「日本の公道をカートで走行するサービス」が訪日外国人に人気だということはインバウンド担当者ならご存知でしょう。この中で最も良く知られているサービス企業が株式会社 MARI モビリティ開発(旧社名:株式会社マリカー)です。
このビジネスモデル自体が、任天堂の人気ゲームである「マリオカート」を連想させるものであること、そして「マリオカート」の略称を社名に用いていたこと、当初は任天堂のキャラクターである「マリオ」のコスプレ衣装を貸し出すなどしていたことなどで、任天堂株式会社が訴訟開始したことを覚えている方も多いのではないでしょうか。
任天堂訴訟へ 外国人観光客にも大人気の公道「マリカー」実は無許可だった…訪日プロモーションでも著作権には要注意
本日2月24日、任天堂株式会社(以下、任天堂)が「公道カートのレンタルサービスに伴う当社知的財産の利用行為に対する訴訟提起について」と銘打った発表をしました。任天堂によれば、特に訪日外国人観光客に人気の体験となっている公道マリオカートレンタルサービスを運営する株式会社マリカーを相手取り、訴訟を提起したとのことです。目次株式会社マリカー、任天堂に訴えられる不正競争行為・著作権侵害行為差止め&損害賠償1000万円請求の訴訟へインバウンド人気が高かった「マリカー」TripAdvisorでは397...
さらに、日本の交通マナーを知らない訪日外国人による事故の発生などから、新規制がはじまるなど、様々な問題が投げかけられていました。
訪日客に人気の公道カート「リアルマリオカート」に警鐘&新規制 今後は尾灯の装着などが義務付けへ
訪日外国人にとって人気で、ほとんどの人が知っているレースゲームというと何を思い浮かべるでしょうか?「グランツーリスモ」という声も聞こえてきそうですが、実は男女を問わず多くの訪日外国人が知っているレースゲームとは「マリオカート」なんです。「マリオカート」とは任天堂が開発、販売をしているゲームで、同じく任天堂のゲームのマリオに登場するキャラクターがカートに乗ってレースを行うゲームです。こうした訪日外国人のマリオカートに関する認知度の高さ、人気の高さを受けて、東京都内にはいくつかレンタルカートで...
上記のような課題がありながらも、東京の街なかをカートで走れるというサービスは訪日外国人の心を射抜き、最も人気のアクティビティの一つになっていたことも事実です。
なぜ「マリカー」は訪日客を惹きつけるのか?東京の街を疾走するマリカー 体験してわかったインバウンドに刺さる理由【現地レポート】
観光庁が発表をしている「訪日外国人の一人あたりにおける消費動向調査」を見てみると、2015年〜2017年で、買物費目の消費額が7万4千円から5万7千円へと縮小しています。近年、円高も相まって訪日外国人がモノを買うことが少なくなり、それにともない、体験や宿泊にお金を使う傾向に変わってきています。このような、いわゆる「コト消費」が加速しつつあるなかで、変わった体験ができるツアーを体験する訪日外国人が増えてきています。その中の一つとして、訪日外国人から話題を呼んでいるのが「マリカー」です。今回、...
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東京地方裁判所 株式会社マリカーに対して不正競争行為の差止、損害賠償金の支払い等を命じる
任天堂株式会社のプレスリリースによると、2018年9月27日に東京地方裁判所は、「マリカー」という商標等が、株式会社マリカーとユーザーの間で、任天堂株式会社商品等の表示として広く知られていることを認めた上で、株式会社マリカーに対して不正競争行為の差止と、損害賠償金の支払い等を命じる判決を出しました。
そもそも任天堂は、2017年2月24日に同内容で東京地裁で訴訟を起こしています。この中で任天堂は、株式会社マリカーが任天堂の「マリオカート」の略称を社名に用いていること、サービス利用者に「マリオカート」のキャラクターのコスプレ衣装を提供していること、この衣装を着た利用者の写真をホームページなどで宣伝に利用していることなどが、不正競争行為と著作権侵害行為に該当すると主張。株式会社マリカーによる知的財産権の侵害行為の差止、損害賠償を求めていました。
株式会社マリカーは当初「不正競争行為および著作権侵害行為には該当しない」としていた
株式会社マリカーは訴訟を起こされた当時は「事実と異なる内容がある」「不正競争行為および著作権侵害行為には該当しない」という考えを明らかにしていました。現在のホームページ上では、「マリオカート(Mario Kart)とは無関係で全くの別物です。」と明記しており、コスプレ体験の説明にも「スーパーヒーローのレンタルコスチューム」が揃っていることを明記、「マリオ」のコスチュームの貸出に関する内容はありません。
しかし過去のホームページを遡ると、少なくとも2017年時点では「マリオ、アイアンマン、クッキーモンスターなど現在100着以上のコスプレをご用意!」と記載が確認出来ることから、「著作権侵害行為には該当しない」と言い切れるかどうかは難しい状況でした。
