観光庁、2026年版観光白書を公表 インバウンド増を踏まえ観光持続性に向けた取り組みや旅客税の使途を明記

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観光庁は7月10日、同日に閣議決定された「令和7年度観光の状況 令和8年度観光施策」(観光白書)を公表しました。

観光白書とは、観光立国推進基本法の規定に基づいて観光庁が毎年国会に報告しているもので、日本の観光の状況および観光立国の実現に向けて政府が講じた施策や、今年度実施予定の施策についてまとめられたものです。

今回の観光白書は、2026年3月に閣議決定した「観光立国推進基本計画(第5次)」の柱の一つである「観光地・観光産業の強靱化」に関連して、宿泊業の現状と課題や各地域の取組事例について紹介されたほか、7月より引き上げられた国際観光旅客税の使途などについても触れられています。

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インバウンドについての独立章は2つ 2026年版「観光白書」

今回発表された2026年版の「観光白書」は、以下のような構成となっています。

  • 第I部 観光の動向
    • 第1章 世界の観光の動向
    • 第2章 日本の観光の動向
    • 第3章 「働いてよし」の観光産業の実現に向けて~宿泊業の人材確保と生産性の向上~
  • 第II部 令和7年度に講じた施策
    • 第1章 持続可能な観光地域づくり
    • 第2章 地方を中心としたインバウンド誘客
    • 第3章 国内交流拡大
  • 第III部 令和8年度に講じようとする施策
    • 第1章 インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立
    • 第2章 国内交流・アウトバウンド拡大
    • 第3章 観光地・観光産業の強靱化
    • 第4章 国際観光旅客税について

第I部:国内外を取りまく観光の動向から「日本の現在地」を見る

第I部では、国内外を取りまく観光の動向から日本の現在地が示されました。

2024年外国人旅行者受入数は世界9位 市場の多様化が進む

世界観光機関(UN Tourism)が発表した2024年の「外国人旅行者受入数ランキング」によると、3,690万人を記録した日本は世界9位で、アジア1位でした。

最新の訪日外国人旅行者数(2025年年間)は前年比15.8%増の4,268万人、訪日外国人旅行消費額は前年比16.4%増の9兆4,549億円といずれも過去最高を記録。国籍・地域別内訳に目を向けると、2019年比で欧米豪の割合が増加するなど、国・地域の多様化が進む様子が見受けられます。

▲【第I部】日本の観光の動向(訪日外国人旅行者数):観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋
▲【第I部】日本の観光の動向(訪日外国人旅行者数):観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋
▲【第I部】日本の観光の動向(訪日外国人旅行消費額):観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋
▲【第I部】日本の観光の動向(訪日外国人旅行消費額):観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋

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テーマ章は宿泊業の人材確保と生産性向上にフォーカス

第I部第3章は「テーマ章」と称され、毎年題材を変えて観光にまつわる課題や打開策、国としての今後の方針が示されます。今年は「『働いてよし』の観光産業の実現に向けて~宿泊業の人材確保と生産性の向上~」というタイトルが掲げられました。

テーマ章では、下記の3節に分けて宿泊業の人材や生産性に関するデータや事例、提言などが記されています。

  • 第1節 宿泊業の人材および生産性の現状と課題
  • 第2節 宿泊業の生産性改善と人材確保に向けた取り組み
  • 第3節 「働いてよし」の観光産業の実現に向けて

第5次観光立国推進基本計画のなかでも、「観光立国の実現に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」として掲げられている「観光人材の確保」ですが、特に課題感が顕著だとされるのが宿泊業です。

インバウンドを中心としたさらなる観光客の誘客に向けて生産性・収益力向上が喫緊の課題となるなか、今回の観光白書では統計データやアンケート結果をもとに、宿泊業を取りまく課題が次のように記されました。

  • 人手不足
  • 賃金水準の低さ
  • 労働生産性の低さ
  • 年間休日日数の少なさ
  • 非正規雇用率の高さ
  • スキルアップへの支援のあり方
  • 有形・無形を問わない設備投資額の少なさ

宿泊業の労働生産性は全産業平均の約7割、給与水準は全産業平均の7割程度と他業種と比べて低く、欠員率や非正規雇用者数は全産業平均よりも高い状況が続いています。

政府は、国内における観光の持続性を保つため、収益性・生産性の向上や経営効率化、従業員の待遇改善などを通じた国内人材の担い手確保、観光DXや省力化に向けた設備投資の促進などに対して支援を実施するとまとめ、すでに各地域で行われている地域事例を紹介しています。

▲宿泊業の生産性改善と人材確保に向けた取組:観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋
▲宿泊業の生産性改善と人材確保に向けた取組:観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋

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第II部・第III部:新・観光立国推進基本計画で施策はどう変わる?

