2年前より外国人消費2割減…インバウンドに苦戦する兵庫 神戸 | 楽天との包括連携協定とキャッシュレス化推進は神戸に外国人を呼び込むのか?

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概要|楽天が神戸市と包括連携協定を締結

楽天は2018年12月1日、神戸市と包括連携協定を締結しました。この協定を通じ、両者は神戸市の市民サービスの向上と地域活性化を推進していく狙いです。協定は以下の6項目からなります。

  1. 神戸の魅力の向上と発信に関する事項
  2. インバウンド の推進に関する事項
  3. ふるさと納税の推進に関する事項
  4. 大学等と連携した人材育成支援に関する事項
  5. スポーツを通じた地域貢献に関する事項
  6. 神戸のまちの活性化等に関する事項

楽天は2007年に神戸支社を開設し、最先端のIT技術を活用した神戸市のPR活動や市内事業者の業務支援などを行ってきた実績があります。「ヴィッセル神戸」の運営にも2015年より参画しており、スポーツを通じた地域振興や、より利便性の高い図書館サービスの提供など市民サービスの向上にも取り組んできました。これらの実績を踏まえ、本協定を結ぶことでさらなる連携の強化や効率化が促進されるものと思われます。

本記事では協定の中の項目2:インバウンド の推進に関する事項に注目します。なぜ神戸市が楽天とのインバウンド 事業での協力関係に踏み切ったのかを解説していきます。

京都や大阪に比べ、伸び悩む神戸のインバウンド 

三菱総合研究所が2017年に発表したアンケート調査から、京都や大阪と比べ、神戸市には訪日外国人の足が向いていないことが明らかになっています。

△株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)図表1-1 観光地・エリア別の訪問者数推計値 より
△株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)図表1-1 観光地・エリア別の訪問者数推計値 より

この調査では関西空港から出国する外国人旅行者 約4000人を対象にしています。上のデータは観光地・エリア別の年間訪問者数推計値を示しています。

大阪の「難波・心斎橋」エリアの702万人を筆頭に、京都の「東山」エリアの480万人など、大阪や京都の観光地の数字が目立つデータになっています。

一方の神戸は「神戸・三宮」エリアで74万人と「難波・心斎橋」の10分の1ほどの数に止まっているのが現状です。

インバウンド 消費にも目を向けてみましょう。関西圏におけるインバウンド 消費は平成26年から平成29年にかけて大幅に伸びています。全体では2.8倍、大阪府は3.6倍、京都府は約2倍と順調に数字を伸ばしています。

△産経新聞 2018年2月12日付「関西のインバウンド消費、関東より大幅に伸長 3年前の2.8倍、ただし兵庫と和歌山は減少」より抜粋。
△産経新聞 2018年2月12日付「関西のインバウンド消費、関東より大幅に伸長 3年前の2.8倍、ただし兵庫と和歌山は減少」より抜粋。

神戸市のある兵庫県は好調なインバウンド消費の中でも平成26年から平成29年にかけて消費額が約2割、減少しています。

また、兵庫県全体での平均泊数も3.8泊と全国平均よりも少なめであり、神戸市としても滞在時間を伸ばしつつ、訪日外国人の消費を伸長する様な観光施策が必要であることがわかります。好調なインバウンド に乗り遅れてしまっている神戸市の姿がこれらのデータから読み取れます。

神戸市が楽天と目指すインバウンド の形とは?

すでに神戸市はセブングループと連携を開始

前段で述べたような課題を解決するために、神戸市はすでに様々な施策を講じています。本年度11月には神戸観光局とセブンイレブンジャパン、セブン銀行が訪日外国人旅行者の受入環境整備に関する連携を開始しました。

観光案内プレートの設置やポスター掲出、各種イベント開催でのタイアップなどが締結内容として紹介されています。セブングループとのタイアップによって、イベントへの集客や商品開発など神戸観光のコンテンツを充実させていこうとする意図が伺えます。

神戸市が楽天と目指す「キャッシュレス化」

一方、楽天との提携によって神戸市が目指すのは、インバウンド観光客の「回遊性」をより上げていくことです。具体的には楽天が持つIT技術を活用したキャッシュレス決済の推進が項目2の中では上げられています。

政府は「観光立国」政策を掲げ、2020年の訪日外国人旅行客数4000万人を目指すとともに、8兆円規模の消費市場を生み出そうとしています。そのためにはカードによる決済ができないことで失う販売機会を減らしていく必要があります。

訪日外国人旅行者が「不満に思ったところ」に関する観光庁の調査では「クレジット、両替」に関して、全体の13.6%の外国人が不満を感じています。

△観光庁「訪日外国人旅行者の国内のおける受入環境整備に関するアンケート結果」調査結果1-1旅行中に困ったこと(全体)より
△観光庁「訪日外国人旅行者の国内のおける受入環境整備に関するアンケート結果」調査結果1-1旅行中に困ったこと(全体)より

日本の民間消費におけるキャッシュレス決済の比率は約20%で、諸外国とは大きな差が生まれています。アメリカや中国では50%前後、韓国においてはなんと約90%がキャッシュレス決済です。

訪日外国人としても自国で現金決済の習慣がないと、日本で根強い現金主義の前に買い物を諦めるケースがあります。日本としては諸外国との決済方法でのギャップを埋めていくことで消費を喚起する必要があります。

キャッシュレス決済可能な環境整備を進めていく上で、神戸市と楽天との提携は試金石になりそうです。インバウンド消費に伸び悩む兵庫県と神戸市が民間の技術を取り入れ、キャッシュレス決済体制を整備することでどれほどの効果があるのか。また、キャッシュレス化によって神戸観光へのエンゲージメントはどのように変わるのか。「楽天」というカードを切った神戸市のインバウンドの今後が楽しみです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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