2年前より外国人消費2割減…インバウンドに苦戦する兵庫 神戸 | 楽天との包括連携協定とキャッシュレス化推進は神戸に外国人を呼び込むのか?

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】

カンファレンスについて詳しく見てみる

概要|楽天が神戸市と包括連携協定を締結

楽天は2018年12月1日、神戸市と包括連携協定を締結しました。この協定を通じ、両者は神戸市の市民サービスの向上と地域活性化を推進していく狙いです。協定は以下の6項目からなります。

  1. 神戸の魅力の向上と発信に関する事項
  2. インバウンド の推進に関する事項
  3. ふるさと納税の推進に関する事項
  4. 大学等と連携した人材育成支援に関する事項
  5. スポーツを通じた地域貢献に関する事項
  6. 神戸のまちの活性化等に関する事項

楽天は2007年に神戸支社を開設し、最先端のIT技術を活用した神戸市のPR活動や市内事業者の業務支援などを行ってきた実績があります。「ヴィッセル神戸」の運営にも2015年より参画しており、スポーツを通じた地域振興や、より利便性の高い図書館サービスの提供など市民サービスの向上にも取り組んできました。これらの実績を踏まえ、本協定を結ぶことでさらなる連携の強化や効率化が促進されるものと思われます。

本記事では協定の中の項目2:インバウンド の推進に関する事項に注目します。なぜ神戸市が楽天とのインバウンド 事業での協力関係に踏み切ったのかを解説していきます。

京都や大阪に比べ、伸び悩む神戸のインバウンド 

三菱総合研究所が2017年に発表したアンケート調査から、京都や大阪と比べ、神戸市には訪日外国人の足が向いていないことが明らかになっています。

△株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)図表1-1 観光地・エリア別の訪問者数推計値 より
△株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)図表1-1 観光地・エリア別の訪問者数推計値 より

この調査では関西空港から出国する外国人旅行者 約4000人を対象にしています。上のデータは観光地・エリア別の年間訪問者数推計値を示しています。

大阪の「難波・心斎橋」エリアの702万人を筆頭に、京都の「東山」エリアの480万人など、大阪や京都の観光地の数字が目立つデータになっています。

一方の神戸は「神戸・三宮」エリアで74万人と「難波・心斎橋」の10分の1ほどの数に止まっているのが現状です。

インバウンド 消費にも目を向けてみましょう。関西圏におけるインバウンド 消費は平成26年から平成29年にかけて大幅に伸びています。全体では2.8倍、大阪府は3.6倍、京都府は約2倍と順調に数字を伸ばしています。

△産経新聞 2018年2月12日付「関西のインバウンド消費、関東より大幅に伸長 3年前の2.8倍、ただし兵庫と和歌山は減少」より抜粋。
△産経新聞 2018年2月12日付「関西のインバウンド消費、関東より大幅に伸長 3年前の2.8倍、ただし兵庫と和歌山は減少」より抜粋。

神戸市のある兵庫県は好調なインバウンド消費の中でも平成26年から平成29年にかけて消費額が約2割、減少しています。

また、兵庫県全体での平均泊数も3.8泊と全国平均よりも少なめであり、神戸市としても滞在時間を伸ばしつつ、訪日外国人の消費を伸長する様な観光施策が必要であることがわかります。好調なインバウンド に乗り遅れてしまっている神戸市の姿がこれらのデータから読み取れます。

神戸市が楽天と目指すインバウンド の形とは?

すでに神戸市はセブングループと連携を開始

前段で述べたような課題を解決するために、神戸市はすでに様々な施策を講じています。本年度11月には神戸観光局とセブンイレブンジャパン、セブン銀行が訪日外国人旅行者の受入環境整備に関する連携を開始しました。

観光案内プレートの設置やポスター掲出、各種イベント開催でのタイアップなどが締結内容として紹介されています。セブングループとのタイアップによって、イベントへの集客や商品開発など神戸観光のコンテンツを充実させていこうとする意図が伺えます。

神戸市が楽天と目指す「キャッシュレス化」

一方、楽天との提携によって神戸市が目指すのは、インバウンド観光客の「回遊性」をより上げていくことです。具体的には楽天が持つIT技術を活用したキャッシュレス決済の推進が項目2の中では上げられています。

政府は「観光立国」政策を掲げ、2020年の訪日外国人旅行客数4000万人を目指すとともに、8兆円規模の消費市場を生み出そうとしています。そのためにはカードによる決済ができないことで失う販売機会を減らしていく必要があります。

訪日外国人旅行者が「不満に思ったところ」に関する観光庁の調査では「クレジット、両替」に関して、全体の13.6%の外国人が不満を感じています。

△観光庁「訪日外国人旅行者の国内のおける受入環境整備に関するアンケート結果」調査結果1-1旅行中に困ったこと(全体)より
△観光庁「訪日外国人旅行者の国内のおける受入環境整備に関するアンケート結果」調査結果1-1旅行中に困ったこと(全体)より

日本の民間消費におけるキャッシュレス決済の比率は約20%で、諸外国とは大きな差が生まれています。アメリカ中国では50%前後、韓国においてはなんと約90%がキャッシュレス決済です。

訪日外国人としても自国で現金決済の習慣がないと、日本で根強い現金主義の前に買い物を諦めるケースがあります。日本としては諸外国との決済方法でのギャップを埋めていくことで消費を喚起する必要があります。

キャッシュレス決済可能な環境整備を進めていく上で、神戸市と楽天との提携は試金石になりそうです。インバウンド消費に伸び悩む兵庫県神戸市が民間の技術を取り入れ、キャッシュレス決済体制を整備することでどれほどの効果があるのか。また、キャッシュレス化によって神戸観光へのエンゲージメントはどのように変わるのか。「楽天」というカードを切った神戸市インバウンドの今後が楽しみです。

インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる

<参考>

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

<本セミナーのポイント>

  • 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
  • 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
  • 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
  • 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける

詳しくはこちらをご覧ください。

宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに