2015年に流行語になった「爆買い」。訪日中国人観光客らによって、家電量販店やドラッグストアなどが潤ったと言われていますが、その一方で「この流れはじきに終わる」「すでに減速している」とする報道も少なくありませんでした。訪日外国人観光客のお金には限りがあり、買い物を目的とした旅行者数が減少すれば爆買いは無くなる。そのような予測はいたって理解しやすいものですが、実際の動向に関してはよく分からず、いまいちピンと来なかった人も多いのではないでしょうか。
みずほ総合研究所は6月23日、日本におけるインバウンド消費の動向を、データをもとに解説する「インバウンド消費減速の背景と今後の展望」を発表しました。今回は、このレポートを紹介し、インバウンドビジネスの実態をご紹介します。
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2015年後半から買物代の伸び率が大きく減少
「インバウンド消費減速の背景と今後の展望」によると、2016年1~3月までの訪日外国人観光客の消費額の伸び率は大幅に低下。ひとり当たりの消費額は12四半期ぶりとなる前年比マイナスとなりました。
消費額全体では前年比で約130%の増加率を維持しているものの、2015年に記録した約180%の増加率と比較すると、やはり減速していると言わざるを得ません。
ひとり当たりの消費額をサービス、買物代に分けたグラフを見てみると、買物代の伸び率が2015年の半ばをピークに、急速に低下していることが分かります。
特に買物に多額を費やす傾向のある訪日中国人観光客、韓国や台湾、香港、シンガポールなど新興工業経済地域(NIEs)の訪日外国人観光客の変化が大きいのですが、これらの訪日外国人観光客は旅行者数が多いため、インバウンド消費額全体にも大きく影響しています。なお、買物代とは対照的に、サービスの消費額は安定しており、大きな変化が見られません。
原因は円高、ビザ緩和、免税品拡大政策による効果の弱まり
レポートではデータを元に、買物代の伸び率低下の原因を調査。その結果、以下の3つの要素を取り上げています。それぞれ詳細に見ていきますが、円安、免税品拡大、ビザ緩和がインバウンド消費額を押し上げていたものの、2015年後半から効果が薄れてしまったというのが実情のようです。
- 円高による割高感
- 免税品拡大による効果の一巡
- 訪日中国人観光客に対するビザの緩和効果の弱まり
円高による割高感
2015年半ばまで、中国、新興工業経済地域の実質為替レートは下落傾向にあり、円安を維持していました。しかし、2016年1~3月にはこれらすべての地域で円高になり、割高感が高まった可能性があります。
免税品拡大による効果の一巡
消費税が免税されたとしても、同じ商品を繰り返し購入する訪日外国人観光客は少ないでしょう。目新しさも次第になくなっていきます。免税対象商品の拡大は2014年10月から行われ、インバウンド消費額の増加に貢献してきましたが、効果が薄まってきているようです。
訪日中国人観光客に対するビザの緩和効果の終了
2015年1月、日本政府は訪日中国人観光客に対するビザの緩和を実施。「相当の高所得を有する者とその家族」などを対象としていたため、ひとり当たりの買物代が大きく増加しました。しかし、約1年でこの効果は薄まってしまったようです。
今後の動向:買物代とは別の要因で変化するサービス消費額の増大を狙いたい
今後、インバウンド消費額はどのように推移するのでしょうか。
いくつかの理由から、買物代を増加させる方向で検討するのは困難だと思われます。免税品の拡大やビザの緩和などは引き続き行われていますが、今後も2014~2015年の施策のように大きな成果をもたらすことができるとは限りません。そもそもこれらの施策は無限に行えるわけではなく、いずれ打ち止めになります。
また、為替レートの動向には海外の動向、事件が影響してくるため、円安を維持、予測することは簡単ではありません。EUに残留すると思われていたイギリスの離脱が決定したことで、急激な円高が起こったことは記憶に新しいでしょう。
その一方で、サービスに対する消費額は為替レートや政策による影響が小さいことが分かっています。それ以上に、観光資源のブランド化などが効果を発揮するようです。日本のインバウンドビジネスの今後を正確に予測することは難しいものの、おそらく魅力ある観光地づくりができるかどうかが焦点になるのではないでしょうか。
まとめ:買物頼みのインバウンド消費には限界がある
2015年後半から訪日外国人観光客の消費額の伸び率は大幅に低下しています。円安、免税品拡大、ビザ緩和などが消費額を押し上げていたものの、それらの効果が薄まってしまったのが原因だと思われます。その一方で、サービスに対する消費額には大きな変化が見られず、買物代とは別の要因で多寡が決定していると思われます。
今後も買物代を増加させるための施策を行う必要がありますが、それだけに期待し続けることはできません。爆買いはインバウンド消費の起爆剤として一定の役割を果たしたと評価できるものの、将来的にはサービス需要の増加も欠かせません。
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