海外では、観光客が立ち寄る場所として一般的な施設という印象が強い カジノに代表される賭博施設 ですが、日本では現時点でこうした合法カジノはありません。その代わりに海外にはない 公営競技という名称で呼ばれる公営賭博 、そして 風営法のもとで遊技とされるパチンコ が存在します。こうした カジノ、公営賭博、パチンコとインバウンドの関係 はどうなっているのでしょうか。
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「カジノ法案」と呼ばれる IR(統合型リゾート)推進法がほんとうに目指しているものとは
IR(統合型リゾート)推進法 とは、正式名称としては「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」と言い、2016年12月15日に成立し、今年1月から始まっている通常国会で細則が決められる段取りとなっています。これは、構想としてはラスベガスなどのような、高級ホテル、各種商業施設、MICEなどの開催が可能な会議室、カジノなどを含む統合型リゾート(IR=Integrated Resort)の整備 を日本国内で目指すものです。
日本国内では「カジノ法案」という呼び名で知られ、「日本でもカジノが出来るのか?」といったことだけに注目されがちですが、政府が目指しているのは、あくまでも 統合型リゾート(IR=Integrated Resort)の整備 であって、世界最先端のショービジネスや、一流のアーティストのコンサート、世界最高峰のスポーツイベント等がこうした施設で行われている諸外国の事例を日本でも取り込もうというものです。
日本のカジノを楽しみたい訪日客
昨年話題となっていた カジノ法案(IR推進法) ですが、成立が来年の通常国会に先送りされる見通しです。2017年9月28日の臨時国会冒頭で安倍首相が衆議院を解散する方針を表明したことが主な理由です。多くの訪日外国人観光客の誘致につながる ことから、インバウンド業界でも注目されていたカジノ法案(IR推進法)。そもそもどのような法案だったのでしょうか。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウンロードする「多言語サイト制作」の資料を無料でダウ...
例えばシンガポールの例では、こうしたIR施設は「ホテル、レストラン、ショッピング、コンベンション施設、劇場、美術館、テーマパークといったありとあらゆる施設」が該当し、カジノに関しては「プロジェクト全体の経済的継続性を支える」ために必要な「相対的に小規模な施設」とされています。
つまり、日本で盛り上がる「日本にもカジノが出来るのか?」「ギャンブル依存症の人にとって良くないのでは?」といった 「カジノの是非」だけに関する議論で終わるものではなく、「日本を代表するMICE施設、リーズナブルなものから上質なものまでのエンターテイメント施設が融合し、ビジネスで訪れてもファミリーで訪れても満足できるような施設」を作ろうというのがIR(統合型リゾート)推進法が目指すもの であり、あくまでもカジノ施設はIR(統合型リゾート)の発展のための収益源としての役目が期待されているというわけです。
IR(統合型リゾート)のカジノ施設におけるメイン顧客層は訪日外国人
日本では、こうしたカジノ施設が日本に出来ることで「ギャンブル依存症の人にとっては良くない」といった議論が盛んに展開されていますが、そもそもIR(統合型リゾート)のカジノ施設が対象とするメイン顧客は 観光で日本を訪れる訪日外国人の富裕層 です。
また、カジノ施設への安易な入場を抑止する観点で、IR(統合型リゾート)への来場が頻繁になりうる日本人及び国内居住の外国人を対象に入場料を1日(24 時間)単位で課すべきという議論がされています。
また、未成年者の健全な育成に悪影響がないよう、未成年者に対する広告・勧誘に制限が設けられるなどの他、未成年者のカジノ施設への入場は禁止、マイナンバーカードなどを使用した本人確認の徹底、1ヶ月程度の長期間、1週間程度の短期間に分けた入場回数の制限を設けるなどの案もあります。
日本の公営競技のインバウンド対応は遅れている:日本人顧客と訪日外国人顧客の乖離も背景に
IR(統合型リゾート)に関する法整備が日本国内で進む中、元々日本にある 公営賭博(公営競技) のインバウンド対応はあまり進んでいません。日本の公営賭博は 競馬、競輪、競艇、オートレース に大別されますが、外国語対応、また訪日外国人が楽しむ土台づくりという観点でも、他の分野と比較してインバウンド対応が遅れています。
各地にある競馬、競輪、競艇場では、外国語による遊び方の解説、また遊び方の体験ツアーなどを通じて訪日外国人のファン獲得を狙っていますが、今のところ訪日外国人の中でブームになるほどの盛り上がりはないようです。これは 日本の公営賭博施設の利用年齢層がそもそも高めであること、家族連れで楽しめる雰囲気のアピールに成功していない ことなどが挙げられます。
また、海外ではカジノ、庶民も楽しめる施設の他、富裕層が楽しめる施設も存在しますが、日本の公営競技場のほとんどは富裕層が遊ぶことを前提としておらず、訪日外国人からするとどのような施設であるのかといった立ち位置がわかりにくい 事も言えます。
海外からすると『賭博』としか映らないパチンコ
日本において一大産業である パチンコ ですが、数年前からは禁煙パチンコ、女性専用パチンコなどユニークな取り組みの店舗が出来ています。近年は遊び方が比較的簡単なパチンコ台を訪日外国人向けに設置、出玉を”和”を感じられる景品と交換出来る店舗などが出来ており、ホームページなども全て英語表記、フリーWiFiを設置している店舗も増えて います。
ただ、海外ではパチンコは「国民が働かなくなる」として 禁止されている国も多く、そもそもパチンコ発祥の国と言われる韓国ではパチンコは禁止されています。
建前上はパチンコホールで客が得ることが出来るのは現金ではなく、ライターの石、ボールペンなどの景品で、客はこれを運営が別法人、無関係の企業である景品交換所に持っていき、現金と交換します。
こうした特殊な仕組みなどもあって、外国人からすると、未成年であっても厳しい年齢確認などなく入店してギャンブルが出来てしまうパチンコという娯楽は、しばしば驚きを持って受け止められます(※本来は18歳未満の入店は禁止行為)。また、ほとんどんホールでは分煙が徹底されていないこと、英語対応がされていない店舗が多く、遊び方がわからないなどの理由で訪日外国人の間もそこまでの人気にはなっていません。
IR(統合型リゾート)推進法の整備によって、日本の公営競技、パチンコ店のインバウンド対応は進むか?
政府はインバウンド対応を進める中で、日本にもIR(統合型リゾート)設立を目指しています。今年1月からの通常国会で細則が決められるとされる中で、IR(統合型リゾート)の一部としてのカジノにお墨付きを与える一方、今までグレーゾーンとされてきたパチンコに関してはギャンブル依存症の対策ということで、2月からパチンコ、スロットの出玉規制、景品の換金禁止も打ち出す方針 とされています。
これはIR(統合型リゾート)は新たな法整備によって合法、賭博行為である競馬や競輪は、競馬法や自転車競技法などの特別法を作って公営賭博として辻褄を合わせているという状況の中、パチンコに関しても風営法によって営業時間や出玉をより厳しく規制することで賭博罪には該当しないという辻褄合わせのアピールであるとも取れます。
訪日外国人目線ではカジノ、公営賭博、パチンコに関わらず、日本独自の演出を含んだ体験として楽しみたいという考えが主流でしょうが、現時点では カジノを合法化するための法整備に日本は追われている状況で、公営賭博、パチンコ店のインバウンド対応は進んでいません。 IR(統合型リゾート)推進法の細則を巡る動きの中で、インバウンド対応が前進するのでしょうか。こちらも注目していきたいところです。
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