国土交通省は平成28年(2016年)10月14日、観光振興をはじめとした地域活性化の促進を目的に、「高速バス&カーシェアリング社会実験」を開始したことを発表しました。
背景には、モーダルコネクトの強化について検討する「モーダルコネクト検討会」が平成28年(2016年)3月に設置され、議論が進められているという事情があります。耳慣れない表現ですが、いったいこれはどのようなことを目指しているのでしょうか。今回は、未来の訪日外国人観光客の移動の仕方に影響するかもしれない「モーダルコネクト」「高速バス&カーシェアリング社会実験」について分かりやすく解説していきます。
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モーダルコネクトの重要性とは:背景には人口減少、過疎化などの社会情勢の変化
あまり耳慣れないモーダルコネクトとは「鉄道やバス、歩行といった交通モード間の接続」を意味します。「モーダルコネクト検討会」はこれを強化することを目的としており、具体的に言えば以下のようなことに議論します。
高速道路上の高速バスの乗り換えをしやすくする
鉄道、高速バスの乗り継ぎをしやすくする
高速バスストップを有効活用する
バスを待つ環境を改善する
道の駅を路線バスの乗り継ぎ拠点として活用する
なぜ、このような取り組みが必要視されているのでしょうか。
原因としては少子高齢化、人口減少、過疎化をはじめとした日本の社会経済情勢の変化があげられます。便利な公共交通機関を作ろうにも、それを利用する人がいないのであれば、意味がありません。反対に、移動手段がない地域では生活することが難しく、人間が暮らすことはできません。こういった将来的に深刻化が予想される問題を解決することが目標で、当面はバスを中心に検討が進められ、中間取りまとめ発表が行われる予定です。
待ち時間で発生するタイムロスを減らす狙い
また、具体的にはモーダルコネクトが弱いとどのような不都合が起こるのでしょうか。高山駅(岐阜県高山市)を例にとって確認してみましょう。
東京から富山県を経由して高山駅に鉄道を利用して行く場合、北陸新幹線、JR高山本線を乗り継ぐ形になります。かつては東京-富山間の移動には約3時間かかりましたが、北陸新幹線の登場により約2時間に短縮されました。鉄道網の発達で、より行きやすくなったわけですね。
JR高山本線を使えば富山駅-高山駅間を約2時間かかり、単純計算なら東京から高山駅まで約4時間で移動できるという話になります。しかし、この時に忘れてはいけないのが、乗り継ぎの待ち時間。北陸新幹線からJR高山本線に乗り換える場合、およそ平均で1時間、最大で2時間待つ必要があり、この際は移動ができません。
そこで鉄道の代わりに利用できるのが、平成27年(2015年)末から運行開始した富山駅-高山駅間を約2時間半で走る高速バス。移動時間は多少多めにかかりますが、待ち時間を無くすために活用できれば、移動時間を30分~1時間半ほど減らすことができます。
東京都の山手線のように数分おきに車両がやってくるような路線では、このような問題について考える必要はないでしょう。しかし、人口の少ない地方部ではこのような運行スタイルは難しく、より快適な交通網を実現するには鉄道だけではなく、高速バスや路線バス、自動車、自転車……といったさまざまな移動方法を組み合わせて、効率化を図る必要があるのです。
高速バスとカーシェアリングは、なぜ相性がいいのか
今回の実証実験で使われるのは高速バスとカーシェアリング車両。高速バスの利用者が、パークアンドライド駐車場に配備された自動車を刊行などに利用することを想定しています。移動を効率化するための交通モードの組み合わせはさまざまに考えることができますが、なぜこの2つなのでしょうか。「モーダルコネクト検討会」で行われたタイムズ24の発表から理由を探ってみましょう。
日本でカーシェアリングが始まったのは、2000年冬ごろのこと。レンタカーに似たサービスですが、15分単位と短時間で借りられること、利用1時間~数日前に予約する人が多く、気軽に使えることなどのメリットがあります。また、車両は店舗ではなく駐車場に配置されるため、24時間使うことが可能です。鉄道とは異なり、高速バスでは深夜から走行し、朝早く目的地に到着する路線が多く見られ、この点でカーシェアリングと相性が良いようです。
訪日外国人観光客だと国際免許を取得するハードルが発生しますが、利用する場合は高速バスで移動し、その後、自分で自動車を運転して目的の観光地に行く形になります。鉄道の発達した大都市を中心に移動するゴールデンルートとは異なる旅行プランが実現しやすくなり、地方でもよりスムーズに移動できるようになるのではないでしょうか。
まとめ:交通モードをうまく組み合わせて、移動時間を最適化
国土交通省が「高速バス&カーシェアリング社会実験」を実施することを発表しました。24時間運行し、安価に利用できる高速バス、カーシェアリングサービスを組み合わせることで、目的の観光地までスムーズに移動できる仕組みづくりを模索します。実現すれば観光業を通じた地方活性化につながる可能性があり、今後の展開が期待されます。
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