現在、日本全体の人口動態を見てみると、地方では過疎・都心部では過密化が進んでいます。
観光業界でもこれと同様の構図があります。東京や大阪、京都といった定番スポットには観光客が集中しており歩くのも大変な状況も出てきている一方で、地方には観光客が少なく収益化が難しくなっています。
日本の観光立国や経済活性化を考える際には、どのようにして地方を活性化するかという点が課題となっています。
解決策としてゆるキャラや祭りなどを活用した「町おこし」の策が講じられています。同時にインバウンド客を対象としたアクティビティ業界は今後の伸びが期待できるため、注目を集めています。
今回は、地方で実現できるインバウンド向けアクティビティの一形態である「スローツーリズム」をご紹介します。スローツーリズムとはどのようなものなのか、またスローツーリズムを実施している地方自治体の取り組みを解説していきます。
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スローツーリズムとは
スローツーリズムとは、予定を詰め込みすぎず、自分のペースで旅程を進める自由な旅行を意味します。自然環境や文化を守りながら、人々や文化とふれあうことができるのも特徴です。
多様な旅行者の需要を満たすと同時に、地方への旅行者を拡大させることで地域活性化に貢献できるとして期待されています。
訪日外国人の旅行ニーズは多様化
訪日外国人の中には何度も日本を訪れているリピーターもいます。こうしたリピーターは、有名な観光地巡りや日本製品の購入ではなく、あまり知名度がないものの景観の素晴らしい地方や、日本文化や生活の体験に価値を見出しています。
スローツーリズムの「スロー」は、スローライフやスローフードといった言葉で早くから言及されてきた「スロー」と同義です。つまり、効率やスピードを重視するのではなく質を重視する旅行のことで、あらゆる活動において質を重視する人々の需要に合致していると言えます。
またその原義「ゆっくり」のとおり、ゆったりと過ごす旅を意味しています。旅行会社に定められたプログラムに基づいて観光名所を次々と駆け足で巡るのではなく、旅行者自身が行きたいと願う場所に足を運ぶような旅も「スローツーリズム」が意味するところです。
こうした中で、旅行者は居住者が地域で継承する生活文化にふれ、その価値を再発見、再確認します。
「スローツーリズム」の目指すものは、自然を守ることで観光資源を持続可能なものにしていこうというサスティナブルツーリズムと親和性が高くなっています。地方活性化に向け、地域の自然や文化を資源として観光産業を発展させるためにいくつかのインバウンド対策が行われてきましたが、それは必ずしも全ての旅行者を満足させてきたわけではありません。
多様化する旅行者、特に訪日外国人のニーズを満たす一つの形態がスローツーリズムです。
サスティナブルツーリズムの意味・定義
サスティナブルという言葉は「持続可能な」という意味です。多くは地球環境の持続可能性を指し、環境問題を論じる際に用いられてきました。 最近では観光の分野でもこの「サスティナブル」という言葉が見られるようになってきました。 本編ではインバウンド市場における「サスティナブル」について解説します。 [com_category_dl_btn name="ツアー企画・ランドオペレーター" slug="tour-planning"] 目次 サスティナブルとは? サスティナブルツーリズムとは? サスティ...
地域の魅力を再認識してもらうきっかけに
スローツーリズムでは、誰もが必ず行く定番の観光地にいくつも行くのではなく、旅行者自身が望むペースで旅行を計画します。こうし自分のペースで地域を巡ることにより、その魅力をより深く認識してもらうことができます。
地域の文化や自然に触れ合う時間が長くなる
地域の文化や自然・地元の人達と交流することも、スローツーリズムの楽しみの一つです。
例えばスローツーリズムのコンセプトに基づいた旅行では、旅行者は観光客向けのレストランには行きません。スローツーリズムの精神で地方を訪れた旅行者は、地元の人が行く食堂に行ったり、地域の特産品を作っている場所や生産者を訪れたりといった地域との交流を求め、自分のペースでそれらを体験していきます。
石川県でのスローツーリズムの取り組み
石川県では、スローツーリズムに基づく様々な体験を提供しています。2018年には「スローツーリズムサポートデスク」を設置しました。農家民宿や農家レストラン・カフェなど、スローツーリズムの舞台となる施設の確保・育成やスローツーリズムに取り組む地域の支援を行っています。
石川県には、加賀百万石の洗練された金沢の文化や、能登の里山里海に代表される日本の原風景があります。この場所に古くから継承されてきている伝統や自然環境、そして米、野菜、魚といった多種多様な食材はどれも石川県の大きな魅力となっています。
石川県はそのうちの一つである「食」に注目し、食の分野における伝統芸能や伝統工芸をさまざまな形で提供する体験型スローツーリズムを推進しています。
2019年4月には「いしかわ里山里海ステイ」という冊子を発行しました。この冊子では、農村の食文化・暮らしを体感できる農家民宿や、スローツーリズムのモデルコースの他、フルーツ狩りなどの農林漁業体験や塩づくりなどの文化体験ができる施設、道の駅や直売所など、296施設を紹介しています。
石川県はスローツーリズムを推進する団体に対して助成金による支援も行っています。2019年度の公募は6月19日まで受け付けていおり、2019年5月現在まだ申込みが可能な状況となっています。
今後のインバウンド市場で訪日旅行のトレンドはさらに多様化、細分化が進む
訪日外国人数は年々増加しており、彼らが望む旅行のスタイルはさらに細分化していくでしょう。
有名観光地をいくつも回る旅行スタイルは、初めて訪日する場合には効率良く主要な観光名所を回れるとして歓迎されています。一方で、リピーターの旅行客はより個別の体験を求めており、またその求めるところは同じ国の出身や同じ回数のリピーターであっても、多種多様です。
スローツーリズムはこうした訪日外国人の細分化した需要を満たすことのできる一つの解決策であり、同時に地方創生にもつながる今後注目の概念です。インバウンド市場の成長のためには、今後こうした地方の魅力をターゲットに向けて発信していくことが必要になってくるでしょう。
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【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
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詳しくはこちらをご覧ください。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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