ローカライズとは?意味や実施する際のポイント、活用事例まで紹介

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海外展開やインバウンド対応を進める中で、よく耳にする「ローカライズ」という言葉。翻訳との違いや、具体的に何を行えばよいのか、はっきりとイメージできない方も多いかもしれません。

本記事では、ローカライズの基本的な考え方から、実践におけるポイント、業界別の具体的な事例、注意すべき点までをわかりやすく紹介します。

ぜひ、自社のマーケティング戦略やサービス展開の参考にしてください。

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ローカライズとは?

ローカライズとは、ある国や地域で開発されたサービスやコンテンツを、別の国や地域の利用者にとって使いやすく、親しみやすい形に調整・最適化することを指します。

具体的には、言語表現を現地仕様に置き換えるだけでなく、文化や習慣に配慮しながらデザインや表現を調整することも含まれます。

この言葉は、「local(地域)」と「-ize(〜化する)」を組み合わせたもので、「その地域に適した形にする」という意味を持ちます。現在では、IT業界や観光業をはじめ、さまざまな分野でローカライズの重要性が高まっています。

ローカライズと翻訳の違い

ローカライズと翻訳は、しばしば同一のものとして捉えられがちですが、両者には明確な違いがあります。

ローカライズとは、言語だけでなく、その国や地域の文化・習慣・使用環境なども考慮し、コンテンツを最適化する取り組みを指します。たとえば、MetaやAppleのアプリでは、言語設定をアラビア語に変更すると、画面内のボタン配置が日本語の場合と左右逆になることがあります。これは、アラビア語が右から左へ読む言語であることに配慮した設計です。

一方、翻訳は文章の意味を変えずに、ある言語から別の言語へ置き換えることを指します。両者には共通する要素もありますが、ローカライズの方がより包括的で、ユーザー体験全体を対象とした調整が行われる点が大きな違いです。

ローカライズとトランスクリエーションの違い

もうひとつ、ローカライズに近い意味で使われる言葉に「トランスクリエーション」があります。

これは、元の文章の意味や目的をくみ取りながら、伝える相手の文化や価値観に合わせて、大胆に表現をアレンジする手法です。特に、広告コピーやキャッチフレーズなど、直訳ではうまく伝わらないケースでよく使われます。原文の形にこだわらず、伝えたい効果を重視して書き換えるのが特徴です。

一方、ローカライズはそこまで大きく表現を変えず、文章の構成や意味をなるべく保ちながら、文化や使い方に合わせて調整するのが基本です。

関連記事:生成AI活用や多言語コンテンツ制作で、インバウンド対応を支援 博報堂プロダクツ「KOTOBATON(コトバトン)」提供開始 

ローカライズが必要な理由

ローカライズが必要とされる理由は、現地の人々にとって自然で親しみやすい形でサービスを届けるためです。

たとえば、慣用句を直訳しても意味が通じないことがありますし、映画のタイトルなども文化に合わせて工夫されます。

ディズニー映画「アナと雪の女王」の原題は「Frozen」ですが、日本ではそのままだと意味が伝わりづらいため、印象的で親しみやすい邦題がつけられました。もし直訳で「凍った」や「極寒の」とされていたら、あれほどヒットしなかったかもしれません。

また、言葉やデザインに違和感があると、ユーザーが途中で離れてしまうこともあります。ローカライズによって文化や価値観に合った表現に整えることで、より多くの人に受け入れられ、ビジネスの成果にもつながっていきます。

