新興中国EC「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」のユーザー数が4億人となった理由とは/中国の2大EC「タオバオ」「京東ジンドン」との違いから探る

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こんにちは、クロスシー編集部です。

中国での消費者のショッピングのチャネルといえば「EC」。日本旅行から帰国したあとの日本ファンへの訴求はもちろん重要ですが、中国にはまだ訪日経験はないものの、日本ファンであるという中国人はたくさんいます。本編では中国での主要ECプラットフォームと、最新のEC事情をご紹介します。

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老舗ECプラットフォーム「タオバオ」「Tmall(天猫)」「京東(JD.com)」

まずは中国の主要ECプラットフォームを見てみましょう。中国ではこの数年で実現したスマホの普及、モバイルペイメントの規模の拡大と発展に伴い、ECの利用者やその経済規模も併せて拡大してきました。こういった市場状況の中、主要ECプラットフォームとして中国全土に普及するのがアリババ「タオバオ」「Tmall(天猫)」そして京東(中国名:ジンドン)が運営する京東(JD.com)」です。

ニューヨーク証券取引所に上場するアリババによるユーザー数5億のECサービス

タオバオを運営するアリババは1999年に創業しました。先日、カリスマ的創業者のジャック・マーが第一線からの引退を発表し、中国では大きなニュースとなりました。

アリババは国内の卸売を行うECサイトの運営から事業を開始しており、このサービスは現在も「1688」という名称で継続しています。2003年にスタートした「タオバオ」は現在では約5億ユーザーを抱えており、中国ECの代名詞です。そして、2012年に「タオバオ」のうちBtoCの形態をとる出展社が参加できる「タオバオ商城」を「Tmall(天猫)」に改称しました。

また2014年2月には、中国国外の製品を購入できる「越境EC」のプラットフォーム天猫国際」を正式にスタートさせます。これまでも海外製品はタオバオやTmallでも店舗によっては取扱いがありましたが、それらは個人が旅行時やその他の経路から仕入れるものも多くあり、偽物の存在を疑いながらユーザーは購入を決めたり、とりやめたりしていました。このプラットフォームにより、「正規品の購入チャネル」という新たな価値を消費者に提供することに成功します。またこの年の9月に、アリババはニューヨークの証券取引所に上場を果たします。

「京東」はテンセントやsina社と手を組み多様な入口からユーザーを惹きつける

ユーザー数約5億人を誇るアリババに対し、中国EC界の二強として目されているのが「京東」です。2017年末に発表されたアクティブユーザー数は約3億人となっています。

京東は、創業者の劉強東によりアリババに先駆けること1年、1998年に北京で創業しています。2007年にそれまで持っていたサービスを現在の「京東商城」に改名。その後、増資やサービスの拡大を順調につづけ、2013年にはロゴを現在の形、シンボルキャラクターの「犬」とローマ字のものに変更をしました。この年の4月にはユーザーが1億を突破したことを発表し、アリババよりも数か月早い翌年2014年5月にアメリカのナスダック株式市場に上場しています。

京東は多くのパートナーと手を組み事業を拡大しているのが特徴です。2015年には中国IT大手「BAT」の一角をなすテンセントと「京腾計画」を発表、またWeiboを運営する新浪社(sina社)とは「京浪計画」の名の元に協力を進めています。商品レベルの管理監督が難しいことを理由に、CtoC形式のECサービスの廃止を決定しているのもアリババ社とは異なる点でしょう。 ※B=Biadu、A=Alibaba、T=Tencentを指す

注目の新興ECサービス3選、”中国の無印”「YANXUAN」、女性9割の「RED」、そしてこれまで手の届かなかった都市に広がる「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」

実は中国では、タオバオと京東以外、2010年以前に創業したECサービスは生き残っていません。2010年以降に創業したサービスの今後の生き残りに注目が集まっています。こういった新興ECのうち、現在注目を集めているのが「YANXUAN(网易严选)」「RED(小红书)」そしてこの夏にナスダック上場を果たした「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」です。

