近年のインバウンドは訪日中国人による爆買いやゴールデンルートへの一極集中の時代から、地方分散 の時代に進みつつあり、FIT(外国人個人旅行者)の増加など、多様な旅行形態への対応が必要 となっています。これは、政府がインバウンドや観光立国を推進した当初の目的にも合致するものであり、そのため地方創生の文脈でインバウンドが語られることが多い、という背景があります。
そのような時代の流れをうけ、各地方では様々なインバウンドの地方誘致の取り組みがスタートし始めており、インバウンドビジネスにおける一つの節目である2020年に向け、この動きはさらなる加速をするものと思われます。
しかしながら、地域の観光資源が豊富にあっても、急増するインバウンド需要を取り込めていない地域 もたくさんあるのではないでしょうか。そのような課題を抱える地域の一つである 熊本県天草エリア(上天草市、天草市)では、インバウンドFIT(外国人個人旅行者)を地域の振興に活かそうとする取り組み がなされています。今回は、この天草エリアの取り組みについてご紹介しましょう。
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天草エリア×インバウンド
天草は熊本県の南西部に位置する島からなり、周囲を東シナ海・有明海・八代海という3つの海に囲まれています。美しい青い海に浮かぶ大小さまざまな島や緑深い山々などが織り成す雄大な景観をはじめ、季節を問わず一年中楽しむことのできるイルカウォッチングやキリシタンの歴史を伝える施設などがある、自然と文化に育まれた島です。
インバウンド向けの観光資源が豊富な天草エリア
「天草」と聞けば、天草四郎伝説をはじめとした歴史的な事柄が思い浮かびますが、2018年度を目標に「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」として 世界文化遺産登録 を目指しています。隠れキリシタンにまつわる「崎津天主堂」に代表される教会や、「天草陶石」を活用した「天草陶磁器」などの文化的資源のほか、イルカウォッチング、マリンスポーツといった自然を活用した体験サービス、車海老やあわびなどの海の幸など、観光資源が豊富にあり、前述の文化遺産登録が実現すれば、インバウンド需要の更なる増加が期待されます。
イルカウォッチング等を提供する熊本県天草エリア市の株式会社シークルーズは、インバウンドのうち、特にFIT(外国人個人旅行者)に対応したサービスで、利用客数が前年比2倍以上 に伸びており、また、国から 「地域資源活用認定」を受けたことも、地域における一つの好機 となることでしょう。前述のとおり、天草地域には観光資源が豊富にあるものの、それらの「インバウンド向け観光資源化」が進んでいません。シークルーズでは、イルカクルーズなどを始めとした、FIT訪日客向け観光商品を新たに作り、地域と連携を深めていくことで天草エリアのインバウンド需要を盛り上げようとしています。
一方でインバウンド取り込みには様々な課題も…
前述のような豊富な観光資源や、国からの認定などの追い風がありながらも、課題も同様に存在しています。天草エリアの場合、地域への入込客数は多いものの、宿泊率が2%程度 となっており、ほとんどが日帰り観光客です。そのため地域にお金が落ちてきにくい構造となっています。
また、交通アクセスの悪さも課題です。熊本駅からはバスで1時間半以上かかり、便数は1時間に1本しかありません。近隣に天草空港があるものの、そこからの2次交通機関がないなど、必ずしも交通アクセスが良くありません。
インバウンド需要を取り込んでいくには、これらの地域資源や課題などを正確に把握することが第一歩です。そのうえで、資源の効果的な活用、または課題の解決をしていくことが非常に重要になります。このような天草エリアの現状を把握した上で、明日からできる取り組みを考え、地域内での連携を模索するために、今回のワークショップが開催されました。
天草エリアのインバウンド対応力を強化!「インバウンドFIT対応力向上ワークショップ in 上天草」とは
中小企業基盤整備機構 九州本部は、熊本県天草エリアでインバウンド需要を取り込みたい事業者向けに、今年3月8日、3月15日に「インバウンドFIT対応力向上ワークショップ in 上天草」を開催しました。
この取組は、政府の2016年3月に閣議決定した「明日の日本を支える観光ビジョン」において、新たな観光ビジョンを策定するなど、観光事業は重要な産業として位置づけられていることを発端とした取り組みです。中小企業基盤整備機構 九州本部では、観光が地域産業の振興にとって重要な要素であるとしており、観光を中心とした面的な産業支援のモデルづくりにチャンレンジをしており、その一環として今回のワークショップが開催されました。
中小機構の提供プログラムの工夫
「インバウンドFIT対応力向上ワークショップ in 上天草」では2日にわたり開催し、インバウンド専門家と、実際にインバウンド対応に取り組み、実績をあげている旅館の代表者(山城屋)による講演の後、学んだことを踏まえたグループワークを実施するという形式です。
インバウンドを取り巻く日本全体の市場動向や、九州地区でのデータ、課題などを把握した上で、先進事例から学び、それらを踏まえて 「自社が何ができて何ができていないか」「何から始めるべきなのか」から考え、具体的な行動計画に落とし込む 構成となっています。
実際に、参加者アンケートによれば 「インバウンドについて、何をどう取り組むべきなのか漠然としていましたが、今回のワークショップにおいて具体的に何を行えばいいのかを知る機会となりました。」「一つずつ、できることから取り組んでいこうと思います。」「現状が把握できたので、動ける部分はすぐにでも動きたい。」 といった声が挙がっており、地域の意識付けやインバウンドビジネスの啓発の機会になったのではと思われます。
まとめ:2018年は「インバウンド地方誘致元年」なるか 各所で様々な取り組み始まる
2016年の「明日の日本を支える観光ビジョン」および 2017年「観光立国推進基本計画」により、インバウンドの地方誘致が国をあげての課題となっています。このことから、今年2018年は、いわば「インバウンド地方誘致元年」になると考えられ、様々な取り組みが地域から始まっていく年になっていくのではないでしょうか。
今回ご紹介した天草エリアの事例では「観光資源があるものの、アクセスに難があり、宿泊者が少ない観光地はどうやってインバウンド需要に対応していくべきなのか」というモデルケースとなるでしょう。訪日ラボでは、このワークショップについて実際の開催の様子を追ってご紹介していきます。
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<参考>
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