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インバウンド事業者としては、普段はインバウンド消費をいかに増やすか?いかに日本を海外にプロモーションしていくか?とうことに注目しがちですが、少々視点を変えて、インバウンド需要が雇用へ与える影響とはどのようなものなのかを見ていきましょう。みずほ総合研究所の調査によると「インバウンド需要は約27万人の雇用誘発効果がある」とのこと。詳しく見ていきましょう。

インバウンド需要が足元の雇用を下支え

日銀短観の雇用人員判断DI(※雇用人員の過不足などの各種判断を指数化したもの)をみると、

  • 高齢化が進んでいることや
  • 震災対応・政策方針により公共投資が増加していること

から、医療・福祉を含む対個人サービス業や建設業などで労働需給のひっ迫感が強まっています。さらに、足元ではそれらの業種に加えて、小売業や宿泊・飲食サービス業などでも人手不足が鮮明となっていることが伺えます。

日本国内の雇用人員判断DI みずほ銀行より

日本国内の雇用人員判断DI みずほ銀行より

内需が縮小傾向になっているにもかかわらず、小売業や宿泊・飲食サービス業において人手不足感が強まっている一つの要因として、インバウンド需要が大幅に増加していることが挙げられます。

年々拡大するインバウンド市場 2016年には2400万人の訪日客、3.7兆円のインバウンド消費

2015年の訪日外国人観光客数は約1,974万人となり、2020年に2,000万人としていた政府目標をほぼ達成しました。さらには2016年には当初目標を上回る2,400万人強を達成し、訪日外国人観光客による日本国内でのインバウンド消費総額は、2015年には約3.5兆円、2016年には約3.7兆円と、日本経済にとっては貴重なものとなっています。

増大したインバウンド消費の消費先TOP3は「買物代」「宿泊料金」「飲食費」

インバウンド消費 品目別シェア みずほ銀行より

インバウンド消費 品目別シェア(2015年) みずほ銀行より

インバウンド消費の消費先は、昨今のコト消費を反映して、「宿泊料金」や「飲食費」が増大。他、爆買いが失速したと言われつつも「買い物代」は未だシェア率1位となっており、とりわけ小売業や宿泊・飲食サービス業にとってインバウンド需要は追い風であると言えます。それゆえ、小売業や宿泊・飲食サービス業において雇用需要も増加し、人手不足傾向にあるという格好になっています。

 

インバウンド需要による雇用創出効果 2016年でおよそ63万人

通常、ある産業で需要が増えると、部品の消費や関連サービスの利用を通じて、その産業だけでなく、他の産業にも恩恵が波及します。インバウンド需要によって発生した、このような波及効果まで含めた影響を捉えるため、みずほ総合研究所の調査では、産業連関分析を用いて試算を行っています。

インバウンド需要による経済・雇用創出効果(産業連関分析) みずほ銀行より

インバウンド需要による経済・雇用創出効果(産業連関分析) みずほ銀行より

これによると、2015年のインバウンド需要・インバウンド消費による経済効果は、

  • 生産誘発効果:6.8兆円
  • 付加価値誘発効果:3.8兆円
  • 雇用創出効果:63万人

となります。そのうち、2014年と比較した追加的な押し上げ効果、つまり「伸び」の部分は、

  • 生産誘発効果:2.8兆円
  • 付加価値誘発効果:1.6兆円
  • 雇用創出効果:26.7万人

に及ぶ計算となります。雇用創出効果の増加分を業種別にみると、恩恵を一番受けたのは小売業の12.9万人、次いで宿泊・飲食サービス業の3.9万人となっています。

雇用創出の立役者インバウンド消費、一方では平均賃金を押し下げている!?

産業別名目賃金 みずほ銀行より

産業別名目賃金 みずほ銀行より

インバウンド消費の増加は、雇用にプラスの効果をもたらす反面、産業全体でみた1人あたり平均賃金の抑制要因ともなります

インバウンドの恩恵を受ける小売業や宿泊・飲食サービス業などでは、そもそも非正規雇用の割合が高く、他の業種に比べて賃金が低い傾向にあります。そのため、雇用が増大すればするほど、アルバイトなどの賃金の低い非正規雇用の割合が増加し、したがって平均賃金が下がってしまう、というわけです。

雇用堅調の一方で、賃金の伸び悩みが指摘されていますが、その背景にはインバウンド需要の増加も一役買っているとみていいでしょう。

 

まとめ:今後は多様化するインバウンド需要を上手く取り込むことも必要

2015年から急激に増加しはじめたインバウンド消費は、今後の雇用を下支えするとみられますが、これまで恩恵を受けてきた百貨店などでは訪日外国人観光客による売上の伸びが鈍化し始めているという声もあります。

今後の持続的な雇用の創出のためには、インバウンド需要の持続性もさることながら、その多様性に注目する必要があると言えるでしょう。

近年「モノ消費からコト消費へ」という文脈で良く語られるように、インバウンド消費は、電化製品や化粧品といった従来の「モノ」への支出から、文化体験や美容体験などサービスを体感する「コト」への支出へと裾野を広げつつあります。

旺盛なインバウンド需要を内需の活性化に結び付けるためには、こうした訪日外国人観光客の需要を的確に見極め、それを満たすサービスを提供していく工夫が求められています。

<参考>

 

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