インバウンド・越境EC攻略企画 STEP4「上司にどのように報告すればよいのか」

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

ーー「上司にどのように報告すればよいのか」

これまで「マーケティング方針の策定」「ターゲットのカスタマージャーニー作り」「やるべき対策の洗い出し」について整理してきましたが、海外向けのマーケティングでは使うサービスによって、管理画面・レポートが英語や中国語で書かれたものであったり、上司や他部署のメンバーには耳慣れない専門用語も多くてよくわからないことも多く、レポートに困ることも多いかと思います。

そこで、今回は 最終的なアウトプットである“報告(レポート)”について整理していきたいと思います。

インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)

レポートの作り方

まずは、今回の施策を行うにあたり、「いくらかけていくら儲かるのか」 といった目論見を整理していきます。

その際、同業他社や他業種でも近い会社のインバウンド対策成功例と実施している内容の研究、想定コストとその効果 についてまとめることで、より精度の高い目論見を作成し上司や関係部署に説明していきましょう。

フォーマットを決める

目論見について理解を得られ実施の決裁を得られたら、今度は具体的にどのような進捗をトラッキングしていくか決定します。次に例を挙げていきます。

■目標設定

  • 1年後の外国人客数を100人/月にする
  • 1人あたりの粗利5,000円で50万円/月の粗利を獲得する
  • そのための事前予約数を120人/月にする
  • 対Web訪問者の事前予約率(コンバージョン率)は約1%を達成させ、

⇒逆算すると12,000人/月のWeb訪問者数を獲得する

■定期レポート

目標に対してどうかをトラッキングしていくわけですが、特に海外の広告を買ってレポートをもらっても日本語で書かれていないので、そのまま上司にレポートしても理解してもらえません。

経営者、決裁者は忙しく、いざというときに 手短に概要を伝える ためのページを用意しましょう。「要するに、何なんだね?」に答えられるポイントをまとめたレポートで、エグゼクティブレポート(決裁者のための概要書) を用意します。

具体的には 対目標でどのような現状 になっているのかと、その乖離を埋めるための対策方針 を整理します。

【実績】

  • 外国人客数:目標100人/月⇒現状40人/月
  • 1人あたり粗利:目標5,000円⇒現状3,800円
  • 事前予約数:目標120人/月⇒現状45人/月
  • Web訪問者数:目標12,000人/月⇒現状5,000人/月
  • コンバージョン率:目標1%⇒現状0.9%

【対策方針】

  • Web訪問者増のために、SEO対策/パブリシティ/多言語対策等を実施
  • 予約率増のために、フォーム見直し/FAQ拡充/簡素化等を実施
  • 客単価増のために、価格見直し/売り場見直し/接客見直し等を実施

さらにこれらをグラフ等でわかりやすく可視化していきます。

これらのデータは、Googleアナリティクスに代表されるWeb解析ツールや各種広告の管理画面などから集計していくことができます。

相手に合わせた言葉を使う

筆者は過去に「君のレポート、よくわからない言葉が並んでいるね・・」と上司に言われた経験があり、当時は「そのくらい勉強してくれよ」と心の中で思ったものでした。しかしながら、決裁者からしたら、結局1件の獲得のためにどのくらいの表示回数や訪問者数があればよいのかが腹落ちできればよく、そのための投資が適正かどうかを判断軸にしたいだけ であるため、ページビューを表示回数、セッションを訪問、CTRをクリック率、コンバージョンを獲得のように 誰にでもわかるように書き換える工夫をするとより伝わるものになる はずです。

結果、「今月は、売上もいいので来月の予約獲得のためにいくらか回したい。追加で広告費50万かけていいので、200人分の予約を目標に追加出稿してくれ。」といったポジティブなコミュニケーションが図れるようになります。

管理画面やレポートが多言語であっても日本語化を怠らない

また、国内向けと異なってくるのが、利用する広告メディアを広げていく際、その国にしかないサービスの場合、言語の壁が出てくるということです。

GoogleやFacebookといった全世界共通のプラットフォームであれば管理画面も日本語や英語に対応しているので問題ありませんが、とりわけ中国本土のサービスを日本語で管理運用することは出来ない と思ったほうがよいでしょう。その国の広告運用実績のある日本の広告代理店に依頼することで、レポートの日本語化をしていただくとよいかと思います。