参考記事:ポッキーがフランスで「MIKADO」と呼ばれる理由:海外展開のネーミングに隠された工夫とリスクとは

ローカライズの対象一覧

ローカライズが求められる場面は、商品やサービスそのものにとどまらず、Webサイト、モバイルアプリケーション、広告など、多岐にわたります。

ここでは、実際にどのような要素がローカライズの対象となるのか、具体例を挙げながらご紹介いたします。

商品・サービス

商品やサービスを他国や地域に展開する際には、現地の言語への翻訳のみならず、文化的背景や価値観、さらには関連する法規制への対応が不可欠となります。

たとえば、商品名やパッケージ、色彩、デザインなどがそのまま使用された場合、現地の消費者に誤解を与えたり、場合によっては拒否感を抱かせたりする可能性もあります。

こうしたリスクを回避し、現地の人々に違和感なく自然に受け入れてもらうためには、ローカライズによって適切に調整を行うことが極めて重要です。

Webサイト

Webサイトのローカライズにおいては、単なる言語の翻訳にとどまらず、現地の文化や嗜好に適したデザインや構成の採用が重要です。

さらに、現地ユーザーに対して最適な検索結果を提供するためには、SEO(検索エンジン最適化)への対応も不可欠です。

具体的なSEO対策としては、Webサイトにおけるキーワードの選定やメタデータの設定を、対象となる市場に合わせてローカライズすることが求められます。

特に、そのページがどの言語でどの地域向けかを指定するhreflangタグの設定は、多言語対応サイトにおいて不可欠な要素であり、ユーザーが使用する言語に応じたページを検索結果に表示させる役割を果たします。

アプリケーション

アプリのローカライズにおいては、開発段階から多言語および多地域への展開を見据えた「国際化」への対応と、アプリストアにおける検索性やダウンロード促進を目的とした「ASO(アプリストア最適化)」の双方が重要な要素となります。

具体的には、日付や通貨の表記形式、文字の表示方向といった地域固有の仕様に対応するとともに、アプリ名、説明文、アイコン、スクリーンショットなどの要素を、各市場の文化やユーザーの嗜好に応じて最適化する必要があります。

特にゲームアプリにおいては、キャラクターの外見や表現内容が文化的感受性に配慮したものであるかを十分に検討することが求められます。

広告

広告のローカライズにおいては、表現方法や媒体の選定に地域ごとの文化的背景や習慣への配慮が不可欠です。動画広告では、吹き替えや字幕の対応に加え、宗教的・文化的なタブーを避けた演出が求められます。

また、SNS広告については、国や地域によって利用されるプラットフォームや投稿の嗜好が異なるため、適切な媒体選択と運用方法の検討が重要です。複数言語が使用される国においては、一つの投稿に複数言語を併記するなど、柔軟な対応が効果的とされています。

いずれの場合も、現地のユーザーに違和感なく受け入れられる内容にすることが大切です。

参考記事:同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察

マニュアル・ドキュメント

マニュアルやドキュメントをローカライズする際は、誰にでも伝わる表現と、用語の統一が大切です。

たとえば、用いる言葉や言い回しにばらつきがあると、読者の混乱を招くおそれがあります。そこで、スタイルガイドや用語集の活用が効果的です。よく使用される専門用語や手順の表現をあらかじめ統一しておくことで、内容の分かりやすさと一貫性を保つことが可能となります。

また、操作手順を図で示す場合は、UI(ユーザーインターフェース)の表記も現地仕様に合わせて適切に調整しましょう。

ローカライズを行う際のポイント

ローカライズを効果的に進めるためには、単に言語を置き換えるだけでなく、対象となる文化や利用者の行動様式に応じた工夫が不可欠です。

ターゲットを絞って行う

ローカライズでは、国や地域だけでなく「誰に届けたいか」を明確にすることが大切です。

同じ国でも、年齢や性別、関心によって響く表現は大きく異なります。たとえば若年層と高齢者では、好まれる言い回しや使い方が変わってきます。

そのため、伝えたい対象を具体的に設定し、対象に適した言葉遣いや表現、視覚的な見せ方を選択することが求められます。

ターゲット地域の文化に配慮する

翻訳だけでなく、現地の文化や宗教、価値観に配慮することもローカライズの重要な要素です。

たとえば比喩表現は、直訳では伝わりづらいため、その国でよく使われる例えに置き換える必要があります。宗教上タブーとされる表現を避けるなど、文化的な背景に合わせた丁寧な対応が求められます。

言語だけではなく「表記方法」も最適化する

言語を変えるだけでなく、見せ方や表記方法も地域ごとの感覚に合わせて調整することが大切です。

たとえば、アメリカでは画像や見出しを大きく配置し、余白を多く取ったシンプルなレイアウトが好まれる傾向があります。一方で日本においては、一画面に多くの情報を丁寧に整理して伝えるケースが多いと言えるでしょう。

