「独身の日」という言葉を耳にした人は、少なからずいると思います。インバウンド市場の加速により、中国大型連休となる旧正月の「春節」や、イスラム教徒が食べることが許されている「ハラルフード」など、外国の文化要素を理解する機会も増えてきたように感じます。
とりわけ、訪日中国人においては、訪日外国人のなかでもトップの割合を占めているため、今後更に中国の文化・風習を深く知る機会も増えていくでしょう。
中国EC最大手のアリババグループと資生堂が2019年3月に戦略業務提携を締結したことが発表されました。というのも、2018年の「独身の日」セール時、資生堂は1日で1億元(16億円)以上の売り上げを叩き出し、資生堂はアリババにとっても重要なパートナーとなっています。
このように、もはや日本企業も他人事では済まされない、中国国内外で注目度の高い「独身の日」について解説します。
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独身の日とは?
「独身の日」とは、中国の光棍節(こうこんせつ)の別名であり、11月11日に独身を祝う日として認識されています。「光棍」は中国で独り身を、「節」は祝日を意味していており、「シングルデー」や「W11(ダブルイレブン)」といった言葉で呼ばれることもあります。法定祝日ではなく、若者が楽しむためのイベントとして親しまれています。
一説によると、「独身の日」の由来は1993年、当時南京大学に通う4年生の生徒たち4名が宿舎によって考案されたものといわれています。独り身で過ごさないために、11月11日を「独身の日」としてイベント活動を行い、次第に南京高校や社会にまで風習として広がっていきました。
なぜ独身の日にセールが行われるようになった?
「独身の日」は、日本で馴染みのない風習ですが、最近では日本のメディアでも紹介されたこともあり、さまざまな業界でも注目されつつあります。2009年、中国IT企業最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)が、11月11日を「双十一」(W11/ダブルイレブン)と称して、アリババグループが展開するネット通販サイト「天猫商城(Tモール)」でネットシッピングの日と位置づけしセールを始めたところ、「京東(ジンドン)」などのECサイトも追随。今では、11月11日といえば、独身者に限らず多くの人がネットでセール品など買い物をする一大イベントとなっています。
2018年の独身の日はどうだった?
2018年の独身の日は、日本でも多数メディアが取り上げ、大きな盛り上がりをみせました。何といっても桁違いの総売り上げは、日本に大きなインパクトを与えました。さっそく、「Tモール(天猫商城)」で取り扱いのある日本企業の商品について、どのような商品が売れたのかみてみましょう。
アリババの取引額は3.5兆円/前年比率は過去最低
2018年で10回目を迎えた独身の日、取引額は過去最高の308億ドル(約3.5兆円)を叩き出しました。しかし、これまでの増減率をみてみると、2017年の取引額は前年比36%増であったのに対し、2018年の取引額は前年比27%増となり、伸び率としては鈍化で陰りを見せており、独身の日消費も近いうちに頭打ちになるかと懸念されます。とはいえ、その膨大な規模には目に見張るものがあり、今後も成長率の動向に注目していく必要があります。
日本企業も健闘/ユニクロは開始後35秒で驚異の1億元(約17億円)
アリババグループが展開するネット通販サイト「Tモール(天猫商城)」において、「独身の日」1日限定セールの取引額が1億元(17億円)に達した店舗は167店舗にも及び、うち日本企業も6社ランクインするなどの大健闘をみせました。なかでも、ユニクロは中国大陸633店舗(2018年8月時点)展開しており、中国国内でも圧倒的な知名度を誇ります。セール開始後、わずか35秒で1億元(約17億円)を達成。取引額は、昨年比約2倍の6億元以上(約100億円)の売上を達成し、全業態4位(昨年5位)、アパレル部門1位(2年連続)と善戦しました。
人気の商品カテゴリーや売れ筋商品とは?
商品カテゴリーのランキングをみてみると、1位は「携帯・デジタル」、2位が「家電」、3位が「化粧品」、4位が「食品・飲料」、5位が「ベビーマタニティ」となり、越境ECを含めた輸入商品での売れ筋ランキングでは、2位にユニ・チャームのムーニー、3位に花王のメリーズがランクインしました。紙おむつといえば、2015年頃の「爆買い」でも購買の的になっており、ムーニーメリーズともに人気商品のひとつでした。その他粉ミルクなどのベビー用品が特に人気で、日本の質の良い商品を厳選して購入していることがわかります。
今インバウンドで中国ECが注目されている理由/今後どうなる?
中国のEC市場は年々拡大を続けています。調査会社のiResearchがまとめた中国EC市場の成長率に着目すると、2012年から2019年にかけて毎年2桁の成長を続けています。今後もその動向が注目されています。
中国EC、圧倒的な市場規模
eMarketer,Dec2016データによると、ECの市場規模において中国EC市場は世界1位です。世界全体でのEC市場規模は308兆円なので、3分の1を中国が占めているという計算になります。
また、中国ECの市場規模は前年比30%増となり、急激に成長しています。また、上記5位内にランクインせずまだ規模は小さいものの、インドの市場規模は2.2兆円で伸び率は前年比42.1%でした。前年比の増加率だけでみると、中国以上の成長を遂げており、今後の動向に目を見張るものがあります。
EC市場はさらなる成長見込
調査会社のiResearchの発表によると、中国EC市場の成長率と総流通額(GMV)は、2016年から2019年は予測値であるものの、毎年2桁の割合をキープしながら増加傾向にあります。また、総流通額は2012年から2015年、2015年から2019年で3倍増加率となっています。
中国EC市場の市場規模において、ゴールドマンサックス社は、2016年7500億ドルから2020年には1兆7000億米ドル(約188兆円)まで増加することを予測しています。また、中国人のEC利用消費者は2016年は4億6000万人とされており、今後数年でさらに2億人ほど増える見通しといわれており、独身の日に限っては、成長率が低かったものの、中国EC市場は今後も伸び続けることが予測されます。
訪日数が多い分取り込みやすい
独身の日セールにおいても、日本製品は非常に人気が高く、訪日外国人の“旅アト”による情報拡散や日本商品のリピート等の関連を考えると、訪日する人数が多ければ多いほど越境ECの潜在顧客が多くなる可能性が高いといえます。現在、インバウンド市場において、訪日外国人客数は2018年で3119万人を記録し、うち中国人が4分の1を占めており、日本にとっても越境EC市場において中国人を取り込みやすい状況といえるでしょう。
まとめ:独身の日はそろそろ頭打ち?中国ECは今後も成長予想
今回紹介した独身の日のように、「Tモール(天猫商城)」など中国越境ECには多くの日系企業が参入し、人気を集めています。前例として、独身の日にはユニクロや花王のように日本製品の人気の高さが伺え、輸入商品であっても売れ筋商品としてヒットする可能性は高いことがわかりました。2018年の独身の日の前年比伸び率は鈍化したものの、中国EC市場の規模は、今後も成長が予想されます。インバウンドと中国ECには深いつながりがあるので、訪日中国人のトレンドをキャッチして販促につなげましょう。
<参照>
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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→中国、タイの2025年祝日発表 ほか:インバウンド情報まとめ【2024年11月後編】
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