その際に、広告代理店がまとめるレポートをそのまま受け取ると、前述のようなコミュニケーションロスが生じてしまうため、こちらがまとめたいレポートフォーマットに沿ったデータを、広告代理店に集計してもらうところまでを依頼すると、一連のレポート業務がスムーズに進行していきます。

当然、通貨表記をそのままにせず日本円換算額で表すこともお忘れなく。

レポートにあたっての認識あわせ

上司がターゲット国をどの程度理解しているのかにもよりますが、以下の点だけでも認識あわせをしておくことをお勧めします。

  • 【ターゲットの経済状態】
    • 特に訪日外国人が実際に旅中や旅後で消費する額
  • 【ターゲットの宗教・民族・気候・風土】
    • イスラムのハラール食や祈祷、年中気温の高い国から冬の日本に来る場合など、私たちの当たり前が彼らにとって当たり前でない点がどのようなものなのか

レポートに合わせて提言を添える

「もっと加速すべき」「現状維持」「撤退もしくは縮小」といった 今後のアクションを、理由を添えて提言 しましょう。

まとめ

上司はとにかく 短時間で判断 する癖がついています。「何が言いたいのかわからない。」「言いたいことはわかるけどここで大事なポイントは何?」と言われた経験は誰しもあるのではないでしょうか。

  • 冗長なレポート
  • 簡潔すぎるレポート

のどちらかに偏ってしまいがちです。

簡潔に書くように指示されたから簡潔に書いたのに、今度はもっと詳しくレポートしろと言う。意地悪されているのではないかと考えがちですが、一つのテクニックとして、簡潔なレポートをまずは提出。その時すでに裏づけとなる詳細なデータなどを用意しておくことです。

レポート構成案

以上より、必要事項を整理すると、構成としては、

  • 実施概要
  • 結果(対目標)
  • 今後への期待値
  • 課題
  • 今後への提言

をグラフ・写真付きで 1枚から多くて3枚程度 にまとめる。別添として、裏づけ詳細資料を送付。そこに冗長な文章が含まれていたとしても、すでに要点は報告済みなのでそれは問題ありません。特に 顧客のコメント などは原文のまま使用したほうが伝わりますし、グラフの元データは詳細なほどよいです。

その際、大事なポイントに色づけするなどの工夫があるとよいですが、色付けをすることで受け手はどうしてもバイアスがかかってしまうため、あえて色づけをしないのとどちらがよいかを考えてから作成してみてください。

せっかく作成したので同時に出したいところですが、上司からの一次返答に対する返信で添付して送付する。または、会議での報告の場合、会議後にメールで送付する、といったかたちで、受け手である上司の状況を想定したコミュニケーション をとるのも一考です。

相手の立場で考える

結局のところ、「相手が何を知りたがっているのか」 をまず考えることです。

たいていの場合、売上拡大か経費削減をどの程度の投資でできるのか、その投資対効果であったりします。と同時に起こりうるリスクも気になっています。

「1の投資で2を得られます。リスクとしては2が1に減る可能性はありますが、マイナスになるリスクはありません。」

なのか、

「1の投資で3を得られます。しかし、リスクとして1を失うどころか-3に膨らむ可能性もあります。」

なのかをセットにして語ることで、上司が判断に要する時間をミニマイズ することができますし、それこそがレポートをする私たちに必要とされるスキルなのだと考えます。

STEP4で本連載は終了となります。

顧客ターゲットであっても身内である上司であっても“相手を知り、その立場に立った企画、実行、レポートを丁寧に勧めていくこと”を全STEP共通のテーマにお伝えしてまいりました。今後、益々期待がもてるインバウンド越境ECの市場を攻略するための一助となれましたら幸甚です。

GMO TECH(GMO テック) の執筆記事一覧

インバウンド・越境EC攻略企画 STEP1「マーケティング方針の策定」

『インバウンド・越境EC攻略企画』STEP1では 、漠然としてしまいがちな”外国人からの売上を作る”という目的をどの国のどのようなターゲットにどのようなシチュエーションの時に買っていただくべきか― 具体的なマーケティング方針の策定と大前提について考えていきたいと思います。ここが不明瞭でブレていると、せっかくの素晴らしい観光資源や製品・サービスがあってたくさんの施策を行っているのに、ターゲットにイマイチ届かないのはなぜだろう?といった残念なことが起きてしまいます。逆に、ここさえ明確に定めてか...