このような感覚の違いを十分に理解し、現地のユーザーに自然に受け入れられるデザインへと最適化することが求められます。

地域にあわせた検索対策を行う

Webサイトを現地向けにローカライズする際は、検索対策(SEO)も忘れてはいけません。国や地域によって、よく使われる検索キーワードや表現が異なるため、対象地域ごとに最適なキーワードを調査・選定することが重要です。

現地の言葉で検索されやすい語句をページタイトルや見出し、説明文などに適切に盛り込むことで、検索結果に表示されやすくなり、アクセス数の向上が期待できます。

ローカライズを行う際の注意点

ローカライズを実施する際の注意点は、文化や言語への配慮にとどまりません。ここでは、予期せぬリスクを回避するために押さえておきたい注意事項と対策について紹介します。

現地の法律・法規に従う

海外展開においては、思わぬ場面で法令違反となるケースが少なくありません。

たとえば、日本では問題とならない表現であっても、国によっては広告規制や宗教的理由により禁止されている場合があります。知らずに掲載した結果、販売停止や罰則など重大なトラブルに発展する可能性も考えられます。

したがって、各国の法規制を事前に十分調査し、現地の法律に精通した専門家やパートナーと連携した体制を整えることが重要です。

ネイティブチェックも必須で行う

翻訳だけで満足せず、現地ネイティブによるチェックを入れることで、伝わり方のズレや不自然な表現を防ぐことができます。たとえば直訳では伝わりにくい言い回しや、文法上の違和感などは、現地の人でなければ気づけないこともあります。

ネイティブによるレビュー体制を設け、重要なコンテンツほど複数人でのチェックを徹底しましょう。

ローカライズの事例

実際にグローバルに展開している企業の多くが、成功の鍵としてローカライズを取り入れています。ここでは、代表的な3社の事例を紹介します。

マクドナルド

世界中で展開するマクドナルドは、地域に合わせたメニュー開発を行う代表的な企業です。

たとえば日本では「てりやきバーガー」や「月見バーガー」など、季節や文化に寄り添った限定メニューを展開しています。また、インドでは宗教的背景を考慮し、牛肉や豚肉を使用せず、鶏肉や魚、羊肉のみを使ったメニュー構成になっています。

このように各地域の食文化に寄り添う姿勢が、ローカライズの成功につながっています。

スズキ

自動車メーカーのスズキが、アジア各国で高いシェアを誇る背景には、徹底したローカライズ戦略があります。

たとえばインド市場においては、整備が十分でない道路環境に対応するため、最低地上高を高めた車両設計を採用するなど、現地の環境に即した開発を行っています。

さらに、税制優遇に合わせたコンパクトカーの展開や、現地生産によるコスト・流通の最適化など、地域ごとのニーズに合わせたモノづくりを行っています。

カルピス

乳酸菌飲料「カルピス」は、英語圏での販売にあたり名称を「CALPICO」に変更しています。これは「CALPIS」という英語の発音が「cow piss(牛の尿)」に聞こえる恐れがあったためで、ネーミングによる誤解や印象悪化を防ぐための工夫です。

パッケージ表記も含めたこの対応は、言語の違いによるブランドイメージへの影響を考慮したローカライズの好例といえます。

参考記事:外国人が驚く日本での「ケンタッキー」のポジション|クリスマスの定番・世界各国でローカライズ・サイドメニューにもバリエーション

ローカライズは、「整えて、伝える」手法

ローカライズは、単に言葉を置き換えるのではなく、「相手に伝わる形」に整えるための大切なプロセスです。

製品やサービスを現地の人に自然に受け入れてもらうためには、文化や法律への配慮、表現方法の工夫が欠かせません。丁寧なローカライズ対応が、信頼の獲得やビジネス成果につながります。

インバウンド対策や海外展開を成功させるためにも、ローカライズの意義を正しく理解し、自社に合った取り組みを進めていきましょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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