なお、2018年9月27日の東京地方裁判所の判決を受けて、株式会社マリカーは「当社の主張の正当性が一部裁判所で認められたことは喜ばしい」としながら、「一部主張が認められたなかった部分については遺憾であり、内容を精査して引き続き対応していく」としています。
都内に複数存在するレンタルカート店の動向にも注目
平成29年時点では東京都内には主に訪日外国人を対象に都内をレンタルカートで走行出来るサービスを提供している事業者がおよそ10店舗存在し、いずれもが「何らかのキャラクターのコスプレをして都内を走行する」ことがサービスの大きなウリとなっています。
これらの事業者はいずれも「マリオカートとの関係性はない」と主張していますが、当のサービスの利用者からは「現実世界でマリオカートのような体験が出来ることが楽しい」ということで話題になっていることは、トリップアドバイザーの口コミを見ても、またInstagramで「#realmariokart」というハッシュタグで投稿されている内容を見ても明らかでしょう。
Instagramで「#realmariokart」というハッシュタグで検索すると、2018年時点の投稿でも、株式会社マリカーの車両に乗る訪日外国人が「マリオ」のコスプレをしている姿が確認出来ますが、投稿日付と写真が撮影された日付が異なる可能性もあるため、現時点で「マリオ」のコスプレ衣装を貸し出しているかどうかは定かではありません。
今回、株式会社マリカーに対して不正競争行為の差止、損害賠償金の支払い等が命じられたことで、こうした類似事業者も任天堂株式会社から同様の訴訟を起こされた場合、同様の判決を受ける可能性が高まりました。今後こうした類似事業者のサービス展開にどのような影響を及ぼすのか注目が集まります。
減らぬ訪日外国人による交通事故
不正競争行為と著作権侵害行為以外でこうしたレンタルカートで問題となっているのが訪日外国人による交通事故です。これらのレンタルカート事業者は、「日本で有効な国際免許証があれば外国人でも運転出来る」としていますが、警視庁によると、レンタルカートによる交通事故のほとんどは外国人の運転によるもので、平成30年には1月から3月の3ヶ月間で16件のカート事故が発生。16件全てが外国人による事故でした。
訪日客に人気の公道カート「リアルマリオカート」に警鐘&新規制 今後は尾灯の装着などが義務付けへ
訪日外国人にとって人気で、ほとんどの人が知っているレースゲームというと何を思い浮かべるでしょうか?「グランツーリスモ」という声も聞こえてきそうですが、実は男女を問わず多くの訪日外国人が知っているレースゲームとは「マリオカート」なんです。「マリオカート」とは任天堂が開発、販売をしているゲームで、同じく任天堂のゲームのマリオに登場するキャラクターがカートに乗ってレースを行うゲームです。こうした訪日外国人のマリオカートに関する認知度の高さ、人気の高さを受けて、東京都内にはいくつかレンタルカートで...
これらの事故を受けて国土交通省は、4月から道路運送車両法に基づく保安基準を改正。平成32年4月以降は既存の車両、新規車両に関して、レンタル業者、個人所有者にシートベルトの装備、赤色尾灯の装備を義務付けます。
法律を遵守した訪日外国人向けのサービス提供がますます求められる
今回は東京地方裁判所の判決により、株式会社マリカーに対して「不正競争行為の差止、損害賠償金の支払い等」が命じられたことで大きく話題となっている公道カートですが、同様に民泊新法施行工後にヤミ民泊が問題となってきました。
遂に京都市でヤミ民泊初摘発!民泊の83%が無許可or不明という調査も/今後さらにヤミ民泊は増加するのか?マンション側の自衛策は?
平成30年6月15日に住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が施行され、これに合わせて旅館業法が改正され、日本の民泊における新たな枠組みが整備されました。この中で無許可営業に関する罰則が大幅に強化され、今まで上限3万円だった罰金額が最高100万円に行き上げられ、旅館業法に違反した場合の罰金額も上限2万円から50万円に変わっています。こうした状況の中で京都市では、全国初のヤミ民泊の摘発、営業停止の緊急命令などが出されています。インバウンド受け入れ環境整備を資料で詳しくみてみる「翻訳・多言語化」を...
いずれのケースでも共通しているのが、【訪日外国人本人達は、日本の法を破っているという意識が薄い】ということです。人気ゲーム同様の体験を、ゲームやアニメキャラクターのコスプレをして体験出来る、海外では一般的なシェアハウス、民泊という形態を日本でも体験出来ることは訪日外国人にとっては楽しく、利便性が高いのは間違いありませんが、だからと言って日本国内の法律を軽視して良い理由にはなりません。
こうした日本国内ではグレー、もしくは違法であるサービスを提供して訪日外国人に楽しんでもらったとしても、結果的に警察沙汰になった場合に不利益を被るのはサービス利用者である訪日外国人です。そのため、一時的な利益を追求するのではなく、長い目で見て持続可能、法律を遵守した形で訪日外国人向けのインバウンドサービスを展開していくことが、今後ますます求められていくでしょう。
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