日本旅行業協会(JATA)は9月、第5回「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」のアンケート分析結果を発表しました。
本調査は、2026年6月~8月にかけて実施されたもので、インバウンド受入に関する最新動向や課題、政府計画への認知などについて聞いています。
前回調査:第4回意識調査(2025年7月)
インバウンド受入の最新動向
本調査は、国内の観光関連事業者や自治体などを対象に行われます。2026年6~8月に実施された5回目の調査では、1,096件の回答が集まりました。
前回調査とほぼ同数の回答が得られ、宿泊事業者やDMO、観光施設からの回答が増えました。また、新たに外国語ガイドのカテゴリーが追加されました。
インバウンド未対応事業者のうち、受入予定なしの割合が増加
まず、インバウンド受入延べ人数に関する質問に、「取扱なし」と答えた割合は、全体の11%(前回比10ポイント減)でした。
そのうち、今後の受入意向について、「受け入れたいと思う」との回答が15%、「受け入れたいと思っているが、課題があると感じている」が昨年と同じ22%となり、受け入れに前向きな姿勢を示した事業者の割合は前回調査から4ポイント増加しました。
また、「今後も受入の予定はない」との回答は、48%でした。前回調査では19%であったことから考えると大幅な増加です。
一方、母数となる「取扱なし」と回答した割合が、前回調査から10ポイント減少している点を踏まえると、受け入れに意欲的な事業者の多くはすでにインバウンド対応に参入済みで、結果として「今後も受入の予定はない」との回答が増加したと推測されます。
インバウンドを取り扱っていない理由としては、「人手不足・人材不足」が最も多く挙げられ、前回より5ポイント増加しています。加えて、「多言語対応のインフラが不十分」、「インバウンド対策への投資資金が不十分」といった回答の割合も増加しています。

インバウンド受入は減速傾向
観光客の受入状況については、全体(国内旅行含む)では、「2025年とほぼ同水準」の回答が最多でした。一方、インバウンドでは、前年と同等、または減少したとする回答が昨年の回答を上回り、増加したとの回答は減少しました。また、この傾向は売上でもほぼ同様です。
このことから、インバウンド受入が昨年と比べて減速傾向にある様子がうかがえます。一方で、前年比110%以上と回答した比率は、全体では28%であるのに対し、インバウンドでは33%となっており、観光全体を超える伸び率を示しています。

春・秋における訪日需要の集中が加速
インバウンド観光客が多い時期は、第4回調査に引き続き、「春季(桜のシーズン・イースター:54%)」と「秋季(紅葉シーズン:53%)」が多くなっています。前回調査と比べるとその比率は上昇していることから、春季・秋季への集中が顕著になっていることがうかがえます。
また、自由記述でインバウンド客が多い(多くなると想定される)時期を尋ねたところ、地域イベント(花火・まつりなど)・スポーツ大会開催時や、冬のライトアップ実施時期、海外のスクールホリデー時期などといった回答が挙げられました。

旅行スタイルは多様化が進む
インバウンド観光客の旅行スタイルは、昨年と同じく個人レジャーが最も多く、次点が団体レジャーでした。団体ビジネスやMICE、学生団体・教育旅行、個人ビジネス、スポーツ団体はいずれも前回を上回っています。順位に大きな変化はなく、多様な旅行スタイルの受入が進んでいることがわかりました。

最大の市場は「台湾」だが、重点市場として国・地域を問わない傾向
インバウンドの受入が多い市場は、前回調査に引き続き「台湾」が最も多く挙げられ、51%を占めました。
台湾に続く市場は、北米(42%)、欧州(41%)、韓国(28%)、オセアニア・東南アジア(24%)でした。前回調査と比べると、これらの市場はいずれも増加した一方で、中国は17%(前回調査時は37%)と大幅に減少しています。
また将来においては、欧州や北米などの新規市場開拓の傾向が見られたものの、「特にない(国・地域を問わない)」が39%と、前回に引き続き最も多くなりました。

予約チャネルの多様化進む
インバウンドの予約チャネルは、日本・海外の旅行会社の比率がそれぞれ前回調査よりも高くなっています。また、前回よりも各項目の選択率が伸びており、多様なチャネル経由での予約が進んでいるものと推測しています。
特に、宿泊事業者では予約の70%以上が海外OTAを経由しており、これは他の事業者と比較して非常に高い数値となっています。

オーバーツーリズムへの関心・危機意識が高い
インバウンド受入における現在・将来の課題として、最も多く挙げられたのは「人手不足や人材不足」でした。
また、「オーバーツーリズム」が36%となっており、この結果から受入側にとっても危機意識が高い課題であることがわかります。
加えて、為替変動による影響も、現在が10%なのに対し将来は17%と、今後への懸念が強まっていることがわかりました。

最も課題意識が高かった人材不足の最大の要因・課題としては、「就職希望者が少ない」が挙げられ、前回調査から5ポイント増の38%でした。
また、インバウンド受入の経験者不足・育成する余裕がないといった回答が前回から上昇しました。一方、待遇・労働環境といった項目は減少しています。これらをふまえ、調査報告書では専門性の高い人材が不足していると推測されています。
人材不足に関して職種別にみると、「営業・販売」が46%と最も不足していることがわかりました。特に、旅行会社は66%と突出しています。また、輸送事業者の92%はドライバー・バスガイドが不足していると答え、前回調査より減少しているものの、依然として大きな課題だといえます。

注目コンテンツ「高付加価値旅行」に加え新項目「教育旅行」も高関心
「新たに需要が生まれた、もしくは力を入れている」旅行・観光関連コンテンツでは、「高付加価値旅行(38%)」が、前回調査と同様に最も多く選ばれました。前回調査では23%であったのに対し、15ポイント上昇しています。
また、今回新たに選択肢に加わった「教育旅行」は17%で、「特になし」を除く全体で4番目の多さとなりました。各事業者が関心を寄せる様子がうかがえます。
関連記事:高付加価値旅行とは?今こそ知りたい「インバウンド売上UP」戦略、徹底解説

第5次観光立国推進計画について
認知度34%、一層の周知が必要
第5次観光立国推進計画への認知度は34%にとどまっており、観光関連事業者へ一層の周知が必要だと考えられます。
一方、事業者別に見てみると、自治体・観光協会・DMOの認知度は70%を超えており、非常に高い認知度となりました。

インバウンド目標、誘客と生活の質の両立が最重要
同計画では、11のインバウンド目標が掲げられました。そのうち7つから重要だと思うものを問いかけたところ、「観光客の戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立に取り組む地域数」が35%で最も高い数値となりました。
「訪日外国人旅行者数」は全体で見ると5番目となり、報告書では量よりも質を求める傾向が高いと推測されています。

計画への意見は約200件 地方分散・量から質への転換など
報告書では、大都市への集中から地方への分散、量から質への転換、多言語サイネージの充実など、同計画へ寄せられた200件近くの意見についても共有されました。

国際園芸博覧会へ向けた取組状況・影響
国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)への取り組みについて、検討中・検討予定と答えた割合は、31%でした。
事業者の拠点が関東にある場合、41%が検討中・予定であるのに対し、関東以外の場合は22%と差が出ています。
また、「インバウンド受入人数の増加」が最も期待されている一方で、「事業への効果はない・限定的である」との回答が36%となりました。

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<参照>
日本旅行業協会(JATA):インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第5回アンケート分析結果報告
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