Wovn Technologies 株式会社 取締役COOの上森です。Wovn Technologiesは「WOVN.io」という、WEBサイトやスマホアプリを多言語化するサービスを開発するなど、インバウンドを含めたWEB多言語化のテクノロジーを提供している企業です。
われわれはクライアントにSaaSツールを導入していただくだけでなく、企業のWEBインバウンド戦略を叶えるコンサルティングも実施しています。本連載ではその知見を活かしながら3回にわたって、企業がWEBインバウンドというミッションを達成していくうえでのノウハウや解決策を紹介していきます。最終回となる今回は「WEB外国人戦略の3W1H」を簡単に紹介していきます。
絶対に失敗したくないWEB担当者のための「多言語化プロジェクト」の進め方:インバウンド対策を成功に導く3つのポイントを解説
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サイト多言語化 「訪日」向け・「在日」向けで変わるポイントは?ケース別で考える
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国内の災害で注目される、WEB多言語化
この連載前や連載中に、大阪や北海道で近年稀に見る災害が発生しました。好ましいことではないものの、本件で注目されたのが、外国人に対する災害情報の提供。新聞各社がこぞって取り上げていました。たとえば日経新聞。
災害時は外国人にもきめ細かい情報を: https://www.nikkei.com/article/DGXKZO35697950U8A920C1PE8000/
災害対応時における外国語での情報提供という課題を受けて、Wovn Technologiesにも各種相談が持ちかけられています。
今回のテーマは「WEB外国人戦略の3W1H(WHY, WHO, WHAT, HOW)」のお話をしたいのですが、せっかくですので、例が必要なところは架空の会社「Wovn鉄道」を例にとって解説します。なお、例は実際の案件とは一切関係ないことをご了承ください。
フレームワークにしたがって、網羅性と実効性のあるWEB多言語化を
(1) WHY
「WEB外国人戦略の3W1H」ということで、最初に考えなくてはいけないのが「目的」、つまりWHY「なぜWEB外国人戦略が必要なのか」ということです。
災害時においては当然ながら、正しい情報に基づいて行動する必要があります。しかしながら、外国人(訪日、在日、在外)においては日本語での情報収集は困難な場合が多く、外国語(英語だけでなく複数言語が必要な場合も少なくないと思われます)での情報提供が望まれます。
Wovn鉄道においては過日の災害時に、外国人がタイムリーにウェブサイトで運行情報を得ることができないため、鉄道やバス、乗り継ぎ先の飛行機への乗り遅れが発生。欠便情報を得る事ができずに、何時間も駅で過ごす方もいらっしゃいました。異国での「わからない」という状況は、計り知れない心理的苦痛でもあるでしょう。
そこで当該鉄道はWEB多言語化のWHYを「駅を利用している外国人に対して、タイムリーに正しい交通情報を提供する」と設定しました。
(2) WHO
目的が決まったら次にターゲット、つまりWHOの選定です。ひとえに外国人といっても、訪日、在日、在外の3属性があります。属性ごとに対応策(③ WHAT)が変わってくるので、これもしっかりイメージしておくことが大切です。
訪日外国人ではいわゆる「インバウンド対策」が重要になってきます。観光、宿泊、飲食、交通などが大きく関わるでしょう。在日外国人は「国内インフラサービス対策」。電気水道、国内物流、コンビニ、ケータイキャリアなどが重点的に取り扱う必要があると考えられます。在外外国人は「越境EC対策」、アパレル雑貨小売り、健康食品などで推進する必要がありそうです。
ここまでWHYとWHOを説明してきましたが、この際の注意点は、ターゲットを必ず1つに限定することです。ターゲットが複数あると戦略実行時にブレに生じ(部門間調整・目的同士間でのトレードオフなど、各々目的が違うことで実行されなくなるおそれ)、実行のハードルが上がります。
どうしても複数に対応しなければいけない場合は、フェーズを区切り、フェーズ1で「訪日外国人」、フェーズ2で「在日外国人」への対策をする、といったふうに分けるのがよいでしょう。
運行情報を提供するWovn鉄道企業では、数も多く日本に不慣れであろう「訪日外国人」を初期のターゲットとすることにしました。韓国からの旅行者も多いことから、英語と韓国語に対応予定。もちろん在日外国人への対応も将来的には必要なので、それは訪日外国人への対応が落ち着いてから、その経験も踏まえて実行することとしました。
(3) WHAT