”中国の無印”「YANXUAN」

「YANXUAN」は中国の無印とも呼ばれ、品質の高い、厳選した商品の販売に力を入れています。デザインの高さに魅力を感じるユーザーが多いようです。

女性9割の「RED」

RED」はユーザー数1億を超え、その9割が女性というECサイトで、サービス内のSNS的側面とEC機能をこれまでにない形で組み合わせている点が特徴です。

これまで手の届かなかった都市に広がる「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」

拼多多」はこのどちらとも異なる強みを持つ、2015年9月にスタートしたECです。「グル―ポン」的な共同購入による値下げ可能なシステムを提供しています。サービス開始の1年でユーザーは1億人を超え、創業4年目となる現在では4億人に達し、ECの王者タオバオの5億ユーザーとの距離を縮めつつあります。

▲拼多多ロゴ

▲拼多多ロゴ

▲拼多多のアプリ起動画面。トップページ、お薦め、検索、チャット、管理ページとタブが並ぶ

▲拼多多のアプリ起動画面。トップページ、お薦め、検索、チャット、管理ページとタブが並ぶ

中国の中間所得層のEC市場はブルーオーシャン!? SNS上のアクションが値下げにつながる仕組みがヒット

なぜ拼多多(ピンドゥオドゥオ)はユーザーの急速な拡大に成功したのでしょうか。その理由は一言で言えば、中国の中間所得層以下の消費者の取り込みに成功したことにあります。中国には高級なスマホを手にし、日本はじめとする海外旅行を楽しみ、越境ECなどを利用して質の良いシャンプーといった生活の細部にわたり上質な製品を利用する人々が増えています。

その一方で、これらを手の届かないアイテムと感じている人々もまだ中国には存在するのです。彼らは「三級都市」「四級都市」と呼ばれる経済規模の地域に住んでいます。

中国では経済規模、政治的影響力の大きさ等を指標に都市を分類しており、一級都市と呼ばれる北京や上海、新一級都市と呼ばれる杭州、二級都市と呼ばれるアモイや長春などが存在します。「三級都市」「四級都市」はこの二級都市よりさらに一つ、二つ下のランクとなります。

そして、タオバオや京東のようなECプラットフォームは、こういった人々のニーズを第一に満たすようなビジネスモデルではありませんでした。

こういった人々の消費スタイルに合致する商品を、サプライチェーンを整え供給することに成功したのが拼多多(ピンドゥオドゥオ)でした。加えて、SNS上でのシェアやクリックに応じて値下げが行われるという仕組みが、情報の拡散と利用者の拡大を後押ししています。

▲画面のキャプチャを取ると、テンセント系のSNSへのシェアボタンが現れる

▲画面のキャプチャを取ると、テンセント系のSNSへのシェアボタンが現れる

ユーザーの構成比(学歴)からは、タオバオや京東といった、これまで主流のECプラットフォームよりも低学歴の層が厚いことがわかります。中卒以下も含む高卒以下が4割以上を占め最も多く、大卒以上は3割程度にとどまります。対照的に、タオバオや京東では大卒以上が4割強を占めており、中卒以下の層は1割を切ります。

▲ユーザーの学歴分布。上が拼多多、下がタオバオと京東。

▲ユーザーの学歴分布。上が拼多多、下がタオバオと京東。

まとめ ~課題は「偽物の多さ」? すでに是正の活動も、今後は地方都市との重要なチャネルに

創業から3年と驚異のスピードでナスダック上場も果たし、順調に成長しているような拼多多(ピンドゥオドゥオ)ですが、偽物が多いという批判も多くあります。ですが、今やECの頂点に君臨するかのようなタオバオも、以前は同様の評価を受けていました。その中でアリババはさまざまな技術的対策を講じ、ここまでサービスを発展させてきたのです。

国慶節中に取引額の拡大が見られた拼多多(ピンドゥオドゥオ)では、すでに5500あまりの違反店舗を閉鎖させるという対応をとっています。今後もサービスレベルの向上が期待できます。

そして、この新たなチャンネルを用いて日本ブランドを訴求していくことで、三級都市、四級都市の住民に対し、日本旅行のモチベーションを高めていくことも将来的には可能となってくるでしょう。成長スピードの著しく早い中国で、この最新のECサービスの動向は今後も要注目です。

<参考>

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この記事の筆者

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