2018年のインバウンド消費額は、過去最高を記録しました。しかしながら、以前に比べ消費額には伸び悩みが見られました。
今回は、観光庁より発表された国・地域別総消費額や一人当たり消費額のデータから、訪日外国人の消費傾向を分析します。その上で、今までのアジア圏を主なターゲットとした誘致に対し、さらなるインバウンド消費増大を目指すための新たな指針を紐解いていきます。
また、この記事では「モノ消費」から「コト消費」という訪日外国人の消費トレンドの変化について近年のデータを参考に検証し、今後の消費傾向を考察します。
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2018年のインバウンド消費は4.5兆円で過去最高
3月29日、毎年観光庁から発表される「訪日外国人消費動向調査」の最新版が公開されました。調査は調査対象空港・港の出国ロビーにいる訪日外国人を対象に、タブレット端末または紙調査票を示しながら、聞き取り調査という形で行われました。
調査の結果、2018年のインバウンド消費額は4兆5,189億円で、過去最高を記録しました。去年は4兆4,162億円であり、約1,000億円伸びたことになります。
訪日外国人数も2018年は3,119万人と、2017年の2,869万人から250万人伸び、2018年は数・消費額ともに過去最高となりました。
しかしインバウンド消費額の前年比伸び率を見ると、2017年から2018年にかけては以前に比べ伸び悩む傾向が見られました。
国籍別1位は中国|1.5兆円で全体の34.2%占める
国籍別消費額は、中国が1兆5,450億円で全体の34.2%を占めるという結果になりました。
次いで韓国が5,881億円(13.0%)、台湾が5,817億円(12.9%)、香港が3,358億円(7.4%)、アメリカ2,893億円(6.4%)となり、これら上位5か国・地域で全体の73.9%を占めています。
現在まで、日本はアジアを一番のターゲットとしてインバウンド誘致を行ってきました。数・消費額ともにアジアは日本のインバウンドにおいて大きな割合を占めており、政府を筆頭としてさまざまな取り組みを行ってきた成果は確実に出ているといえます。
しかし一方で、アジアからの訪日外国人は一人当たりの消費額が低く、人数が多いわりには消費が少ないという傾向があります。次の項目で見ていきましょう。
一人当たり消費額は15万円|欧米豪が多い傾向
2018年の訪日外国人一般客の一人当たり消費額は、153,029円でした。
国別だとオーストラリアが最も高く(24万2千円)、次いでスペイン(23万7千円)、中国(22万5千円)という結果になりました。
上記の国・地域別一人当たり消費額のデータを見ると、上位はほぼ欧米豪で占められていることがわかります。一方日本のインバウンドで大きな割合を占めるアジア諸国は下位に位置しています。
欧米豪はアジアに比べ日本からの距離が遠く、一度訪れると長期滞在する傾向にあります。一方韓国や台湾、香港からの訪日客は、国内旅行のような感覚で訪れる人も多いため、2泊3日など短期の滞在が多くなる傾向にあります。
今までは成果の出やすいアジアを中心に誘致していましたが、さらなるインバウンド消費増大を目指すのであれば、一人当たりの消費が大きい欧米豪にも注力する必要があるでしょう。
「トレンドはモノ消費からコト消費へ」は本当?2017年と比較検証
2018年は、さまざまなメディアで「コト消費」がインバウンドのトレンドになるといわれていました。
果たしてこのトレンドは本当だったのでしょうか?今回は最新版の「訪日外国人消費動向調査」を参考にし、過去のデータとも比較しながら検証していきます。
「訪日前に期待していたこと(複数回答)」では、「日本食を食べること」が72.1%で1位、「ショッピング」が58.2%で2位、「自然・景勝地観光」が50.9%で3位となりました。
「コト消費」にあたる項目が数多く上位にランクインしている一方、「モノ消費」つまり「ショッピング」を楽しみにしている人も半数以上いることがわかります。
2017年と比較すると、「日本の歴史・伝統文化体験」「日本の日常生活体験」が、それぞれ3.8ポイント、2.4ポイントとわずかながら伸びました。
そのほか特に数値が伸びたものとしては、「日本食を食べること」「日本の酒を飲むこと(日本酒・焼酎等)」があり、それぞれ1.5ポイント、2.3ポイント伸びました。
これらポイントを伸ばしたものの共通点としては、「日本でしかできない」ということが挙げられます。
訪日外国人が「今回したこと(複数回答)」では、2017年のデータと比べて他の項目がほぼ変化なく、またはマイナス成長にとどまるなか、「美術館・博物館・動植物園・水族館」が2017年から2018年にかかけて10.3ポイントと比較的大きな伸びを見せました(21.3%から31.6%)。
なお注意点としては、この項目は2017年の調査では「美術館・博物館」となっており、2018年版で「動植物園・水族館」が新たに加えられました。水族館は訪日外国人にも人気があるため、この変更が数値に影響を与えた可能性も考えられます。
また、「次回したいこと(複数回答)」は、ほとんどがマイナス成長になりましたが、「温泉入浴」は43.0%から51.1%と比較的大きな伸びを見せました。
これらのデータから読み取れる結果を総合すると、「コト消費」にあたるコンテンツは非常に人気があるものの、買い物もまた訪日旅行中の楽しみとして根強い人気があるということがわかります。
「モノ消費からコト消費への移り変わり」が2018年インバウンドのトレンドとして挙げられることが多くありましたが、実際はどちらも人気だったといえそうです。
まとめ:「モノ消費」終わったわけではなかった/今後も消費傾向に注意
最新版「訪日外国人消費動向調査」のデータを調査した結果、2018年のインバウンド消費額は過去最高だったことがわかりました。
また2018年のトレンドといわれていた「モノ消費からコト消費への移り変わり」ですが、たしかに「コト消費」コンテンツは訪日外国人に人気だということがわかりました。しかし一方で「モノ消費」も勢いが衰えたわけではないようです。2019年もインバウンドの消費傾向には注意していく必要があるでしょう。
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