インバウンド・越境EC攻略企画 STEP2「ターゲットのカスタマージャーニー作り」〜どのように訪日客の行動心理を読み解くのかを徹底解説〜

マーケティング方針の策定と大前提について整理できたところで、『インバウンド・越境EC攻略企画』STEP2では 、「ターゲットのカスタマージャーニー作り」を通じて、訪日外国人がどのようなタイミングでどのような情報に触れて、どのような態度変容を起こしていくのかについて可視化していきたいと思います。<前回記事>目次ターゲットの明確化カスタマージャーニーの作成手順①旅前②旅中③旅後まとめGMO TECH(GMO テック) の執筆記事一覧ターゲットの明確化まずは、これまでの購買層や来訪者の層の「ター...

インバウンド・越境EC攻略企画 STEP3「やるべき対策・集客施策の洗い出し」

ターゲットについて、ある程度イメージが明確になってきて、実際にターゲットへのヒアリングを通じて購買意欲の核心やツボ(インサイト)がわかってきたものの、次に多くの方が 「そもそも海外向けの効果的なPR・宣伝の方法がわからない」 といったことに直面されます。ここで大切なことは、ターゲットとなる顧客が使っている言語やツール、メディアが何であるのかを把握して、シンプルに対策を行っていくこと、その精度を高めていくこと に尽きるのですが、ともすると周囲からの入れ知恵もあり、何をやってよいのかわからなく...

インバウンド・越境EC攻略企画 STEP4「上司にどのように報告すればよいのか」

ーー「上司にどのように報告すればよいのか」これまで「マーケティング方針の策定」「ターゲットのカスタマージャーニー作り」「やるべき対策の洗い出し」について整理してきましたが、海外向けのマーケティングでは使うサービスによって、管理画面・レポートが英語や中国語で書かれたものであったり、上司や他部署のメンバーには耳慣れない専門用語も多くてよくわからないことも多く、レポートに困ることも多いかと思います。そこで、今回は 最終的なアウトプットである“報告(レポート)”について整理していきたいと思います。...

訪日ラボ セミナー紹介&最新版インバウンド情報まとめ

4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜


4月から観光・インバウンドに関わる仕事に就いたり、関連部署へ異動となり、知識のインプットに追われていませんか?また、より一層事業を推進するために必要な学び直しの機会を設ける担当者も増えてきております。

このセミナーでは、

  • 新担当になって、インバウンドの何から始めたらいいか分からない
  • インバウンド推進が本格化し、改めて情報やノウハウを学び直したい
  • そもそもインバウンドに興味があるが、情報を収集できていない

方にとって必要な基礎情報と、知っておきたい新情報をお届けする機会となっております!

詳しくはこちらをご覧ください。

4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜

【インバウンド情報まとめ 2024年4月】3月訪日外国人数「300万人」突破 他


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。

この記事では、2024年4月版レポートから、3月〜4月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください!

本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。
3月訪日外国人数「300万人」突破 / 2月の世界航空需要、コロナ前から完全回復【インバウンド情報まとめ 2024年4月】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる4月から観光・インバウンドに関わる仕事に就いたり、関連部署へ異動となり、知識のインプットに追われていませんか? また、より一層事業を推進するために必要な学び直しの機会を設ける担当者も増えてきております。
このセミナーでは、
新担当になって、インバウンドの何から始めたらいいか分からない
インバウンド推進が本格化し、改めて情報やノウハウを学び直したい
そもそもインバウンドに興味があるが、情報を収集できていない
方にとって必要な基礎情報と、知っておきたい新情報をお届けする機会となっております!
詳しくはこちらをご覧ください。
→4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

GMO TECH(GMO テック)

GMO TECH(GMO テック)

GMO TECH株式会社 経営企画室 部長 猪野 佑一。主に日本企業や外資企業の日本法人の国内外向けのマーケティングのプランニングからディレクションまでを手がけてきている。インバウンドに有効なウェブマーケティングのノウハウについて発信してゆきます。

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに