令和7年度(2025年度)の補正予算が11月28日に閣議決定されました。
観光庁関係では225億円が計上され、インバウンドの地方誘客に向けた取り組みやオーバーツーリズム対策などが盛り込まれました。
本記事では、観光庁の補正予算について解説します。
- 観光庁、2025年度補正予算で225億円を計上
- オーバーツーリズム対策を推進、観光交通を確保(67.7億円)
- 地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策(8.8億円)
- 違法な民泊サービスの解消に向けた調査(4,000万円)
- 観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進(49億円)
- 観光地・観光産業における省力化・省人化推進(25.5億円)
- 外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行支援(1億円)
- 全国の観光地・観光産業における観光DX推進(12億円)
- 地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり(12億円)
- 地域の医療・観光資源を活用した訪日客受け入れ推進のための調査(1億円)
- インバウンドの地方展開に向けたインフラの観光資源化(1.11億円)
目次
観光庁、2025年度補正予算で225億円を計上
令和7年度(2025年度)の観光庁関係補正予算は、総額225億円となりました。
主要事業として、「オーバーツーリズム対策等観光交通の確保」や「地方誘客促進に向けたインバウンドの安全・安心対策」、「違法な民泊サービスの解消」、「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進」、「ユニバーサルツーリズムの促進に向けた環境整備」、「観光地・観光産業における省力化・省人化等の推進」が挙げられています。

以下では、インバウンドに関わりの深いトピックスを解説します。
オーバーツーリズム対策を推進、観光交通を確保(67.7億円)
「オーバーツーリズム対策等観光交通確保事業」の要求額は、67億7,000万円となりました。
公共交通機関等におけるオーバーツーリズムを未然防止・抑制する上で、受け入れ環境の整備や地方部における観光交通の拡充が急務となっています。
そこで、地域住民と観光客の移動観光の整備を実施し、インバウンド対応型タクシーやキャッシュレス決済の普及などを支援します。また、観光地での二次交通を確保するため、公共ライドシェアの導入などに取り組むとしています。
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地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策(8.8億円)
「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」の要求額は、8億8,000万円となりました。
災害発生時、訪日客が旅行中に災害に遭うケースや医療機関を受診するケースの増加が見込まれます。さらなる地方誘客促進に向けて、訪日客が日本各地へ安全・安心して訪れるための旅行観光整備が必要となっています。
本事業では、各地域における観光客に対する災害時の対応方針等の計画・策定の支援を実施。また、観光施設等における非常用電源装置や災害用ドローン、熱中症対策設備の整備のほか、最近急増しているクマ出没情報などを多言語で正確に情報発信するための環境整備等を支援します。
ほかにも、訪日客に向けた医療保険加入促進を行うほか、キャッシュレス決済の導入・医療機関内の多言語化といった、医療機関の訪日外国人患者の受け入れ機能を強化する取り組みを支援するとしています。
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違法な民泊サービスの解消に向けた調査(4,000万円)
「違法な民泊サービスの解消に向けた調査」の要求額は、4,000万円となりました。
住宅宿泊事業法の届出といった適正な手続きを行なっていない違法な民泊を解消するにあたって、違法な民泊サービスの事業を成立しにくくすることが求められています。
一方で、住宅宿泊仲介業者が物件の適法性を確認する手段は限られています。このような課題に対応するため、観光庁の「民泊制度運営システム」への簡易宿所等の情報の組み込みと、仲介サイトとのデータ連携の実現に向けて、旅館業等の管理・監督の実態を把握する必要があります。
民泊制度運営システムを改修のイメージとしては、住宅宿泊事業・特区民泊・簡易宿所を同システム上で把握できるようにするほか、仲介サイトやOTAに掲載されている情報を国・自治体の登録データと照合し、違法民泊が見つかった際には各事業者がサイトから削除するものとなっています。
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観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進(49億円)
「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」の要求額は、49億円となりました。
観光による経済効果を全国に波及させ、観光消費を拡大させるとともに、持続的な地方誘客によりオーバーツーリズムの解消につながるように、観光コンテンツの供給促進や観光の付加価値を高める人材の質向上が必要です。
