【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
中国の恒例「商業のアカデミー賞」315晩会とは
3月15日は「世界消費者保護デー」ですが、中国ではこの日に合わせて中央電視台が「315晩会」を放映します。この番組では、消費者の利益を損なうような企業の欺瞞を暴きます。番組では電話でのタレコミを募集し、今年は10社の製品やサービスを大衆の批判の俎上に載せました。この番組の影響は絶大で、この報道により19社のA株上場会社(※)が取引所や管理委員会からの問い合わせ等の対応に追われたとのことです。
※中国の株式市場にはA株、B株、H株が存在し、A株は中国国内の法人、個人に限って購入や取引が可能になる。
この315晩会は、1991年から開始されており、今年で29回目になります。「消費者の利益のため」という大義名分のもと、過去には本当に問題なのかどうかに疑問を抱くような企業も、やり玉にあげられています。消費者の利益を損なう企業の行為とは「偽物の販売」「誇大広告」「情報漏洩」「プライバシーの侵害」「危険な商品の販売」といったものがあり、これらは経済発展による消費力の拡大を妨げると中国メディアは主張します。

今年のノミネート10の事件、中国の企業によるその手口が明らかに
今年2019年の315晩会で批判の対象となったのは以下の10件です。
- 医療廃棄物である使用済みの点滴の袋などを、適切な処理なくプラスチック原料に再加工し、製造業者に販売した。
- 「辣条」と呼ばれるスナックの生産工場が非常に不衛生
- 通常の卵を「自然卵」に見せかけて販売
- 桁違いの件数の営業電話をかけるシステムを開発(迷惑電話)
- 実際には薬剤師を雇用していない薬局への「薬剤師不在」の看板のレンタル
- 大人用おむつの加工現場で汚れた原材料が使用されている
- 電子タバコに多量のホルムアルデヒト
- 家電のアフターサービスで、不必要にもかかわらず修理を装い、不当に代金を請求
- キャッシュカードにパスワード無しでの決済機能が標準搭載されているサービス設計の不良(読み取り機による窃盗が可能に)
- ネット上の高利貸し

上記の問題を起こしている企業は全て中国の企業でした。一つの問題につき複数存在する場合もあり、特に迷惑電話と高利貸しに携わる企業はそれぞれ10~20件も名前が挙げられています。
特に健康を害する可能性の高い医療廃棄物、スナック菓子生産現場の衛生状況にはショックを受ける人も多かったようです。またCCTVの取材では、薬剤師不在のまま専門家の意見が必要な薬が販売されていく様が伝えられています。こういった状況が全国的に放送されている中国で、中国人による「日本製品への信頼」「日本製品に抱く安全・安心感」が醸成されていくのも想像に難くありません。
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過去には日本の有名企業やナショナルブランドも
一昨年には無印良品やカルビー、フォルクスワーゲンやナイキが、それ以前にもアップル、ニコン、マクドナルドなど多数の世界的に有名な外資が批判されてきました。今年はこうした製品やサービスがまったく注目を集めなかったのも特徴といえるでしょう。あまりにやらせらしい批判は視聴者の関心を失うといった理由があるかもしれません。中国人消費者はマスメディアの一方的なメッセージを受け取るだけで物事を判断するというかというと必ずしもそうではなく、インターネットやコミュニティの口コミを通じた情報収集にも長けているのです。
実際に、今回の315晩会の報道に対して新浪微博の口コミを確認してみると、「会社が大きくなればなるほど、問題も起きるのでは?」という冷静な意見や、「なぜBaiduとCtrip(といった大企業)は入らないの?」とそのやり玉に挙げられる企業の選定に疑問の声も上がっています(ただし実際には、Baiduは2018年の315晩会でその広告システムについて指摘を受けています)。
まとめ ~消費者に与えるイメージが左右されるだけでなく、消費者の品質判断力を養う場として機能~
315晩会が世論形成に与える影響力は大きく、無視できません。2017年に批判されたナイキは、一度は謝罪も賠償も行わない姿勢を示していましたが、その後風評の広まりと関係機関の介入があり、当該製品の購入者に対し一人当たり4,500元を返金するという結果に終わりました。
また、同じく2017年の315晩会では、当時業界全体でその市場拡大を謳歌していたかに見えたシェアサイクルがその批判の的となっています。当時、消費者を欺いているとして指摘を受けたのはそのうちの一つ「酷騎単車」で、その半年後に倒産を迎えています。
シェアサイクル業界では、昨年2018年にも、業界トップ2であったofoでも同様にデポジットが返金されない騒ぎがありました。ビジネスモデルに限界のあったシェアサイクルのサービスの欠陥を、2017年の315晩会で気づいた消費者が継続して暴き立てたようにも見えます。315晩会は消費者にとって、製品やサービスを見る目を養う機会となっているようです。
世界的なビッグネームのブランドは謝罪で難を逃れていますが、そうでない企業が中国人消費者の批判の対象となった場合には、市場からの撤退を余儀なくされることもあるでしょう。すでに、食品の「辣条」は複数の地域での販売禁止が報道されています。
口コミを大切にする中国人にとって、製品やブランドの評判は消費行動を左右する重要なファクターです。中国人消費者は今後さらに「品質の良さ」を求めていくと考えられます。その中でどのようにサービスの魅力を打ち出していくのか、そしていかに風評リスクをコントロールしていくのかを、越境EC運営やインバウンド対策にあたって改めて考えていく必要があるでしょう。
<参考>
- http://315.cctv.com/
- http://www.zhicheng.com/n/20190316/253775.html
- http://news.e23.cn/caijing/2019-03-20/2019032000209.html
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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