日本の空の玄関口である成田国際空港。2018年10月25日に成田国際空港が発表したプレスリリースによると外国人旅客数が900万人に迫る 8,990,936 人(前年同期比15%増)を記録しました。
訪日外国人の約3割が成田国際空港を利用しており、日々数多くの訪日外国人が訪れています。そんな成田国際空港ですが、一体、どのようなインバウンド対策を実施しているのでしょうか。今回、成田国際空港経営企画部門IT推進部、情報企画グループマネージャー、阿部英崇氏と同部門主席の村上智彦氏に成田国際空港のインバウンド対策についてインタビューしてきました。
ITを活用し成田国際空港のインバウンド対策を加速させる
-IT推進部ではどのような取り組みをしているのでしょうか?

成田国際空港経営企画部門、IT推進部、情報企画グループ、マネージャー阿部英崇氏(以下、阿部氏):
空港を利用されるお客様の満足度を上げるべくITを活用した取り組みを実施しています。お客様や成田国際空港に入っているテナントの方々が抱えている課題を解決するためにもITを活用しています。成田国際空港では近年、日本人の利用者よりも外国人の利用者の方が多くなっています。そこで、多言語化が以前よりも必要になり、ITを活用して多言語化を進めてきました。
-これまでどのようなインバウンド対策を実施してきましたか?
成田国際空港経営企画部門IT推進部、情報企画グループ、村上智彦氏(以下、村上氏):
infotouch(インフォタッチ)というデジタルサイネージ、案内カウンターのIT化、WEBサイトの多言語化、ナビゲーションアプリ開発、Bebot(ビーボット)というチャットボットを導入したり、実証実験をしながら様々なインバウンド対策を実施してきました。以前は4ヶ国語のみの対応してきましたが、近年、東南アジアからの入国者も増えてきましたので9カ国語対応をしています。
我々のような業態では参考事例がほとんどありません。ゼロから取り組むしかなかったので、常に試行錯誤をしながらインバウンド対策のノウハウを積み上げてきました。

日本人だけでは考えない、外国人の立場になり情報の出し方を変える
-インバウンド対策をする上で大切なことはありますか?
阿部氏:
やはり、インバウンド対策は日本人だけだと限界があると考えます。理由としては外国人の方々は日本人と感覚や文化が全く違うからです。インバウンド対策を実施していた当初、我々日本人が良かれと思って作ったものを空港に置いてみると、全く使われない、使い方がわからないという課題がありました。
成田国際空港の場合は様々な国から沢山の人が訪れます。バックグラウンドも様々です。そのため多様化を受け入れ日本人だけの感覚で考えないようにしています。さらに、一つの方法でアメリカ人には伝わったとしても、中国人の方には伝わらないこともあります。様々な施策を組み合わせて情報を伝える取り組みをしています。例えば成田国際空港内にあるお店情報伝え方も外国人向けに工夫しています。
-どのような工夫でしょうか?
阿部氏:
外国人向けに情報の出し方を工夫しています。成田国際空港内に飲食店情報を検索できるデジタルサイネージを試験運用しています。そこではメニューからお店を検索できる仕組みを入れています。日本人の場合は店舗名や店舗のロゴをみれば、どんな料理が出てくるレストランなのか想像がつくと思います。しかしながら、外国人は店舗名や店舗のロゴを見ても、どんな料理が出てくるかわかりません。マクドナルドやスターバックスは別ですが……。そのため、メニューから検索ができるような仕組みを取り入れています。
インバウンド対策はやり続けることが重要
-他にもインバウンド対策で重要なことはありますか?
村上氏:
インバウンド対策は、やり続けることが重要だと考えます。インバウンド対策を成功させるためには効率化も必要です。しかし費用対効果ばかりに気にしていると、なかなか施策を前に進められない時もあると思います。まず、取り組んでみないと効果もわかりません、検証もできません。ある一定期間を定めて、まず取り組んでみる。そしてノウハウを貯め続けることが重要だと考えます。
インバウンド対策について、何から始めたらいいのかわからないという方が多いと思います。しかし、今のうちに取り組んでおくとノウハウや実績も積み上げられてきます。中途半端に実施するよりも本格的に取り組み続けるほうがいいかなと。
我々も参考になる事例が全くありませんでした。だからこそ、自分たちで考えて様々な取り組みを実施し、インバウンド対策の事例を積み上げてきました。

チャットボットをうまく活用
-これまで取り組んでみて、良かったインバウンド対策はありますか?
村上氏:
様々ありますが株式会社ビースポークが提供しているチャットボットBebot(ビーボット)を導入してよかったと思っています。自社でもコンシェルジュアプリを開発し運営していました。維持コストが非常にかかっていましたが、今はBebot(ビーボット)がコンシェルジュ機能を代替してくれて人件費削減にもつながりました。空港内でわからないことが出たら、Bebot(ビーボット)に質問すると的確に答えてくれます。

まとめ
日本人の感覚だけではなく、様々な国の方々の考え方を取り入れること。インバウンド対策を取り組み続けること。この2つがインバウンド対策で重要になると成田国際空港のお二方をインタビューをして実感しました。インタビューの後編では成田国際空港が導入している多言語チャットボットBebot(ビーボット)の活用事例について深掘りしていきます。