昨日10月13日、タイの国王「プミポン国王」が88歳で死去しました。現地時間午後3時52分(日本時間午後5時52分)に病院で息を引き取り、タイの国民は悲しみに包まれています。1964年に王位を継承し、在位期間は世界最長。死去のニュースは世界中に伝えられ、各国の首脳や国王などから弔意が伝えられています。
今回は、タイの国民に愛されたプミポン国王と、その死去によるインバウンドビジネスへの影響を考えてみます。
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プミポン国王とは?
プミポン国王の本名は「ラーマ9世(タイ語: รัชกาลที่ ๙)」です。通称が「プーミポン アドゥンラヤデート(タイ語: ภูมิพลอดุลยเดช)」で、日本語では長母音を省略され「プミポン国王」と呼ばれています。
国王としての在位は1946年からで、70年間もの間タイの国王として君臨しており、在位期間は世界最長と言われています。
国王とは言っても、タイの政治体制は立憲君主制であるため、国王が国家元首であるものの政治的実権はありません。基本的には政治的実権をもっている、つまり国政の最高責任者となるのは首相です。
しかしながら、直接的な政治への関与はしないものの、実情はかなりの権威を持っています。
プミポン国王の政治力の象徴「暗黒の5月事件」
プミポン国王の政治力を象徴する事件が1992年の「暗黒の5月事件」です。この事件は、クーデターを起こした軍部と、民主化を望む国民の抗議デモが衝突したものであり、300名以上もの死者がでました。これ以上の武力衝突を避けるべく、軍部リーダー スチンダー首相と、民主化運動グループリーダー チャムロンを叱責しました。
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「そんなことで国民のためになるか、双方ともいい加減にせよ」と説諭し、あわや内戦となるところだったこの騒乱を一夜にして沈静化させました。この騒動の鎮圧もあり、プミポン国王は国民から絶対的な信頼を寄せられることになります。
国民からの愛され方がすごい
プミポン国王はタイ国民から絶大な信頼を寄せられています。もちろん、刑法で「不敬罪」が制定されていることもありますが、それによる強制的な敬愛ではありません。
たとえば、プミポン国王の誕生日の12月5日には国中の人が黄色のものを身につけて誕生日を祝います。タイでは生まれた曜日ごとの「色」があり、プミポン国王は月曜日の生まれで誕生日カラーが黄色だからです。また、タイの国中のいたるところにプミポン国王の写真が飾られています。
また、言ってみればアイドル的な敬愛のされ方もしている一面もあります。日本のスポーツメーカー「アシックス」のブランドの「オニツカタイガー」はタイで非常に人気があります。その人気の火付け役になったのが、若かりし頃のプミポン国王陛下着用写真のSNS拡散と言われています。
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プミポン国王死去後の国民への影響
そのようなタイ国民から敬愛を寄せられるプミポン国王の死去のニュースで、タイ国民は悲しみにくれています。
バンコク北部にある大手商業施設「Central Plaza Ladprao」では、喪に服す意を示す黒い服を着用した人々が立ち止まっています。
これは、タイの国王の遺体が病院から王宮に搬送された模様を大きなモニターで放送していたためであり、タイ国民は追悼と敬愛の意を込めて、直立不動でその模様を見守っています。
SNS上でも哀悼の投稿があふれる
SNSでも喪に服している様子が見られます。Twitter上で、ハッシュタグ「#เรารักในหลวง(私達は国王を愛しています。)」で検索すると、それぞれのアカウントがアイコンを白黒にして喪に服していることが見られ、また画像検索をすると、国民が本当にプミポン国王を愛していたことがわかります。
有名アーティストのSNS公式アカウントや、大手ウェブサイトでも喪に服す
有名アーティストのフェイスブックアカウントも、喪に服すことを表すためにアイコンやヘッダー画像が変更されています。
最も人気のアルバムは売上枚数500万枚以上と言われる、タイで最も有名なポップ・ミュージック歌手 トンチャイ・メーキンタイ(タイ語: ธงไชย แมคอินไตย์)の公式Facebookページはアイコンとヘッダー画像を変更。白黒ベースで哀悼のメッセージを添えています。
また、タイの国民的大御所バンド(日本で言えばサザン・オールスターズ的な立ち位置)の Carabaoも、公式Facebookページで同様の変更をしています。
その他、タイで最大手の口コミサイト「Pantip」などのタイ国内大手ウェブサイトはもちろんのこと、タイ版Google「Google Thailand」も白黒デザインに変更し、やはり喪に服している模様。
インバウンドビジネスへの影響は?
それでは、以上のようにプミポン国王の訃報はインバウンドビジネスにおけるタイ市場に影響はあるのでしょうか。
「娯楽活動30日自粛」「経済活動継続」タイ首相演説
タイのプラユット首相は、プミポン国王の死去当日13日に、テレビ演説を行いました。その演説において、服喪に関しては政府機関などの公期間は30日間の半旗掲揚すること、公務員や国営企業職員は1年間服喪すること、そして一般国民は娯楽的な活動を30日間自粛するように求めました。
株式市場や貿易などの経済活動は止めないように求めたものの、基本的に1年間の服喪期間においては、経済活動の停滞が見越されています。特に、タイ首相が「娯楽活動は自粛」としたことと、国民の自発的な服喪により、娯楽に該当する観光業は影響が強い懸念があります。
もちろん、観光業とはタイ国内だけにかぎらないため、インバウンドにおいても相当の影響があることは避けられない情勢と言えます。
タイ向けFacebook広告は服喪期間中配信停止
訪日タイ人向けにFacebook広告を出稿している企業は、広告が配信がされなくなっていることに注意が必要です。
Facebookはタイ国王死去当日の13日、タイ向けの広告配信を停止したことを発表しました。Facebookによれば、タイ国王の死去をうけ、タイでの文化的習慣から広告は停止することを妥当と判断。
そして、
We don’t yet know the duration of the mourning period. We’ll keep you posted of any additional details as they become available.
とあるように、いつ再開になるかの目処は立っていない状況の模様です。また、Facebookが「文化的習慣から広告は呈することが妥当」と判断したように、他の広告配信サービスも停止する可能性が非常に高く、訪日タイ人向けのWEB集客は、しばらく難しい状況が続きそうです。
まとめ:訪日タイ人観光客はしばらく低調の可能性大
タイは現在10月の秋休みに入っており、旅行シーズンの真っ只中にありました。しかしながら、タイ国王死去のニュースがあり、30日間は完全に服喪・自粛モードに入るものと思われます。
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インバウンド市場
また、次の訪日タイ人観光客が増えるシーズンである12月はおろか、3月〜4月の最大旅行シーズン ソンクラーンの時期も訪日タイ人観光客の客足は鈍化する可能性が非常に高いと思われます。なぜなら、ソンクラーン中の旅行手配は、通常1月から2月頃に行われ、まだその頃では服喪ムードからの回復は難しいものと思われるためです。
そのため、2016年後期、および2017年のタイ市場はかなりの鈍化を見せるものと思われ、今からターゲットの変更などの対策を寝る必要があります。タイ人のFacebookやTwitterのアカウントを注視し、服喪ムードからの回復に注意しましょう。
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