米国・香港の順となっています。

関連記事:2024年 訪日旅行消費額
なお、世界の観光の動向を見てみると、国際観光客数は2024年に14.5億人となっており、2019年比1.3%減とほぼ同水準まで回復したことがわかりました。
国際観光と比較すると、訪日旅行の回復・拡大ペースは非常に早いものだと言えます。
2023年時点の外国人旅行者受け入れ数ランキングでは、日本は世界で15位、アジアで2位となっています。

第2部・第3部:「令和6年度に講じた施策」「令和7年度に講じようとする施策」
第2部と第3部では、おもに以下の3つの戦略について取り上げています。
大枠は昨年度と変わっていませんが、2025年度に新たに始める施策など、細かな記述の違いがあります。
- 持続可能な観光地域づくり
- 地方を中心としたインバウンド誘客
- 国内交流拡大

令和7年度に講じる施策、昨年度からの「変更点」は?
では、「地方を中心としたインバウンド誘客」についての変更点を解説します。
1. より効果的な観光消費の拡大、地域におけるインバウンド経済効果の波及
「インバウンドの回復に向けた集中的取組」が「インバウンドの誘客に向けた集中的取組」と変更されており、訪日客数・消費額が過去最高を記録した現状を反映したものとなりました。
「より効果的に観光消費を拡大し、地域においてインバウンドの経済効果を波及させる観点」を重視し、「より高単価な体験商品の造成」の支援や「海外への情報発信」を行います。
2. 「伝統的酒造り」の周知広報
昨年度は「日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産への登録」の取り組みが記載されていましたが、2024年12月に実際に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、その「周知広報」が次の施策となります。
具体的には地域の特性に応じたシンポジウム等の開催、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場におけるPRなどを挙げています。
3. 「リファンド方式」への見直しを踏まえた免税店との連携やシステム改修費用補助
「外国人旅行者向け消費税免税店の拡大等によるショッピングツーリズムの推進」の節では、令和7年度税制改正において、「リファンド方式」への見直しが行われたことに触れています(制度施行日は 2026年11月1日)。
これを踏まえ、制度の円滑な施行を通じた更なる消費拡大を実現するため、免税店等と連携しつつ、制度の周知や免税店へのシステム改修費用の補助を行います。
4. スポーツツーリズムの推進
「スポーツツーリズムの推進」の節には、「スポーツコンプレックス」「スポーツホスピタリティ」の項目が新たに追加されました。
スポーツコンプレックスとはいくつかのスポーツ競技施設を併せ持った施設群の総称。そのコンセプトや好事例となるモデル等を整理する調査を行うとともに、スポーツコンプレックスと連携したまちづくりに関わる取り組みを支援します。
また、スポーツホスピタリティとはスポーツ観戦に高い付加価値を提供する取り組みで、ガイドブックを活用した研修会の開催、好事例の創出に向けた専門家派遣事業、事例調査などに取り組みます。
5. 大阪・関西万博での農泊のPR
「農泊の推進」では、大阪・関西万博の農林水産省展示(2025年6月)において、インバウンドを含めた多くの来場者に向けて農業遺産、世界かんがい施設遺産等の農山漁村の魅力を発信し、訪問意欲の喚起を図ることが追記されています。
6. 観光コンテンツ事業者の収益性改善
「地方誘客に資する各種のコンテンツ整備」の節には、「観光コンテンツ事業者の収益性改善」が追加されました。
観光コンテンツ事業者の経営における持続可能性を高めるべく、ネイチャーアクティビティ(自然をテーマにした体験活動)等の観光コンテンツの造成に既に取り組んでいる地域を中心に、収益性改善モデルの構築を実証します。
7. 「交通空白」の解消
「地域交通を活用した観光地の魅力向上・高付加価値化とMaaSの実装推進」の節には、「『交通空白』の解消」に関する内容が追加されました。なお本資料では、電車やバスなどはもちろん、タクシー・乗合タクシー・公共ライドシェア・日本版ライドシェア等を地域住民や来訪者が利用できない地域を「交通空白」と呼んでいます。
地域住民の「地域の足」の確保・充実を図る取り組みに加え、新幹線・特急停車駅・空港等の主要交通結節点から観光地に向かう「観光の足」の確保・充実を図る取り組みや、訪日外国人旅行者にもわかりやすい情報提供の取り組みを強化します。
さらに全国各地の「交通空白」の解消等に向けて、2025年度から2027年度までを「交通空白解消・集中対策期間」と定め、地方公共団体や交通事業者に対する伴走支援や、パイロットプロジェクト(試験的に行う事業)の推進等、あらゆるツールを総動員し、地域交通のリ・デザインを全面展開します。
8. デジタルノマドの誘客促進
「出入国に関する措置等の受入体制の確保」の節には、「デジタルノマドの誘客促進」が追加されました。
訴求可能な滞在プログラムの造成や受入体制構築等、デジタルノマドの受入に関するモデル実証を約5件実施するほか、デジタルノマドの受入に必要な環境整備に関する補助を約4件実施します。
9. 日中韓三国間の観光交流と協力の強化
「アウトバウンド・国際相互交流の促進」には、「日中韓三国間の観光交流と協力の強化」が追加されました。
中国で開催される第11回日中韓観光大臣会合を通じて、日中韓三国間の交流と協力を強化します。
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<参照>
観光庁:「令和6年度観光の状況」及び「令和7年度観光施策」(観光白書)について
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