そこで、多様な地域資源を活用した観光コンテンツの造成や、品質を高めた高単価な観光コンテンツ、地域産業への波及効果が期待できるガストロノミー分野の観光コンテンツを重点的に支援します。
また、観光コンテンツとガイドの一体的な質の向上に向け、コンテンツに応じたスキル・研修設計、ガイドの評価制度と報酬体系のあり方などについて調査を実施します。
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観光地・観光産業における省力化・省人化推進(25.5億円)
「観光地・観光産業における省力化・省人化等推進事業」の要求額は、25億5,000万円となりました。
観光産業は深刻な人手不足が課題であり、その解消が急務となっています。
観光庁では、観光地全体の効率化を促すため、セントラルキッチンなど共同設備の導入・改修を支援します。また、省力化に向けた自動チェックイン機などの導入の支援を行います。
また深刻な人手不足を解消するために、優良事例の調査・横展開および待遇改善の取り組みについて検討を行うとしています。
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外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行支援(1億円)
「外国人向け消費税免税制度の『リファンド方式』移行支援事業等」の要求額は、1億円となりました。
2026年11月より、訪日外国人旅行者向け免税制度が「リファンド方式」へ移行されます。
観光庁ではそれに伴い、制度改正による混乱を未然に防ぐため、メディアでの案内や各空海港での周知を行います。また、リファンド方式へ円滑に移行し、地方においてさらなる消費拡大を図るため、免税に係る面的な取り組みを支援するとしています。
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全国の観光地・観光産業における観光DX推進(12億円)
「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」の要求額は、12億円となりました。
インバウンド需要が増加傾向にあるなかで、DXによる観光コンテンツの販路拡大や観光産業の課題解決が求められています。
そこで、観光地におけるコンテンツの販路拡大やマーケティング強化などの生産性向上を図るため、生成AIなどのデジタルツール導入を支援します。また、DX専門人材による伴走支援を実施し、持続可能な観光地域づくりに取り組んでいきます。
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地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり(12億円)
「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」の要求額は、12億円となりました。
「2030年までに訪日外国人消費額15兆円・消費単価25万円」という政府目標の早期達成に向けて、高付加価値旅行者の地方誘客強化が不可欠となっています。
そのため観光庁では、海外メディア掲載による高付加価値旅行市場への認知度向上などによる販路形成の強化や販売実施、人材確保・育成などを含めた受け入れ環境の整備を行います。
また、事業終了後の自走化を見据え、モデル観光地においてマスタープランに基づく取り組みを加速化し、高付加価値旅行者の誘客実績の積み上げを図るとしています。
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地域の医療・観光資源を活用した訪日客受け入れ推進のための調査(1億円)
「地域の医療・観光資源を活用した訪日外国人観光客受入れ推進のための調査・実証事業」の要求額は、1億円となりました。
これまで観光庁では、地域医療への提供体制への影響を考慮しつつ、地域の医療と観光資源を組み合わせた滞在プランの造成・実証などを行なってきました。
本事業では、医療インバウンド需要の拡大に向けて、日本の医療技術と地域固有の観光資源を組み合わせた滞在プランの造成等の推進を行います。また、その取り組みを後押しするため、観光から医療まで一貫して通訳できる人材を地域で養成するための調査を通じて、訪日客の受け入れ体制を強化していくとしています。
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インバウンドの地方展開に向けたインフラの観光資源化(1.11億円)
「インバウンドの地方展開に向けたインフラの観光資源化」の要求額は、1億1,100万円となりました。
ダムや橋など、土木技術等を観光資源として活用するインフラツーリズムは、地方での滞在や消費拡大を促すとして注目されています。一方で、観光客受け入れのための環境整備や観光コンテンツの造成が不足しているという課題があります。
そのため、コンテンツ造成のほかに、多言語化や新コンテンツの導入といった既存施設のアップデート、Wi-Fiの設置、多言語看板や多言語でのパンフレット作成などの受け入れ環境整備を実施します。
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<参照>
観光庁:令和7年度観光庁関係補正予算
【インバウンド情報まとめ 2025年11月後編】中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは? ほか

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