第II部では令和7年度に講じた施策、第III部では令和8年度に講じようとする施策が紹介されています。

今年度は、第5次観光立国推進基本計画で掲げられている3本の柱に基づいた下記の施策を推進すると示されました。

  • インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立
  • 国内交流・アウトバウンド拡大
  • 観光地・観光産業の強靱化
▲令和7年度に講じた施策・令和8年度に講じようとする施策:観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋
▲令和7年度に講じた施策・令和8年度に講じようとする施策:観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」より抜粋

「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客」「国内交流拡大」が掲げられていた前回の観光白書と比較すると、住民生活の質の確保について言及されている点がもっとも大きな違いとなっています。

これまでもオーバーツーリズムの未然防止・抑制や混雑・マナー対策については触れられていましたが、今回の観光白書では第5次観光立国推進基本計画の流れをくみ、「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」として独立。大きく3つの節に分けて前面に押し出されました。

  • 第1節 混雑・マナー違反などの個別課題への対応
  • 第2節 地方誘客の推進による需要分散
  • 第3節 国際相互交流の促進

混雑・マナー違反対策を具体化 富士山の課題対策も明記

第1節では、さらに細分化して下記のような項目が挙げられています。

  • 過度の混雑対策:
    • 観光客が集中する地域の受入環境の充実(パークアンドライドの実施など)
    • 乗降時や車内などの混雑緩和(手ぶら観光の推進など)
    • 需要に応じた入域管理や予約制の導入(地域や観光施設での入場管理など)
  • マナー違反対策:温泉の入浴方法や公共交通機関でのマナーといった、日本の文化や習慣についての情報発信を国から率先して行うなど
  • その他のインバウンドの増加に伴う対応:各種民泊の適切な運営確保、外国人患者受入体制の充実および医療費不払の防止など
  • 地域一体となった持続可能な観光地域づくりの推進:地域住民と協働した観光振興や国民理解の増進など

ここでは、インバウンドを含む観光需要が増す富士山の課題対策について改めて言及されました。政府は「富士山における適正利用推進協議会」へ引き続き参画することで、対策を推進すると示しています。

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地方誘客に欠かせない交通ネットワークの機能強化にも言及

第2節では、地方誘客を進めるための体制整備や観光コンテンツの充実化に向けた施策が記載され、4月に日本政府観光局JNTO)が発表した新たな訪日マーケティング戦略とも連動する「欧米豪市場など新規訪日層の開拓」「アジア市場などのリピーター層の再訪日意欲喚起」といった項目などについて言及されています。

なお、前回の観光白書では「交通機関の整備・外国人対応」として記されていた項目が、今回は「地方部への交通ネットワークの機能強化」と、地方誘客によりフォーカスする内容へと変更されています。

この項目では、インバウンドを含めた地方への流れの創出、地方空港も含む全国の空港での戦略的かつ積極的なオープンスカイ(航空自由化)の推進に加え、7月に引き上げられた国際観光旅客税の活用も含めた空港ターミナルの機能強化、空港アクセスの改善などが盛り込まれています。

関連記事:JNTOが観光立国推進基本計画を踏まえた新マーケ戦略を発表

財源は約2.7倍に 国際観光旅客税の使い道は?

今回の観光白書は、7月1日に引き上げられた国際観光旅客税について、第III部に独立した章が設けられているのも特徴です。

2018年4月に公布された国際観光旅客税法にもとづき、これまで国籍を問わず、1回の出国に対し1,000円が徴収されていた国際観光旅客税ですが、2026年7月1日より3,000円に引き上げられました。これにより、予算も2025年度から2026年度にかけて、490億円から1,300億円へと増額されています。

この予算は、訪日客6,000万人・消費額15兆円という2030年までの政府目標達成に向けた国際観光振興施策に活用されます。令和8年度予算では、オーバーツーリズム対策や多様な国・地域からの誘客、世界水準の受入環境整備、地域資源を活用した新たな観光コンテンツの拡充、出入国手続等の高度化、日本人旅行者の安全安心な海外旅行環境の整備など、特に新規性・緊急性の高い施策・事業にあてるため、次のような予算配分がなされました。

  • ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備(596億円)
  • 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化(92億円)
  • 地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備などによる地域での体験滞在の満足度向上(612億円)

関連記事7月から旅客税3,000円に引き上げ方針 オーバーツーリズム対策などの財源確保へ

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<参照>

観光庁:「令和7年度観光の状況 令和8年度観光施策」(観光白書)について

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訪日ラボ編集部

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