WEBサイト多言語化の対象は、3つの観点から分類する必要があります。すなわち「サイト属性」「規模・ボリューム」「業種・業態」です。
① サイト属性
多言語化するWEBサイトがECサイトなのか、クラウドシステム(SaaSなど)なのか、会社サイトなのかにより、対応しなければばらない課題が異なります。
たとえばECサイトだったらその特性により、商品ページ、販売したあとの配送・決済などが必要。海外対応が必要な場合は他通過決済や海外マーケティングなど、一気に難易度が上昇します。これらの一部分だけを多言語化しては中途半端。一気通貫して多言語化しなくてはなりません。
Wovn鉄道では、路線図だけを多言語するだけでは足りません。WEBサイトはもちろん、事前に購買する交通券の決済ページ、日本の駅の券売機や、案内表示の多言語化も実施することにしました。
② 規模・ボリューム
動的サイトなどでページやコンテンツが多いサイトは、翻訳やUI/UX対応など、対応しなければならない範囲が膨大になりがちです。この場合、外国人に本当に必要な情報なのかの選別、多言語化する際の優先順位などの優先順位付けが必要です。BPA(Business Process Automation)などへの対応も含めて、運用フローを構築しましょう。もちろん予算との相談も必要です。
③ 業種・業態
業種や業態によって、優先しなければならない事項が変わります。一般に、金融であればセキュリティ性、交通であればタイムリー性、小売りであれば費用対効果が必要とされます。翻訳のスピードと正確性がトレードオフになることもあるでしょう。ビジネスモデル、業界慣習、提供サービスによって異なるのは当然です。自社が所属する業界や状況に応じて、多言語化しなければいけない項目などを決定しましょう。
Wovn鉄道では交通業界に所属しており、複雑な翻訳がないことやタイムリー性が重要。多少の翻訳のおかしさは犠牲にしてでも、スピード優先で多言語化を実施することとしました。ただし明らかな誤訳などがあってはかえって利用者の利便を害してしまうので、MTPE(後述)を実施して、スピードと正確性を担保することとしました。
(4) How
WEB多言語化における対応しなくてはならない課題は多岐に渡りますが、Wovn Technologiesでは「WOVN Localize Framework(WLF)」として、5つの項目で整理しています。
① 翻訳
多言語化と言われて、多くの方がまず思い浮かぶのが「翻訳」でしょう。翻訳するボリューム、予算、納期、カテゴリなどを決めましょう。
ここで考慮しておきたいのが、MTPE(Machine Translation/Post-edit)、つまり機械翻訳された文章をもとに、手動翻訳をすることです。機械翻訳だけではまだまだ完璧な翻訳とはいきませんので、人の目でチェックすることも重要です。
② UI/UX
WEBに関する画像、フォント、レイアウトなどのウェブデザイン面です(いわゆる「i18n」)。日本語ではあるけど外国語ではないフォント、キレイに表示されてないフォントや、文字の長さが変わってしまってデザインがおかしくなっている点などに気をつけなくてはなりません。
③ マーケティング
翻訳を含めた多言語化の予算の決め方やROIの計測方法などを考慮しておくのが重要です。とくにWEBにおいては、多言語化に限らず効果測定が大前提。多言語化においてもどのように効果測定をするのか、また海外SEOはどうするかなどを計画する必要があります。
④ 運用
こと動的サイトにおいては、これが一番の難関ともいえます。多言語化が必要なコンテンツはどんどん増加しますし、多言語化は部門をまたいで対応することも多く、多言語化する際の手順やルール、内部統制、BAP(運用フロー自動化)の決めごとなど、要対応事項は多岐に渡ります。関係部門から「急に言われたってできないよ!」とならないためには、時間をかけて説得することも重要です。
⑤ 通信
サーバ設置場所と訪問ユーザーとの物理的な距離や、国ごとの特性(たとえば中国では利用できないサービスやSNSが複数あるのは有名な話です)など、通信に関する課題散見されます。話が複雑で専門的な要素もあるので、社内外の専門家を巻き込み、状況に応じた対応が成功のカギと言えます。
まとめ
以上、WEB外国人戦略の3W1Hを考えてきました。今回だけでなく前回までの連載を含め、重要なのは結局のところ「自社、そして外国人にとって必要な多言語化はなんなのかを考える」ということにつきます。
本連載が、皆様の多言語化の一助になっていれば幸いです。なにか不明点があれば、Wovn Technologiesまで遠慮なくご連絡ください。
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