2019年4月、鎌倉市は混雑する観光地での食べ歩きや、危険な場所での撮影などを「迷惑行為」とし、観光客のマナー向上を狙いとする新たな条例を定めました。中国人や台湾人に人気の漫画の聖地で写真撮影の自粛要請が出たことで、現地メディアでも大きく取り上げられています。
年間2,000万人以上の観光客が訪れる鎌倉で、訪日客が急増した背景と観光地の現状、そして訪日客のマナー対策について、今回の条例施行を参考に見ていきましょう。
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観光客の「迷惑行為」近隣住民から相次ぐ苦情
迷惑行為に関する条例は、約5年前に、ハイキングコースにおけるタイムレースや団体走行の禁止を求める陳情が出され採択されたことが元々のきっかけです。
加えて、以前から多くの観光客で賑わう小町通りで、食べ歩き中に食べ物が衣類につくトラブルや、国内外で人気の漫画「スラムダンク」のアニメの聖地として多くのファンが訪れる、鎌倉高校前駅付近の踏切で危険な写真撮影なども発生していました。
度重なる迷惑行為に対し、鎌倉市に近隣住民からの苦情が多く寄せられるようになり、結果として今回の条例が施行されることとなりました。
条例では上記のような行為を「迷惑行為」として明確に定め、今後は自粛するよう呼びかけています。鎌倉市はこの条例の制定を通じ「誰もが気持ちよく過ごせる観光都市」を目指すとしています。
聖地巡礼ブームに湧くアジア人観光客が鎌倉に殺到
危険な場所に立ち止まり撮影をするといった行為増加の背景として、アニメの聖地巡礼のブーム到来が挙げられます。
中国や台湾でも爆発的人気となった漫画「スラムダンク」のアニメのシーンで、鎌倉高校前の踏切が使用されたことから、5年ほど前より中国・台湾からの訪日外国人観光客の増加が顕著となりました。
駅付近に同作品を紹介するポスターなどがあるわけはありませんが、中国ではすでに人気の観光地となっており、主人公のユニフォームを着て撮影するといった熱狂的なファンも多数見られています。
作品中のワンシーンと同様の構図を求めて、電車が通るタイミングめがけて、踏切付近で立ち止まって撮影に没頭する観光客も一人や二人ではありません。踏切に入ってしまう観光客もいたということから撮影者の安全も懸念されます。条例で撮影の自粛を促すこととなりました。
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中国メディアでも鎌倉の条例施行を報道
中国メディアの中国日報は、4月12日にスラムダンクの聖地として鎌倉を紹介する記事を掲載しました。特に人気の観光スポットとして鎌倉高校前の踏切を紹介した上で、鎌倉市が写真撮影に関する迷惑行為を自粛するよう求めていることもあわせて報じています。
本文中では実際に撮影をしようと詰めかけている大勢の観光客が写る写真を掲載した上で、夢中になるあまり踏切内に立ち入るといった危険行為にまで発展しているケースもあることから、条例の施行にいたったことを説明しました。
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訪日客のマナー改善へ強行策の検討も
急増する訪日客のマナー悪化もふまえ、条例施行に踏み切った鎌倉市ですが、条例は禁止や規制を促したり罰則を課すといったことはしません。事実、条例施行後も、踏切前で撮影に没頭する訪日客やドローンを飛ばす人まで見受けられていることから、今後は多言語で条例を周知していくことはもちろん、場合によってはより強行な対策も必要になるでしょう。
多言語の看板によるマナー周知も、京都のように景観破壊を引き起こすことが懸念されるため、看板に頼り過ぎないマナー改善の取り組みが期待されます。
<参考>
- NHK NEWS WEB:食べ歩きや危険な撮影「迷惑行為」鎌倉で条例
- 日本経済新聞:スラムダンクの「聖地巡礼」鎌倉高校前駅の踏切(神奈川県鎌倉市)
- msn:ショック!中国人や台湾人に人気だった鎌倉の「聖地」が写真撮影の自粛要請=中国メディア
- 神奈川新聞:鎌倉市がマナー条例案 混雑時食べ歩き、迷惑撮影を自粛へ
- 訪日ラボ:京都の「景観ブチ壊し」の犯人は?訪日外国人向け多言語表示による「看板公害」の実情
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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